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聖王伝  作者: 竜人
第十四章 女神との邂逅
442/800

第442話

王都の王宮の中では、怒号が飛び交っていた

すっかり荒らされて、あちこちが汚れてしまっていた

それを家人やメイド達が片付けているのだが、それだけでは手が足りていない

結局は兵士も呼ばれて、メイドに叱られながら片付けていた

普段自分の部屋も片付けない様な、兵士に掃除が出来るのだろうか?

結局メイドに叱られて、そこは掃除し直されていた

手伝っているのか、邪魔をしているのか、よく分からない状況が続く

しかし総出で頑張ったからか、夜にはある程度の掃除は終わっていた


「ふう…」

「何とか住める程度にはなりましたね」

「みんなありがとう」

「いえ、殿下が頭を下げる事では…」


メイドや家人は、恐縮して困った顔をする。

しかしギルバートは、王宮内が元通りとまでは行かないにしても、綺麗になった事に喜んでいた。


魔物に操られていたとはいえ、あちこちで狼藉が働かれていた。

その場で致す者や、気に食わないと殺しを働く者。

中には剣で切り合って、柱や壁に派手な痕を残す者も居た。

さすがにそれは修復出来なかったが、タペストリーで覆い隠す事は出来た。

一段落着いたところで、一旦食堂に集まる。


「みんなお疲れ様」

「いいえ」

「そうですよ」

「まだ一仕事残っています」

「え?」


「まだ殿下のご帰還の祝いが出来ておりません」

「もう少しお待ちを」

「え?

 あ、いや…

 そんな事は祝わなくても…」


しかしメイド達は、張り切って支度を始める。

厨房を任される者も、腕に縒りを掛けた料理を作り始める。


そうは言っても、あの大惨事の後だ。

材料は不足しているし、時間もそんなに掛けられない。

厨房で家人は、短時間で満足出来る料理を悩んでいた。


「参ったなあ

 みんなも疲れているだろうに」

「それだけみんなが、お兄様の帰りを喜んでいるのよ」

「そうよ

 本当に大変だったんだから」


マリアンヌとフィオーナは、すっかり仲良くなっていた。

共に兄と慕うギルバートを、嬉しそうに見ている。

ギルバートが病で苦しんでいたのを、辛そうに見ていたからだ。


「フランツって本当に才能が無いから」

「そうねえ…

 国王は兎も角…

 あれじゃあ領主でも無理だわ」

「すまん…」

「あら?

 バルトフェルド様が恐縮するところでは無いわよ?」

「そうよ

 フランツがヘタレなだけなんだから」

「うう…」


二人に駄目出しをされて、バルトフェルドは辛そうに俯いている。

今回の事も、自分の教育が甘かったからだと反省している。

そこへ追い打ちを掛ける様に、政務での駄目出しもされていた。

バルトフェルドの心は、既にボロボロになっていた。


「いくら女にだらしが無い奴とはいえ…」

「お兄様…」

「バルトフェルド様が…」

「あ…」


それが止めになったのか、バルトフェルドは虚ろな顔をしてブツブツ呟いている。


「兎に角

 フランツには自領に戻ってもらう

 さすがに記憶が無いとはいえ、ここに居るとどういう影響が出るか分からない」

「そうですね…」

「私は顔も見たく無いわ」

「それもあるが…

 ここは誘惑も多いだろう…」


実際に王宮なのだから、見目の良いメイドも多い。

それで無くとも、誘惑に屈する者は多いだろう。

それに王国の政務を任せるには、些か不安が多過ぎる。


「暫くはマーリン殿に見張っていただいて、リュバンニの統治の勉強をさせる」

「へ?」

「お兄様…」

「それではあまりに甘くは…」

「そうですぞ

 もっと厳しい罰を…」


バルトフェルドも思わず、それは甘いと判断する。


「いや

 マリアンヌとの関係は白紙になる

 その上で自領で、厳しく見張って勉強させる」

「しかし…」

「今は人手が足りない

 王都はバルトフェルド様に任せなければならないし」

「え?」

「殿下は?」

「お兄様?」


「殿下が王位に着かれるのでは?」

「そうしたいのは山々だが…

 私はしなければならない事がある」

「ギル!

 それは今は…」

「魔物の侵攻もあるんだ

 当面は王位などと言っている暇は無い」

「しかし…」


バルトフェルドだけでなく、アーネストも反対を示す。

話しが聞こえたのか、慌ててフィオーナの元から離れて来る。

しかしギルバートの決心は固く、周りの声も聞こえていなかった。


「各地の備えは自領の判断に任せる

 幸い王国は、元々各領主に任せてあった」

「それはそうですが…」

「大まかな方針は各自に任せ、王都は復旧に集中する」


当面は王位を空位として、王都の復旧に務める。

王国の存亡に関しては、今はそれどころでは無い。

だから大まかな触れは出すが、各自領での判断が優先される。

王都が機能していない以上、そうせざるを得ないのだ。


「しかしそれでは…」

「そうだぞ

 あまりにも無責任な…」

「じゃあどうする?

 ここで国王だとほざいても、誰がそれを認めるんだ?」

「いや…

 それは…」

「しかし王位はどうするんだ?」

「私が暫定王位という事で良いだろう?

 どうせ機能はしていないんだ」

「それはそうだが…」

「些か乱暴な…」


アーネストとバルトフェルドは、困った様に顔を見合わせる。

しかし事実として、王都は未だに復興されていない。

ここで各領主が反抗しても、それを押さえる事すら出来ないのだ。


「王都の復興の指示はバルトフェルド様に任せる

 実行は移民として入る、ハルムート子爵に任せる」

「移民にですか?」

「ああ

 他に居るなら任せるが?」

「ぬう…」

「そうだよな…」


人手が足りない以上、それも止むを得ないだろう。

折角集めた兵士達も、今回の騒動で半数が使い物にならない。

後に厳罰に処すとしても、当面は牢内で反省させる必要があった。


「兵士は操られていたので…」

「駄目だ

 当人たちが覚えていないのでは、また同じことが起こる

 反省の意味も込めて、暫くは牢に入れておく」

「それは…」

「どれぐらいだ?」


「そうだなあ

 1週間ほど入れておいて、その間に何が起こったのか説明してやる

 その上で、二度とこんな失態を起こさない様に誓わせる」

「そうだな

 それが妥当だな」

「アーネスト様?

 それで大丈夫でしょうか?」

「覚えていないんだ

 無理に罰を与えても、反発するだけだろう?

 それよりは起こった事に自覚を持たせて、同じ失敗をしない様に反省させる

 妥当だと思うが?」


アーネストもギルバートの案には賛成していた。

罰は不当だと騒ぐだろうし、何もしないのでは他に示しが付かない。

それなら失態を反省する機会を与えて、復旧させた方が良いだろう。

勿論何をやったのかは、当人達にはしっかりと伝えるが。


「納得するでしょうか?」

「するんじゃないか?

 素っ裸で騒いでいたんだ

 思い当たる事は山ほどあるだろう」

「それも…そうですな」

「場合によっては、行為中だった者には責任も取らせる」

「行為中?」

「お兄様!」


今一理解出来ていないギルバートは、行為という言葉に首を傾げる。


「お前は…」

「殿下

 さすがにそれは…」

「お兄様、最低です」

「そうよ

 こんなはしたない話…」

「え?

 ええ??」


みんなから非難の表情を向けられて、ギルバートは困惑する。


「ギル…」

「うん?」

「そのうちセリアに教えてもらえ

 あいつの方が知っていそうだ」

「アーネスト!」

「あ痛えてて」


フィオーナが怒って、アーネストの耳を掴んで引っ張る。


「え?

 どういう…」

「お兄様は先ず、世継ぎを作る必要がありそうね」

「そうねえ

 セリアも寂しがっていたし」


女性二人は、ニヤニヤしながらギルバートを見る。

ギルバートは理解出来ず、救いを求めてバルトフェルドを見る。

しかしバルトフェルドは、巻き添えが怖くて俯いていた。


「え?

 バルトフェルド様?」

「わ、ワシは…」

「当面は毎晩でも、セリアの元へ通うべきね」

「そうよね

 一緒に居ても、放ったらかしだったみたいだし」

「そんな事は…」

「あら?

 セリアは泣いていたわよ」

「そうよ

 懸命に看病していたんだから

 それぐらいしてあげても罰は当たらないわよ」

「アーネスト…」

「…」


まだ引き摺られているアーネストを見るが、アーネストは黙って首を振る。


「さあ

 アーネストは、こっち!」

「はいい」


アーネストは引き摺られながら、むしろ救いを求めてギルバートを見る。


「あ…」

「ギル

 すまん

 オレにはどうにも出来ん」

「アーネスト…」

「お前も覚悟を決めろ」


アーネストは腕を組みながら、格好を付けて呟く。

しかしフィオーナに引き摺られているので、その姿は滑稽だった。

いつの間に身に着けたのか、フィオーナは身体強化を使ってアーネストを引き摺って行く。

そしてそのまま、離宮へと戻って行った。


「さあ

 夕食の準備が…

 あれ?」


そこへ厨房から、家人の一人が料理の完成を宣言する。

しかし食堂は、いつの間にかお通夜の様に暗くなっていた。


「どうしたんです?」

「あははは…」

「さあ、夕食にしましょう

 みんな疲れているでしょうし」


メイド達は事情の説明に困り、笑って誤魔化す。

そこでマリアンヌが音頭を取って、メイド達に指示を出した。

メイド達は救われた顔をして、テキパキと準備をする。

そうして夜も更けた頃に、ようやく夕食が始められた。

いや、正確には夜食なのだろう。


「殿下

 先ほどのする事というのは…」

「ああ

 その事か」


すっかり夜食になってしまったが、簡単な野菜のサラダを食べながらギルバートは答える。


「先ずは移民達から兵士を募る」

「そっちか…」

「ん?」

「兵士ですか?」

「ああ」


移民の中には兵士だった者も居る。

そういった者達に、魔物と戦える力を着ける。

それがギルバートの当面の目標だった。


「先ずは魔物と戦える兵士が必要だ」

「しかしワシの私兵にも…」

「半数が牢屋に居るがな」

「あ…」


不始末を犯した者達は、今は牢に入れられている。

彼等を現場復帰するにしても、暫くは使えないだろう。

それを考えれば、早急に鍛える必要があった。


「ハルムート子爵の私兵に、先ずは戦闘訓練をする必要がある」

「そうですか…」


バルトフェルドとしては、早急に王位に就いて、国政を任せたかった。

しかし兵士の訓練と、国政は同時には厳しかった。

そうなると、やはりバルトフェルドが主導して、国政を担うしか無かった。


「王国の方針としては?」

「当面は各領地で魔物に対抗する

 そうする事が、魔物の侵攻を抑えれるだろう」

「そうですか…」


「その上で、機会があれば女神様の居場所を探る」

「ギル!」

「殿下?

 それはどういう事ですか?」

「女神様に直接会って、事の真偽を確かめたい」

「今は居所も分からないだろう?」

「女神様にですか?

 ううむ…」


アーネストは反対するが、バルトフェルドは考え込んでいた。

それが可能なら、少しは良くなるかも知れない。


「しかし…

 女神様は何処へいらっしゃるのですか?」

「それが分からないから、いずれはだ」

「そうだぞ

 そもそも分からないだろう」

「エルリックが来れば…」

「当てになるのか…」


エルリックが来たとしても、女神の居所を知っているとは限らない。

確かに女神から指示を受けていた事もあっただろうが、今は会っていないのだから。

仮に会えたとしても、話を出来るかも分からない。


「そもそも会えたとして、魔物の事をどうにか出来るのか?」

「女神様が差し向けたんだぞ?」

「本当に女神様なのかも…」

「それは…」


それに関しては、ギルバートも疑問を抱いていた。

女神の行動に関しては、一貫性が無いからだ。


「本当に人間を滅ぼす気なのか?」

「そこが不自然なんだよな…」

「ううむ

 ワシには見当も付きません」


「いずれにせよ、その事が後だ

 先ずは王都の復興が優先だからな」

「そうだよ

 是非そうしてくれ」

「ワシからもお願いします」


そうこう話している内に、食事も無事に終わる。

野菜のサラダと白パン、それからワイルド・ボアのステーキが出されていた。

それらを食べ終わって、それぞれが就寝の準備を始める。


「ギル

 今夜はセリアの側に居ろ」

「アーネスト!」

「良いから

 セリアは色々とショックを受けていた

 人が何人か亡くなっていたしな」

「それはそうだけど…」


セリアは流血を見て、すっかり気分を悪くしていた。

兵士や騎士が、メイドや家人を虐殺していたからだ。

魔物に操られていたとはいえ、そういった行いをした者は既に捕まっている。

しかし惨状を見てからは、セリアは具合が悪くなっていた。


「もしよければそのまま、世継ぎを作っても…」

「おい!」

「はははは

 さすがにそれは冗談だが

 セリアを慰めてやれ」

「そうよ

 お兄様はセリアちゃんが可愛く無いの?」

「それは…」


みなに注目されて、ギルバートは居心地悪そうにする。

そうして諦めたのか、溜息を吐いて頷く。


「分かったよ

 だけど…

 冷やかしは無しだぞ」

「そ、それは…」

「アーネストさん!」

「アーネスト殿

 今は賛同するふりだけでも」

「バルトフェルド様」

「あ、いやあ…

 はははは」


ギルバートに睨まれ、バルトフェルドは笑って誤魔化す。

ギルバートは何か言おうとしたが、諦めて肩を竦めた。

そしてそのまま、セリアが眠る寝室に向かった。


「どうでしょう?」

「上手く行けば良いけど…」

「ギルだからな…」


三人はその様子を、不安そうに見送っていた。

まだまだ続きます。

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