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聖王伝  作者: 竜人
第十四章 女神との邂逅
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第464話

ギルバートは王宮内で、セリアと甘い一時を楽しんでいた

二人の事を心配して、周りに休む様に言われたからだ

それでここ2週間は、二人だけでゆっくりと過ごしていた

今もセリアはギルバートにだかれて、気持ち良さそうに眠っていた

ギルバートは午後の陽気に、少し微睡んでいた

傍らに気持ち良さそうに眠る、セリアを愛おしそうに撫でる

その姿を見ていると、自分も眠たくなってきていた

少し眠ろうと横になると、部屋のドアがノックされた


「ギル

 少し時間をもらえるか?」

「ん?

 構わないが…」


ギルバートは上着を羽織ると、ドアの鍵を外した。

部屋の外にはアーネストと、書類の山を抱えた兵士が立っていた。


「おい

 時間って…」

「ああ

 こいつの確認をしてもらいたい」

「はあ…」


書類の山を見て、ギルバートは溜息を吐いていた。


「バルトフェルド様とお前で、全部片づけるんじゃ無かったのか?」

「そのつもりだが…

 これは王族や宰相の認可が必要なんだ

 オレ達だけで勝手は出来ない」


ギルバートは試しに、書類の山の上の方を数枚手に取る。

その間に兵士は、思わず部屋の中を覗き込んでしまった。

中ではセリアが裸になって、シーツに包まって眠っている。

その様子を見て、兵士は思わず赤面してしまった。


「ふむ

 貴族間の領土問題や魔物に対する出兵の許可…

 確かに認可が必要か」

「だろう?」

「しかし貴族の子息と町娘の婚姻とか…

 こっちは必要じゃあ…」

「甘いな

 勝手に決められないんだ

 子息が後継ぎであるかどうか、そこも考えてやらないと」

「そうか?

 面倒な案件もあるな」


二人が部屋の前で話し込んでいる間に、兵士はソワソワしていた。


「ん?

 あ!」


ギルバートは兵士の視線に気が付き、慌ててドアを閉める。


「ん?

 どうした?」

「い、いやあ…

 他で話そうか」

「ん?」


納得しないアーネストを連れて、ギルバートは手近な空き部屋に移動する。

そしてそこのテーブルに、山の様な書類を積み上げた。


「メイドにお茶を用意してもらってくれ」

「はい」


兵士はそう答えたが、何か言いたそうにしていた。


「何か?」

「あのう…

 イーセリア様は?」

「はあ…」


ギルバートは兵士を睨んでから、セリアにも軽食を用意させる様に指示をする。

その際に、メイドに向かわせる様にも注意をする。


「分かりました

 お、私は何も見ていませんので」

「余計な事だ!」

「は、はい」


兵士は敬礼をすると、慌てて部屋を後にする。

ギルバートは溜息吐きながら、書類の山に手を伸ばした。


「なあ

 さっきのは?」

「セリアが眠っていたのを見たんだ」

「ふうん…」


アーネストは頷くと、自分も書類の山に手を伸ばす。

ギルバートに分かり易い様に、書類を分けて前に並べる為だ。

そうしながら何となく、ギルバートに質問する。


「それで…

 どうだった?」

「へ?」

「最後までしたのか?」

「な、なにを!」

「失礼します」


タイミング良くメイドが、お茶を持って現れる。

それでギルバートも、それ以上は何も言えなくなってしまった。

二人が押し黙って書類を見ているので、メイドは首を傾げる。

それでも気を遣ってか、そのままお茶を置くと、黙って部屋を出て行った。


「で?

 どうなんだ?」

「馬鹿な事を聞くな」

「そうか…

 まだなのか」

「ぐぬう…」


ギルバートは困った顔をして、手にした書類を下に置く。


「でも、セリアが準備が出来ているのは分かっているんだろう?」

「それは…」

「あまり引き延ばすなよ

 愛情を疑われるぞ」

「私はそんな…」


「確かにセリアは、見た目はまだ子供だ」

「…」

「しかし彼女は、お前よりも年上なんだぞ?」

「それはそうだが…」


歯切れの悪い親友を見て、アーネストは意地悪い笑みを浮かべる。


「エルリックの話では、あれでも子供を産める身体だそうだ」

「え!」

「それも15歳ぐらいからだそうだから…

 少し遅いぐらいかもな」

「そう…なのか?」

「ああ

 しっかり反応してたんだろう?」

「それは…

 そのう…」


ギルバートは思い出してか、顔を赤くしてもじもじし始める。

そんな親友の様子を見て、アーネストはさらに揶揄う事にする。


「その様子では、さっきも…」

「うるさい

 声は聞こえていなかっただろ」

「ん?」

「いや、だからその」

「あ…」


アーネストは揶揄い過ぎたと、気が付いて黙る。

どうやら少し前までは、二人でお楽しみだったのだろう。

それでそんな事を確認したのだ。


「気にするな

 王族には子作りも立派な公務だ」

「そんな!

 公務だなんて…」

「そう思うのなら、もっと大事にしてやれよ」

「大事だと思うから…

 壊してしまいそうで怖くて…」


ここでアーネストは、思い違いをしていた事に気が付いた。

ギルバートはセリアが、単に可愛いからでは無いのだ。

彼女が幼く見えるので、壊してしまいそうで怖かったのだ。


「あ…

 大丈夫だと思うんだが?」

「本当か?」

「ああ

 フィオーナも最初は、凄く怖がってたし

 痛いって言ってたからな」

「痛いんだ…」


痛がると聞いて、ギルバートはさらに深刻な顔になる。


「あ、でもな

 2回目からは喜んでたぞ

 あの声だって気持ち良くて、喜んで上げるのだから」

「そうなのか?」

「ああ

 痛がるのは最初だけだ」

「そうなら良いのだが…」


ギルバートも初めてなので、セリアを傷つたりしそうで怖いのだろう。

そんな不安んもあってか、ギルバートは暫く不安を語る。

しかしその内容は、傍から聞いたら惚気にしか聞こえなかった。


「あのなあ…

 それは女では普通な反応だと思うぞ?」

「しかし…

 あんな事になるなんて…」

「本に書いてある事が全てじゃあ無い

 現にオレだって、最初は大変だったんだから」


こればっかりは、アーネストでも手に余る話であった。

アーネストにしても、フィオーナが初めての女性である。

それに経験のある大人と言っても、感想はそれぞれ違うだろう。

ましてはギルバートとセリアでは、参考になりそうな相手は居なかった。


「まあ、ギルが怖がるのは当然だが…

 無理はするなよ?」

「当たり前だ

 セリアを傷付けるだなんて…」

「そうじゃあ無い

 セリアの気持ちも考えてやれって事だ」

「セリアの?」

「あの子も勇気を出して、お前に会いに来ているんだろう?

 不安だと思うぞ」

「それは…」


「まあ、安易に試してみろとは言えないが…

 エルリックの言葉本当なら、大丈夫だと思うぞ」

「そうかな?

 あんな小さな身体じゃあ、私は壊してしまいそうで怖いよ」


そんな話をしていると、兼ねが回鳴るのが聞こえる。


「しまった

 こいつを処理しないと」

「なあ

 なんでそんなに焦るんだ?」

「はあ?

 女神様に会いに行くんだろう?」

「え?」


「子爵の訓練は軌道に乗り始めた」

「そうなのか?」

「ああ

 そして公務はバルトフェルド様に任せる」

「ううむ

 また任せるのか…」


ギルバートは書類の山を見て、申し訳無さそうにする。


「その為にこうして、バルトフェルド様に裁決できない書類を持って来たんだ」

「採決出来ないって…」


アーネストはギルバートを見ながら、首を振って否定する。


「これは王族が決める内容だ

 だからお前が必要なんだ」

「しかし今までは…」

「そうだな

 お前が行方不明って事になってからな

 それで先延ばしにするか、バルトフェルド様が認可していた」


しかしバルトフェルドでも、全ての問題に認可を出せない。

そうした問題に関しては、先送り出来る物はこうして残されていた。


「これは先送りされていた問題だ

 だから王族であるお前が、その責任を持って認可する必要があるんだ」

「私の?」

「ああ

 王太子の認可なら、他の貴族から不満も出ない

 だからお前が決める必要があるんだ」


アーネストはそう言って、書類の内容を説明する。


「こっちの領土問題は、魔物の討伐で他領に入った事が原因だ」

「それなら何の問題も…」

「馬鹿だな

 仲が良い領主や、事前に相談していれば問題にはならない

 しかしここの領主達は、父親の代から仲が悪いんだ」

「それはまた…」

「だから王家が仲裁に入り、問題が無かったか確認して欲しいとの事だ」


既に取り調べは終わっていて、問題が無かった事は確認されている。

しかし相手の領主が、勝手に入った事に腹を立てているのだ。

王家が間に入って、今回は不問にしてやれと言えば済む内容だ。

それを認可する為に、ギルバートの裁量が必要なのだ。


「なあ…」

「ん?」

「この書類の山って…」

「ああ

 ほとんどが似た様な内容だ

 一言お前が、良いよって書き加えれば済む様な書類だな」

「はあ…」


ギルバートは溜息を吐きながら、書類に印章と一文を加えて行く。

そんな事なら、他の者でも良いだろうとも思う。

しかし王家の取り成しがあるからこそ、大きな問題にならずに済むのだ。

そういった意味でも、ギルバートの認可は必要なのだ。


「何で私が…」

「言うな

 陛下もこんな書類を扱われていた」

「サルザート様は?」

「勿論、サルザート様で可能ならそこで処理されてたさ

 しかし今は、宰相も居ないんだ」

「そうか…」


王都の人手不足が、ここにも影響していた。


「一層の事バルトフェルド様を…」

「止めろ

 年寄りを虐めるなよ」

「虐めるって…」

「宰相が長生き出来ないってのは、その仕事の内容もあるんだぞ」


一見簡単に見えるが、認可次第では話が拗れる可能性もある。

今回はアーネストが、事前に公平になる様に目を光らせている。

しかしそれでも、後から不満が出る事がある。

そうした不満の矛先は、認可を出した宰相に向けられるのだ。


「バルトフェルド様が過労と不安で潰れるぞ」

「そんなにか?」

「ああ

 だから宰相を選ぶのは慎重を期すんだ」


アーネストはそう言いながら、次の書類を手渡す。


「はあ?

 領内の娼館の認可だと?」

「ああ

 それも重要だな」

「重要なのか?」

「ああ

 領民の不満を解消する為には、息抜きの場も必要だ」

「そんなの勝手に…」

「王国の法で禁止しているだろう」


奴隷や選民思想の温床になると、娼館は法で禁止されている。

勿論それぞれの街で、こっそりと娼館は作られてる。

そういう施設は、街の治安の維持の為にも必要なのだ。

しかしあくまで、黙認して営業をしているのだ。

今回はそれを、国から認めて欲しいという物だった。


「だったら駄目だろ」

「ああ

 だからこれは不採用に…」

「なら何で混ざっているんだ?」

「それはお前にな、領主の意義を問う為だ」

「領主の?」


アーネストはギルバートに、不裁可の印を押させる。

その上で下に、王国の法に於いて認められぬと書かせる。


「なあ

 この一文に…」

「次はこっちだ」


それは領民の争いで、男が領民を殺した事への嘆願書であった。

これも不裁可を押してから、下に一文が加えられる。


「なあ

 この意味って…」

「ああ

 王国の法に於いては、認められ無いって事だ」

「ならこの男も…」

「領主の計らいで、領外からの追放となる」

「へ?」


「魔物がうろつく領外への追放だ

 実質死刑に等しいだろうな」

「そんな!

 だってこの男は…」

「妊婦の妻に乱暴されて、勢い余って殺害

 確かに情状酌量の余地はあるだろう」

「そうだろう?」


アーネストはしかし、淡々と説明する。


「しかし殺してしまった事は事実だ」

「しかし…」

「それに…

 次に同じ事が起こったら?」

「それは…」


「だから領外への積報処分なんだ

 可哀想だけどな」

「そんな事…」

「そしてそれを行うのが、領主の責務だ

 何よりも領民の安全を護る為にね」

「くっ…」


アーネストの言う事は、一々正論だった。

しかしそれを認めると、何か違うと思った。


「これが領主のするべき判断なのか」

「ああ

 だから領主は、恐らく隊商を通らせるだろうね

 偶然隊商が通って、彼等を他の町に運ぶかも知れない」

「へ?」


「それは彼等がどうするかだ

 そこまでは領主も責任は取れないからね」

「アーネスト…」

「そういう判断も、国王となれば考えなければならない

 だからお前には必要なんだ」

「それじゃあこっちも?」

「ああ

 国の認可は無くとも、恐らくこの商人は作るだろう

 後は領主がどう判断するか…」


娼館に関しても、国の法律では認められない。

だからその一文を、こうして書き記すのだ。


「ここの領主の性格を考えて、彼がどう判断するのか?

 国王になればその判断も必要になる」

「うげえ…

 面倒臭いな」

「言うな

 今はバルトフェルド様が肩代わりしてるんだぞ」


よく見るとその書類には、バルトフェルドが記した注意書きが添えられていた。

アーネストもそれを見て、この書類の不裁可を決めていた。


「有能な宰相が居れば、これも手を出さずに済むんだが…」

「だったらアーネストが…」

「ごめん被る」

「だって私の手助けをするって…」

「しかし宰相は嫌だ!

 お前もバルトフェルド様も、オレを頼り過ぎだ」


アーネストはそう言っていたが、それも才能が有るからだろう。

今回の書類の件も、アーネストが手助けしたから、これだけの量で済まされていた。

そこの所を、バルトフェルドも見抜いていたのだ。


「どうしても駄目か?」

「い・や・だ!」

「そこをなんとか…」

「良いから、次!」


アーネストはそう言いながら、次の書類を用意する。

時刻は夕暮れに差し掛かり、そろそろ夕食の準備が済まされようとしていた。

ギルバートは早く終わらせて、セリアの元に戻りたいと思っていた。

書類の数はそう多くは無いが、内容はうんざりする様な内容だったからだ。


その間にセリアは、ギルバートの部屋で待ち続けていた。

昼間の続きがして欲しくて、もじもじとシーツに包まれながら。

まだまだ続きます。

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