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聖王伝  作者: 竜人
第十五章 崩れゆく世界
507/800

第507話

ギルバート達は、王都の食料を補充する為に魔獣を狩っていた

魔獣の肉を得る事で、食料を得る事が出来る

取り分け肉に関しては、今年は野生動物が逃げて不足している

巨人の襲撃が、思わぬところで悪影響を及ぼしていた

子爵が付けた集落の火は、無事に延焼せずに鎮火していた

子爵が帰る頃には、その報せがギルバートの下へ届いていた

問題はその事よりも、途中で帰った若い騎兵達だろう

彼等は帰還する途中で、厄介な事を仕出かしていた


「殿下

 只今帰還しました」

「子爵

 ご苦労様でした」


ギルバートは書類を脇に置いて、帰還した子爵を労う。


「それで?

 討伐は成功しました様ですが…」

「ええ

 無事に終わりました」

「ふむ

 報告通りですね」

「ええ」


ギルバートは脇に置いた書類を、子爵に手渡す。

子爵はその書類を受け取ると、ゆっくりと読み始める。

しかし次第に不快な顔をして、ギルバートに何か言おうとする。


「殿下

 ワシは…」

「ああ、待て

 証人を呼んで来ている」


ギルバートがそう話している間に、外に兵士が連れて来られた。


「失礼しま…

 何で貴様が!」

「待て!

 話は私がする

 貴様は黙ってろ!」

「しかしこいつは…」

「うるさい!

 黙れと言っただろ!」


ギルバートの一喝に、兵士はよろめいて膝を着く。

子爵も咆哮の影響を受けて、少しよろめいていた。


「子爵は勝手にオーガを討伐しようとして、オーガに殺された

 貴様はそうはなしていたな」

「う…

 ああ…」


兵士は咆哮をもろに受けて、意識が混濁していた。


「ん?

 何だ、気付け薬が必要か?」


ギルバートは兵士に命じようとするが、周りの兵士達も同じ様な状態だった。


「あ…

 しまったな」


ギルバートは書類の山を掻き分けて、ポーションの入った箱を取り出す。

そこから気付け薬をとりだすと、兵士達の鼻先にそれを近付ける。


「う…

 ああ!」


「ふん

 意識が戻ったのなら、言い訳を聞こうか?」


ギルバートは残りの兵士達に、気付け薬を手渡す。

そうして濾しに手を当てて、兵士を睨みながら詰問する。


「子爵がオーガに殺された

 そういう報告だったな」

「あ…

 いや、オレは…」


「子爵が勝手にオーガに挑み、それで殺されただったな?」

「いや…」

「確か報告では、君達を囮に使おうとした

 そうだったな?」

「それは…」

「ワシが誰を囮に…」

「子爵

 今は黙っていてください」


ギルバートに言われて、子爵は困った顔をして引き下がる。


「それで?

 言い訳はどうする?

 彼はここに居るが?」

「それは…

 そうだ!

 他の兵士達を犠牲にして逃げたんだ!

 そうだ!

 きっとそうに違いな…」

「うるさい!

 いい加減な事ばかり!」

「ぐはっ!」


ギルバートは軽く引っ叩いたつもりだったが、兵士はその一撃で気を失ってしまった。


「そいつを連れて行け」

「はい」

「ああ、そうだ

 そいつと一緒に居た兵士達もな」

「はい

 既に身柄は押さえています」


兵士達は騎兵達が戻った時に、彼等に不信感を抱いていた。

子爵の人柄を考えると、とても彼がそんな事をするとは思えない。

そう考えると、どう考えても彼等が嘘を吐いている様にしか見えなかった。


「殿下…」

「ああ

 私は信じていなかったよ」


ギルバートは肩を竦めると、子爵に説明を求めた。

そこで子爵は、先ほど起こった出来事を説明する。


実は子爵が帰還する途中に、彼等が問題を起こしていた。

若い騎兵達は、ゴブリンの討伐に不満を覚えていた。

弓による一方的な勝利。

それで彼等は、ワイルド・ボアに怒りの矛先を向ける。

しかしそれも、あっという間に終わってしまった。


「つまらん…」


彼等の感想は、ワイルド・ボアの弱さに対してだった。

それはそうだろう。

彼等が身に着けているのは、最新の強力な武具だった。

それを使えば、ワイルド・ボアを倒す事など造作でも無い事だったのだ。


「何とくだらない」

「そうだな」

「何がオーガだ

 何が巨人だ」

「そうだ

 殿下共が弱い腰抜けなだけだろう」


若い騎兵達は、良い気になって森を出て行った。

彼等は強くなった気になって、ギルバートや子爵を馬鹿にしながら帰っていた。

そこでそのまま帰れば、まだマシだったのだろう。

彼等はそこで、誤った選択をしてしまった。


「おい

 確かこの先の方に…」

「そうだな

 オーガが近くに居るから気を付けろとか言ってたな」

「ああ

 あの腰抜け共

 妙にビクビクしてたよな」

「はははは

 違えねえ」


騎兵達は良い気になって、オーガに襲撃を仕掛ける事にする。

そのまま無防備に森に入ると、オーガを探して声を上げる。

子爵がオーガを警戒したのは、何もオーガが怖いからでは無い。

確かにオーガは手強いが、倒せない訳では無いのだ。

命令はゴブリンの討伐であって、オーガは刺激しない様に指示があったからだ。


「ふははは

 オーガだと?」

「腰抜けの魔物

 出て来いよ」

「おらおら!

 どこに居るんだ?」


彼等はオーガの事を知らなかった。

ゴブリンやコボルトしか討伐しておらず、オークの強さも知らないのだ。


ゴガアアア


そして彼等は、オーガのテリトリーに入ってしまった。

オーガは騒ぐ彼等の声を聞いて、不機嫌に咆哮を上げた。


「ひいっ!」

「な、何だ?

 今のは?」


彼等はオーガを知らないので、当然咆哮の恐ろしさを知らなかった。

まともに咆哮の影響を受けて、彼等は恐慌状態に陥った。


「ひいい」

「うわああ」

ゴガアアア


彼等がまともに戦う意思があり、咆哮を受けていなければ。

或いは戦いに少し慣れていたのならば、ここに残って戦えただろう。

彼等が身に着けた武器ならば、オーガに手傷を負わせる事は簡単だったのだ。

しかし彼等は、咆哮の恐怖に負けてしまった。

魔物と戦い慣れていなくて、恐ろしさに逃げ出してしまったのだ。


グガアアア

「ひいい」

「逃げろ!」

「うわああ」


騎兵達が逃げ出した事で、オーガはさらに激昂する。

そうして騎兵達を追って、そのまま森から公道へ出て来た。

彼等は逃げ惑い、公道で右往左往する。

そこへ運悪く、帰還する子爵達が到着した。


グガアアア

「な!

 オーガだと?」

「マズいですね

 隊商でも見付かったんでしょうか?」

「急ぐぞ」

「はい」


オーガを放置していたのは、迂闊に手を出すと危険だからだ。

隊商が近くを通るので、隊商が居なくなるまで放置していたのだ。

しかし騎兵達が、そのオーガを森から連れ出してしまった。

当然公道では、他の者達も逃げ出していた。


「うわあああ」

「人食い鬼だ」

「逃げろ」


「マズいな」

「ええ

 急ぎましょう」


逃げる馬車を避けながら、子爵達は声のする方へ急いだ。


グガアアア

「ひいっ!

 げはっ」


そこには既に、3名の犠牲者が出ていた。

若い騎兵達は、逃げ惑うだけで攻撃も出来なかった。

そうしてオーガに殴られて、3名が致命傷を負っていた。

さすがに丈夫な鎧でも、まともに受けては一溜りも無い。

せめて遠くに逃げ出せば、こんな事にはならなかっただろう。

しかし彼等も馬も、恐怖で冷静な判断が出来なくなっていた。


「居たぞ

 弓で牽制しろ」

「はい」

ヒュン!


兵士達は矢を番えると、騎兵達に当たらない様にオーガの腕や胸を狙う。


ゴガアアア

「よし

 こっちに気付いたぞ」

「どうします?」

「無理に突っ込むなよ

 冷静に周囲を囲め」

「はい」


グガアアア


オーガは子爵に気付き、厄介そうな矢に警戒する。

普通の矢では弾かれるが、この特別製の矢はオーガにも刺さっていた。

それでオーガは、警戒して子爵達を見ていた。


「ひいい」

「に、逃げるぞ」

「しかし仲間が…」

「良いぞ

 あいつ等を餌にくれてやれ

 その間に逃げるんだ」

「あ、ああ…」


若い騎兵達は、子爵を見捨ててしまうと逃げ出した。

彼等が犠牲になっている内に、さっさと王都に逃げる事にしたのだ。

そうして彼等は、王都に逃げ帰って報告する。

子爵がオーガを襲撃して、返り討ちにあって死んだと。

そうしてでっち上げる事で、何とか誤魔化そうとしたのだ。


「慌てるな

 ゆっくり囲め」

「しかし相手はオーガですよ?」

「ああ

 だがこの装備なら、オーガとて恐れる事は無い」


本当はこの装備でも、オーガは侮れない相手だ。

実際に騎兵達が、3名もそこに倒れている。

しかし恐れていないと示さなければ、彼等の動揺は抑えれないだろう。

オーガに勝つ為には、兵士達を鼓舞する必要があるのだ。


「恐れるな!

 咆哮は危険だが、その他は大した事は無い

 ゆっくり囲んで、的確に攻撃を当てろ」

「は、はい」


「魔物の攻撃は大振りだ

 弓で先に目を狙え」

「し、しかし仲間が周りに…」

「慎重に狙えよ」

「はい」

「ここはワシに任せろ」


老騎兵がそう言うと、矢を番える。

そうして新調に狙いを定めると、オーガの視線が逸れた一瞬を狙う。


「しっ!」

ヒュン!

グガ…


矢は見事に、オーガの右目を射抜く。

それでオーガは、一瞬だが態勢を崩した。


「今だ!

 狙え!」

「はい」

「うおおおお」

「うりゃあああ」


騎兵達は鐙を当てると、一気にオーガの前に踏み込む。

そして騎兵達は、クリサリスの鎌を振り上げる。


「先ずは四肢を切り裂け

 特に腕に気を付けろ

 あんな風にはなるなよ」

「はい」

「せりゃあああ」


子爵が死んだ騎兵を示し、彼等に注意を促す。

片目を失ったと言っても、まだ腕を振り回している。

それを食らえば、この装備でも致命傷になり兼ねない。

振り回す腕を避けながら、騎兵達は確実に攻撃を当てた。


「食らえ!」

「これで止めだ!」

グ…ガア…


オーガは両腕を切り落とされ、足もズダズダに切り裂かれる。

そうして止めに、首筋に一撃をお見舞いした。


「はあ、はあ…」

「何とか倒せましたね」

「ああ

 しかし…」


騎兵達は、思ったよりも強くなっていた。

確かに1体だったからだが、オーガを倒せたのだ。

その事だけでも、今回の戦いは良い経験になっただろう。


「いや

 オーガを倒したんだ

 胸を張るべきだな」

「はい…」


「王都に戻るぞ」

「その前に…」

「ああ

 折角の素材だな」


彼等の後方には、ワイルド・ボアを載せた馬車が控えていた。

その馬車にオーガの遺骸を載せると、子爵達は王都に向かって帰還した。


「といった具合でして…」

「ふむ

 大体予想通りだな」

「はあ…」


「いや、私は信じていたよ?

 しかしその直前の事があったからね」

「え?」

「いやあ

 森が火災になるって…」

「あはは…

 お恥ずかしい」

「そうだな

 子爵達が住んでいた場所には、森は無かったからな」


ギルバートはオアシスを思い出し、困った様な顔をする。


「しかし今後は、火の始末は気を付けてくれ

 ここには燃え易い物が多いからな」

「ええ

 気を付けます」


「しかし…

 予想通り、子爵でも御しきれないか」

「そうですね

 まさかあんな事を仕出かすとは…」


子爵も彼等が勝手な行動をした時、てっきりそのまま王都に戻ると思っていた。

しかし予想に反して、彼等はオーガを襲撃した。

オーガを討伐すれば、ここでも大きな顔を出来ると思ったのかも知れない。


「どうせゴブリンを簡単に討伐出来たから、気が大きくなったんでしょう」

「だろうね

 ここでも態度が大きくなっていた

 単なる新兵なのにね…」

「はあ…」


「まあ、当分は牢で反省してもらうさ」

「その後は?

 あれでは兵士としては…」

「なあに

 たっぷりと反省させて、教育してもらうさ

 その時は協力をお願いしますよ」

「え?

 はあ…」


反省という時、ギルバートの目付きが鋭くなる。

その視線に、子爵も思わず後退る。


「牢で十分に反省をさせたら、当面は下級兵士としてみっちりと扱く」

「扱きですか?

 しかしその程度では…」

「ああ

 だから特別に私が、しっかりと扱いてやる」

「殿下がですか?」

「ああ

 どいやら私がやると、兵士が改心するらしい」

「はははは…

 なるほど」


若い騎兵達の事は、一先ずはギルバートに任せる事になる。

その他の騎兵達は、新しいメンバーを加えて再編成される事になる。

そしてその騎兵達の指揮を、子爵が執る事になった。


「私がですか?」

「ああ

 今は有能な指揮官が居ないんだ

 子爵ならば…」

「しかしワシは、今日失敗したんですぞ?」

「ああ

 私は失敗すると踏んで頼んだんだ」

「え?」

「それで反抗する奴等を、しっかりと再教育する

 それが狙いだったんだ」

「なるほど…」


「そういう訳で、今回はすまなかった」

「いえ

 そういう事でしたら…

 しかし出来るなら、事前に報せておいて欲しかったですな」

「いや、子爵はそういう…ホラゲイ?」

「腹芸ですかな?」

「ああ、そうそう

 その腹芸ってのは出来ないだろう?」

「誰の入れ知恵ですかな?」


先ほどの発言からも、この作戦の立案はギルバートでは無いだろう。

子爵に睨まれて、ギルバートは降参だと肩を竦める。


「アーネストだ

 アーネストの提案なんだ」

「なるほど

 彼でしたか

 はあ…」


こうしてアーネストの提案で、騎兵達の選別は無事に終わった。

質の悪い騎兵達は、今回の事で振り分けられた。

これで残された騎兵は、子爵に着いて働いてくれるだろう。

ギルバートは子爵に感謝して、今日は休む様に言い渡した。

それで子爵は、待たせている部下達と共に休息に向かった。

まだまだ続きます。

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