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聖王伝  作者: 竜人
第十四章 女神との邂逅
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第462話

これはギルバートが、子爵と訓練をしていた間の話だ

ギルバートが訓練に出ている間、セリアは王都で待ち続けていた

その間は寂しくて、毎日の様に城門を訪れて待っていた

だから王都の住民達は、セリアの事を心配していた

特にフィオーナは、その姿に憤慨していた

フィオーナは朝から、セリアを抱き締めて慰めていた

セリアは昨晩も、寂しくてギルバートの部屋に訪れていた

それでも1週間が経っていないので、ギルバートは戻って来なかった

それでセリアは、今朝から寂しくてフィオーナに泣きついていた


「まったく!

 お兄様は!」

「仕方が無いだろう

 ギルだって公務で出てるんだ」


アーネストは憤慨するフィオーナを見て、肩を竦める。

しかしうっかり庇った為に、矛先がアーネストに向けられる。


「アーネストはそれで良いの?」

「ん?」

「私に甘えたくても、セリアがこうして泣いて来るのよ?」

「そ、それは…」


アーネストは慌てて、顔を赤くして否定する。


「オレはフィオーナに甘えては…」

「良いの?

 一昨日の晩は…」

「わあ!わあ!

 言うな!

 言わないでくれ」

「言わないでくれ?」

「…」


フィオーナの圧に負けて、アーネストは跪いてお願いする。


「頼む

 言わないでください」

「そう?

 それでどうするの?」

「しかしな…

 王都から出ている以上は…」


こればっかりはアーネストも、簡単にどうこう出来ない。

ギルバートの野営している場所に行って、帰って来いと言うのは難しいのだ。


「どうする気なの?」

「いや、ギルが何処に居るかまでは分からないだろう?」

「それはそうだけど…」


アーネストは懸命に、フィオーナを説得しようとする。


「そもそもオレが向かっても、ギルが素直に戻って来るか…」

「それもそうね」

「だろ?」

「それなら今夜も、アーネストはお預けね」

「え!」

「だってセリアが可哀想なんだもの」

「それは…」


二人の遣り取りを見て、メイド達は笑いを堪えていた。

アーネストは顔を赤くして、そんなメイド達の方を睨む。


「こほん

 フィオーナ様

 あまり無理を言われては、アーネスト様もお困りですよ」

「それはそうなんだけど…

 セリアがこれじゃあねえ…」

「まあ、そうですわね」


セリアは泣き疲れて、フィオーナに抱っこされて寝ていた。

少しは大人になったかと思ったが、まだまだ精神的には子供なのだ。


「しかし…

 この中で一番年上なのにな」

「セリアって何歳なの?」

「そうだな…

 エルリックの話から、本来なら250年ぐらい前に産まれた事になるな」

「え?

 それって…」


その考えで計算すると、相当な年になるだろう。


「だが、妖精郷で暮らしていたからな

 人間の年齢で言えば、約20歳ぐらいだって」

「それだって大した年齢じゃないの」


フィオーナは今年で13歳になる。

公式にはセリアは、その2つ下の11歳となっている。

実際に見た目は、そのぐらいにしか見えないからだ。

しかしその中身が、倍の20歳ぐらいとは誰も思わないだろう。


「うーん

 それにしてはなあ…」

「アーネスト」

「ふぬぐっ」

ズドム!


アーネストはセリアの、慎ましやかな胸を見る。

しかしフィオーナの怒りに触れて、拳をもろに下腹部に受ける。


「どうして男はいつもいつも…」

「いや、だって…」


確かにセリアは、まだまだ平原に近いなだらかな丘だった。

しかしそれを凝視するのは、女性の前では些か不謹慎だった。

フィオーナはふくよかな山脈を隠しながら、険しい表情でアーネストを睨む。


「まったく」

「しかしな、確かに成長が遅いんだよ

 フィオーナがその年の頃には、立派な山に…」

「馬鹿!」

ゴシャッ!


フィオーナの突き上げが、アーネストの顎に見事に決まった。


「ぐはっ」

「信じられ無い」

「ふみゅう?」


フィオーナが騒ぐので、セリアは目覚めてしまった。


「あ…」

「ぐうっ…

 フィオーナが騒ぐから…」

「もう!

 アーネストのせいだからね」

「そんな…」

「ふみゃあ」


セリアは可愛く欠伸をして、腕をのばした。

しかしやはり、その小さな丘は目立たなかった。


「ううん

 やはり子供っぽ過ぎるんだよな」

「そうね…

 それは確かに…」


アーネストみ言われるまでも無く、フィオーナにもセリアは、まだまだ少女にしか見えなかった。

それはそれで可愛いのだが、確かにこれは問題があるだろう。


「ギルが手を出さないのは、その容姿もあるんだろうな?」

「うにゅ?」

「そうね…

 でも、女王の姿なら大人になれるんでしょう?」

「そうだな

 少なくともフィオーナと、同じぐらいの年頃には見えたな」


しかし問題は、それが長続きしない事だ。

精霊力を使うので、長時間の維持は不可能なのだ。

それにそうしてまで、ギルバートを誘惑するのはどうなのだろうとアーネストは考える。

結局は時間を掛けてでも、セリアが成長するのを待つ方が良いのでは?

アーネストはそう考えていた。


「何とかならないの?」

「何とかって…」

「セリアが長時間、女王の姿を維持するとか?」

「無理だろうな…」

「うにゅう…」


セリアは女王の姿の話をされて、少しだけ落ち込んでいた。

セリア自身も、自分の身体が子供っぽい事にコンプレックスを抱いていたのだ。


「あ、いや

 セリアが悪い訳じゃあ無いぞ」

「そうよ

 お兄様が悪いんだから」

「んみゅう…」

「そうだぞ

 セリアは可愛いんだから」

「だって…

 お姉ちゃんみたいな大人の魅力?

 セリアには無いもん」


セリアは泣きそうな声で、小さな膨らみを隠す。


「こうなったら…」

「ん?」

「私が使っていた服を与えるわ」

「フィオーナの服って…」

「その中でもとびっきり色気のあるやつを…」

「え?

 そんなのがあるのか?」

「アーネスト!」


フィオーナに睨まれて、アーネストは震えながら黙る。

しかしアーネストの記憶の中には、そんな衣装は存在しなかった。


「行くわよ、セリア」

「ふみゃ?」

「こうなったらお兄様と戦争よ」

「戦争?」

「ええ

 女の魅力を見せてやるわ」

「おいおい…」


アーネストは止めようとするが、フィオーナは既に立ち上がっていた。

そして目を激しく燃え上がらせて、セリアを引っ張って行く。


「大丈夫かな…」


後に残されたアーネストは、心配そうに呟いていた。


フィオーナは自室に戻ると、さっそく大人な服を漁り始める。

先ずは胸元が大きく空いた服を着せてみる。

しかしセリアでは、何だか残念な結果となってしまう。


「ふみゅう…

 大きいよう」

「これも?

 駄目ね…」


胸が自己主張をしていないので、胸元の布は大きく前に下がっている。

それに少し動いただけで、肩から紐がずり落ちてしまった。

セリアはなで肩なので、余計にそなってしまうのだ。


「あらあら

 それじゃあ先に、風邪を引いてしまうわよ」

「そうねえ…」

「んみゅう…」


途中からジェニファーも協力して、幾つか衣装を持って来る。

しかし際どい衣装も、セリアでは着こなせないでいた。


「困ったわね」

「そうねえ…

 まさかここまでとは…」


少女と言うよりは、セリアは未だに幼女に近い体形をしている。

少しは背は伸びたのだが、他の膨らみはまだまだ慎ましやかなのだ。

その控え目な胸では、胸元を主張する服は似合わなかった。


「後はこれぐらいか…」

「でもねえ…

 今夜も冷えるわよ?」

「ふみゅう

 寒いのはやあ」

「そうよね

 でも、お兄様に愛してもらえたら、すぐに暖かくなるわよ」

「本当?」

「ええ

 その為にも…

 お兄様を誘惑する様な服を選んどかないと」

「うん!」


ジェニファーは溜息を吐きながら、二人の様子を眺める。

確かに娘達の幸せも大事だが、些か急ぎすぎな様な気もしていた。

それは偏に、セリアの成長が遅いせいもあった。

こんな子供の体系で、無事に子供を身籠れるのだろうか?

フィオーナでも結構危険で、難産に苦しんでいたのだ。


フィオーナはアーネストに告げていなかったが、初産は難産だったのだ。

子供を産むには、フィオーナもまだ少し早かった。

無事に産めたのは、精霊の加護もあったからだ。


「よし!

 こうなればこうよ!」

「ふみゅう?

 薄くて透け透け?」

「そうよ

 これは特別な布を使っていてね…」


フィオーナは熱心に、その薄絹の説明をする。

それはジェニファーが、夫の為に特別に仕入れていた物だ。

フランシス聖王国から仕入れて、大事に取って置いた物だった。

いつの間にかその布を、フィオーナは下着に仕立てていた。


「フィオーナ!

 それは!」

「え?

 お父様の遺品の中に入っていたのよ?

 アーネストに使おうと思って、仕立ててもらっていたの」

「あなた、それが幾らするのか…」

「え?」

「いえ、何でも無いわ…」


ジェニファーは自分が使おうと、仕入れていたとは言えなかった。


「これなら着れるでしょう?」

「うみゅう?

 透け透け」

「ふふふ

 それを着て迫ったら、さすがの兄さまでも…」

「本当?」

「ええ

 これでバッチリだわ」

「大丈夫かしら?」


ジェニファーは心配していたが、二人はやる気満々だった。

止めるのも可哀想なので、ジェニファーは黙って見守る事にする。


「お兄様が帰って来るのは明後日よ」

「うん」

「目に物見せてやるわ」

「うん」

「これでお兄様も、セリアにイチコロよ」

「わーい」


二人は素直に喜んで、どうやって誘惑するか作戦を立てる。

そんな事が話されているとは知らずに、ギルバートは野営地で子爵を見守っていた。

知っていたら、そんな馬鹿な事をするなと止めただろう。

しかし二人は、順当に作戦を練っていた。


「という具合でね」

「何を考えているんだ!」

「しかし…

 セリアに子供は産めるのか?」

「そりゃあ身籠れたら…」

「出来るんだ」


アーネストはセリアの身を案じて、エルリックに相談に来ていた。

あの姿で考えると、そんな行為に耐えれるのか不安だったのだ。

しかしエルリックの答えは、予想外の物だった。


「大体エルフでも、人間の成長より遅いんだ

 それで幼く見える外観もあって、慰み者に捕らえられていたんだよ」

「ああ…

 そういう事なのか」

「ああ」


「大体私達ハイエルフは、人間の数倍成長が遅いんだ

 それが子供を産むまでと考えたら、君達の年齢で30歳ぐらいになるだろう」

「そんなにか?

 いや、それならセリアも…」

「そうだな

 普通に考えればそうだろう

 しかしそれでは、ハイエルフは簡単に途絶えているだろ?」

「え?」

「だから15歳ぐらいで、子供を産む事は出来るんだ」

「いや、15歳だと…」

「とてもじゃ無いが、幼女ぐらいにしか見えないだろうな

 しかし中身は、当然ながら10歳以上の成長はしている」


エルリックの説明を聞いて、アーネストは頭を抱える。

それは魔導王国じゃなくても、エルフを隷属したくなるだろう。

少女や幼女に見えるぐらいの年頃でも、中身は既に大人になっているのだ。

それならそういう趣向の者なら、喜んで手を出したくなるだろう。

実際にしれで、エルフは奴隷として狙われていたのだから。


「まあ、そんなセリアに手を出すと言うのなら…」


エルリックは殺気の籠った眼で、アーネストを睨んでいた。


「いや、それでもセリアが望んでいるからだろ?」

「どうだかな?

 確かに大人なんだが…

 イーセリアはまだまだ子供な思考をしているからな」

「それは…」


確かにセリアは、見た目と変わらない子供らしさを見せている。

だからこそ、時々本当に子供なんだと思ってしまうのだ。


「あの見た目通りに、中身も子供なのか?」

「どうだろう?

 そもそも我々エルフは、性欲などほとんど無いからな

 子供を産む事も、種の存続の為だと感じてるし」

「そうなのか?」

「ああ」


しかしセリアの様子を見る限り、その様には見えなかった。


「どうやら長く人間と暮らして、影響を受けている様だ」

「影響って…」

「間違い無い」


「そもそも、あの見た目で欲情するってどいうなんだ?」

「それはオレに言われても…」

「ギルバートもそうだ

 イーセリアに…グギギギ…」


エルリックが悔しそうに、歯軋りをし始める。


「だがギルは、何とか自制してるぞ?」

「当然だ!

 手を出したら呪いでも…」

「おいおい」


エルリックの過保護ぶりを見て、アーネストは苦笑いを浮かべる。


「これはギルバートに、警告をする必要があるな」

「はあ?」

「彼は野営地に居るんだったよな?」

「行くのか?」

「ああ

 行って妹に手を出さない様に、警告して来る」


エルリックはそう言うと、スタスタと王城の外に向かって行った。

ここから野営地までは、馬で半日の距離である。

そこまでどうやって行くつもりか、アーネストは疑問に思っていた。


そうして2日経ち、ギルバートは王都に戻って来た。

セリアは夜になるのを待って、フィオーナの下に訪れる。


「お姉ちゃん」

「ええ

 準備は良いかしら?」

「うん

 でも…」

「でも?」

「これって寒いよお…」

「大丈夫

 お兄様がすぐに、温めてくれるわ」

「本当?」

「ええ」


「うふふふふ」

「うみゅう

 早くお兄ちゃんの所に行きたい!」

「そうね

 頑張ってくるのよ」

「うん」


セリアは支度をすると、元気よく回廊を進む。

その後ろ姿を見送って、フィオーナは頑張れと心の中で声援を送る。


「さて

 私も着て行こうかしら」


セリアが去った後で、フィオーナも着替える。

今夜から暫くは、セリアに邪魔をされる事は無いだろう。

久しぶりに二人きりで、ゆっくり楽しめるのだ。

フィオーナは足取りも軽く、アーネストの寝室に向かって行った。

まだまだ続きます。

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