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聖王伝  作者: 竜人
第十章 王国の危機
327/800

第327話

滅びた町を調査した後、ギルバートは王宮の中を進んでいた

国王に町が滅んだ事を説明する為に、急いで執務室へと向かっていた

後ろにはアーネストが付き従い、不満を溢しながら着いて来ていた

執務室には宰相も居て、今日の討伐の報告を聞いていた

国王はギルバートが入って来ると、その無事を喜んでいた

壁に貼られた地図に、討伐された印が刻まれている

騎士達が任務を放棄したので、南のオーガには印が着いていなかった

しかし報告では、オーガは王都に向かっていなかった

そのまま南の平原に居て、魔物を餌にしていた


「こちらに向かっていないのは助かりました

 しかし…何で?」

「そこまでは分からなかった

 しかし、調べていて分かった事もある」

「私達は国王様と、魔物の動向を調べていました

 中には目的を持って行動する魔物もいました」

「まさか…狂暴化した魔物?」

「うむ

 奴等は何らかの命令を受けて、王都に向かっておる」


「エルリックの話では、狂暴化は人間を滅ぼす為に、女神様が命令を出していると言っていました

 もしかしたら…」

「奴の話は当てにならん

 話半分で聞いておけ」

「しかし彼はフェイト・スピナーで、我々にも協力的です」

「だが、フェイト・スピナーなんだ

 それに…

 奴は少し抜けておるからな」

「それは…」


確かにエルリックは、少々抜けているところがある。

それがわざとなのか分からないぐらい、問題がある事もあった。


「今は信用するには、状況が悪過ぎる

 もしも裏切られたら、この国は滅びるだろう」

「しかし、彼はこれまでも協力してくれました」

「ギルバートよ

 お前が彼を、信用したい気持ちは分かる

 しかしな、ワシは一国を預かる身として、簡単には信用出来んのじゃ」

「殿下

 今は堪えてください」

「くっ…」


エルリックの情報は、信用が持たれていなかった。

しかし状況は、そんな事も言っていられないほど切迫している。


「国王様

 南西の町の事は聞きましたか?」

「ん?

 お前が調べに行った町か?」

「ええ

 町の異変に騎士達が気付いたので、私も調査に向かいました」

「うむ

 それでどうじゃったのだ?」


ギルバートは、町が滅んでいた事を話した。

そしてそれが、エルリックから聞いた話通りだったと告げた。


「町は魔物に滅ぼされていました」

「滅ぼされて?」

「ええ

 領主を始めとして、住民から兵士まで全てです」

「なん…だと?」


「アーネストの調べでは、恐らく死霊を使ったかと」

「本当か?」

「ええ

 恐らくは物理的な痕跡が無いので、亡者ですね」

「ゴーストか?」

「はい」


「そんな…

 簡単に滅ぼされる物なのか?」

「はい

 奇襲を掛けて町中に入らせれば、数さえ居れば可能かと」

「ぬう…」


「エルリックが言っていました

 東の帝国跡に、魔王が攻撃を仕掛けていると

 そいつは死霊を使う死霊魔術の使い手だと」

「それがその町に?」

「恐らくは、その可能性が高いと思っています」


ギルバートの言葉に、国王は頭を抱えた。


「どうすれば良いんじゃ?

 北からは巨人が

 東からは魔王と死霊が

 我が国はどうなるんじゃ?」

「町は偶然かも知れません

 周囲に魔物は居ませんでしたし、他には被害は出ていません」

「しかし、それなら何で、魔王は町を滅ぼしたんじゃ?」


ギルバートは躊躇いながら、仮説を話し始めた。


「あの魔王が…

 ダーナを滅ぼした魔王なら」

「ダーナじゃと?

 あれはフランドールが魔物になって…」

「その魔物になったのが、死霊魔術で魔物にされた可能性が高いんです」

「なんじゃと!」

「確証が無いので話していませんでしたが、フランドールを操っていた者は魔王と名乗っていました

 それに…」


ギルバートは地図に近付くと、東の荒野を指差した。


「魔王は現在、東の荒野を攻めています

 ここに帝国の街の跡がありますからね」

「それで?」

「ここを襲うのに、手頃な魔物が欲しかったんじゃあ無いかと」

「兵の補充か?」

「ええ

 亡者に襲われて死んだのなら、その者も亡者になります

 ですから亡者を増やす為に…」

「町を襲って亡者にしたのか」


あくまで推論だが、それは的を得ていた。

兵を補充となると、魔王がわざわざ町を滅ぼした理由にも、納得が行くだろう。


「魔王が攻めて来たのは、手頃な大きさの町だった…

 そういう事か?」

「ええ

 そう考えれば辻褄が合うかと」

「そう考えれば、魔王はすぐには攻めて来ないか…」


国王は考え込む様に、腕組みをして座っていた。


「勿論、警戒はする必要はあります

 下手をすれば、他の町が襲われる恐れもありますからね」

「そうじゃな

 小さな町の領主には、ワシから一応警告を出しておこう」

「お願いします」


「それと…

 町の事はどうします?

 一応は死体は処理しましたけれど」

「ふむ

 サルザートはどう考える?」

「先ずは閉鎖ですな

 兵士を何名か派遣します」

「そうじゃな」

「それから…

 発表は差し控えましょう」

「え?」


「そうじゃな

 公道は危険じゃから、その地域にオーガが居る事を理由にするか」

「はい

 それから隊商にも、当分近付かない様に指示を出しましょう」

「本気ですか?」

「ん?」


「町が一つ滅んだと言うのに…」

「おい

 ギル…」

「下手に公表すれば、無用に民を不安に陥れる

 それよりは巨人の騒ぎが収まるまでは、伏せておいた方が良いじゃろう」

「そんな…」

「巨人の騒動があるのに、さらに魔王に襲われる

 民に…

 国民にそれを教える必要があると思うか?」

「それは…」


「これもまた政治と言う物じゃ

 お前もいずれは、国を治める身じゃ

 覚えておきなさい」

「殿下

 政治と言う物は、時には非情な決断も必要なのです

 彼等の無念は承知しておりますが、無用な混乱は国政を脅かします

 くれぐれも自重してください」

「くっ…」


「ボクも同意見だ」

「アーネスト?」


アーネストも賛成だと意見して、ギルバートに同意を求めた。


「お前の気持ちも分かるが、公表してどうする?」

「それは…

 危険を警告して…」

「警告して?」

「それに、あそこの関係者も居るだろう?」

「だが、死体はもう処分した

 今さら何をするんだ?」

「え?

 それは…」


「死者を悼むにしても、今の状況では簡単には向かえない

 それに報せたとしても、却って王都から逃げ出そうとして、大きな混乱を生むだろう

 そうしたらどうなると思う?」

「ぐっ…」


アーネストの言う通りだ。

王都から逃げ出そうとすれば、却って混乱を生んでしまう。

その過程で、怪我人や死者が出るかも知れない。

それに、町に向かうにしても魔物がうろついているだろう。

それを守る為に兵士を出すにしても、今の王都では余裕が無いのだ。


「感情だけでは、国は治められない

 覚えておくと良いじゃろう」

「そうですな

 アルベルト殿でも、同じ判断をした筈ですぞ」


みなに言われて、納得は行かないが従うしか無かった。

確かに感情で動いても、何もならないだろう。

ここは報告は伏せて、目の前の危機に備えるしか無いのだ。


「同行した騎士達には、箝口令を出しておけ」

「はい」

「他にも知っていそうな者は?」

「そうですな

 今日の南の城門の番兵にも、箝口令を出しておきます」

「うむ

 任せるぞ」


サルザートは書類を用意して、それを文官に渡した。

文官も状況を理解しているので、急いで指示を出す為に出て行った。


「さて

 もう一つ問題がありそうじゃな」

「え?」

「魔王が兵を増やした理由じゃ

 アーネストはどう考える?」


「そうですね

 エルリックの話では、彼の地には勇者が居るとか

 その者が魔王に反攻しているのでしょう」

「うむ

 ワシもそう考えるのう」


「魔王の兵に打撃を与えた

 じゃから兵を集める為に、我が国に侵攻して来た」

「あ…」

「そうなれば、今後も似た様な事が起こる可能性はあるな」

「そうですね

 対策を取るなら、東の方の大きくない町ですね」

「その心は?」

「魔王はバレていないと思っているでしょう」


アーネストの答えに、国王は髭を扱きながら考える。

その可能性は大いにあるだろう。

バレない為に、小さな町を狙った筈だ。

それに、魔王もこちらが、巨人に狙われていて混乱していると考えている筈だ。

そうでも無ければ、こんな暴挙には出ないだろう。


「うむ

 恐らくそうじゃろう」


国王は再び黙考してから、アーネストの方を向いた。


「その死霊?

 亡者とやらに対抗する術はあるか?」

「そうですね…

 種類がハッキリと分かりませんが、正直強敵です

 物理的な攻撃が効きませんから」

「ぬう…」


物理的な攻撃が効かないという事は、剣や鎌を振るっても何の打撃も与えれないのだ。

そうなれば、騎士や兵士を配置しても意味が無い。


「効きそうな物は…

 神聖魔法は見付かっていないんですが、魔法でも打撃は与えれる…筈です」

「うん?

 歯切れが悪いのう」

「ええ

 過去に現れた記録では、神聖魔法と言う魔法で浄化していたそうです」

「その浄化とは?」

「文字通りの浄化です

 女神に祈りを捧げて、聖なる力で祓い清めるんです」

「それなら教会が…」

「いえ

 残念ながら、現在の教会には神聖魔法の継承は途絶えています」

「何だと?

 それでは…」

「はい

 有効的な攻撃方法はありません」


「何とかならんのか?」

「そうですね

 どの道、今さら神聖魔法の事を調べても、覚えて使える様になるまでの時間が必要でしょう。

 それならば、他の方法を探すしか…」

「そうじゃな

 その…神聖魔法に関しては、教会に調べさせよう」

「はい」

「それで…

 他には無いかのう?」


国王は縋る様に、アーネストに意見を求めた。

この中で魔物の知識が有るのは、アーネストだけだ。


「うーん

 魔法がどれだけ効果があるのか…

 試してみないと分かりません」

「それは文献に載っていないのか?」

「それが…

 霊体の死霊にも、ゴーストを始めとして何種類か居ます

 一番効果的なのは神聖魔法なんですが…

 後は炎や火の魔法ぐらいですかね

 それもどのぐらい効果があるのか…」

「種類?

 そんなに居るのか?」

「はい

 ゴースト、レイス、ワイト…

 上位になるほど魔法に対する抵抗も上がります」

「それでは魔術師が攻撃しても…」

「そうですね

 下位でしたら効くでしょうが、上位では効果が無いかも知れません」

「ぬうっ…」


折角見え始めた光明も、果たして効くのか微妙であった。

国王は手が無いと、頭を抱えている。

アーネストは他にも無いかと、書物を引っ張り出して調べ始めた。


「うーん…

 武器に神聖な力を宿す?」

「おお!」

「しかし、遣り方が詳しく書かれていないな」

「ああ…」


アーネストが調べてみて、それらしい記述が見付かった。

それは教会の祭壇で、7日7晩、月の光を浴びせながら祈りを捧げる。

そうして神聖力を与えた銀製の武器は、魔を祓う効果があると書かれていた。


「うーむ

 何だか一気に眉唾物な話しになったのう」

「仕方が無いですよ

 魔導王国でも、死霊は神聖魔法で祓っていましたから

 それが途絶えた今では…」

「打つ手は無いか…」


国王は暫く悩んでから、決断を下した。


「よし

 やれるだけやろう」

「陛下?」

「対象になる町に、すぐに触れを出せ

 神聖魔法とやらが無い以上、魔術師に魔法を頼むしか無い」

「そうですな…」

「それらしき被害が出た際は、魔術師に魔法で攻撃させる」

「はい」


「それと…

 銀製の武器じゃな」

「それは職工ギルドに任せましょう」

「うむ

 それと教会の方にも手をまわしてくれ」

「はい」


サルザートは直ちに書類を書いて、これも文官に渡した。

どこまで効果があるか分からない以上、色々試してみるしか無いのだ。


「効果を確認出来れば…」

「そうですね

 死霊魔術に関しては、ボクも興味があります」

「アーネスト?」

「大丈夫だ

 死霊が本当に呼べるのか?

 それを試したいだけだ」


アーネストは死霊魔術を、悪用するつもりは無いと言った。

しかしギルバートは、禁忌の魔法には抵抗があった。

フランドールもその魔法で、簡単に魔物になってしまったからだ。


「そうは言っても、肝心の死霊魔術の記録が無いからな」

「あったら困るよ

 邪悪な魔法だろう?」

「そうでも無いさ

 亡くなった者の声を聞きたくてとか、そういう思いで研究した者も居たらしいから

 精々禁忌の魔法ってところだな」

「うむ

 禁術として取り締まるべきじゃのう

 迂闊には知られては困る魔法じゃ

 然るべき場所で管理すべきじゃのう」


国王とアーネストの言葉に、ギルバートは何か引っ掛かりを覚えた。


「禁忌…

 禁術?」

「ギル?」

「そうじゃのう

 思えば、アルベルトの奴が仕出かした封印も、禁術であったのう」

「あ!」


ギルバートが思い出したのは、ダーナで見付けた書物だった。


「エルリックだ!」

「そうそう

 あの忌々しい奴の口車に乗って…」

「そうじゃ無いんです

 エルリックが持っています」

「ん?」


「ダーナで父上…

 いえ、アルベルトの書斎に隠されていたんです」

「なんじゃと?」

「私に使われた禁術の…

 禁忌の魔法が載った本が隠されたいたんです」

「本当か?

 で?

 それは何処に?」


アーネストは目を輝かせて、ギルバートの肩を掴んだ。

激しく揺さぶられたが、ギルバートも困惑していた。

アーネストがこんなに興味を示すとは思わなかったのだ。

これはエルリックが持って行って正解だったと、改めて思うのだった。


「禁術の本は、エルリックが持って行ったよ」

「な…」


アーネストはガックリと肩を落とし、その場に座り込んだ。


「そんなに落ち込むとはな…

 持って行ってもらって、正解だな」

「そうじゃのう

 アーネストには、ちと危険じゃのう」


国王も、禁術に関しては同意見だった。

まだまだ続きます。

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