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聖王伝  作者: 竜人
第十章 王国の危機
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第305話

ギルバートは国王の執務室で、冒険者ギルドのギルドマスターと話し合っていた

話し合う議題は、冒険者の格付けとしてのランクの決定だ

魔物の討伐を前提として、依頼を受けれるランクを決める為だ

これを決める事で、戦える魔物のランクを推定出来る様になる

ただし、依頼を受ける事は自己責任になる

基本の草案として、冒険者は受けて来た依頼の実績で、ランクをギルドから与えられる

そのランクに見合わせた依頼を、ギルドで受けられる事になる

そして魔物の討伐は、魔物のランクより上のランクの者が受けられる

例えばランクGの魔物の討伐なら、ランクFより上のランクの冒険者が受けられる

それより下のランクでは受けられず、勝手に受ければペナルティーが与えられる


草案として、この様な事が取り決められた。

次にランクの内容と、必要なランク上げの条件が相談された。


「アーネストと話していたんですが

 ランクに関しては9段階でどうでしょうか?」

「AからIという事ですか?」

「ええ

 Iは入り立ての新人で、Hが討伐無しのランクというのはどうでしょう?」

「ふむ

 確かに新人と、慣れ始めの採取を主にする冒険者が居ますからね

 しかし野生動物の狩猟はどうしますか?」


「それはランクGからで良いのでは?

 狩猟に出るとなれば、魔物に遭遇する可能性はありますから」

「それはそうですね

 ふむ…

 外に出る仕事はランクGからですな」

「そうですね

 それか上のランクの者が同行する必要があるとか」

「なるほど

 単独では無理でも、ランクが上の者が居れば安心ですね」


ギルバートはギルドマスターと話しながら、ランクの内容を決めて行く。

そうしてランクCまでは簡単に決まったが、そこから上が決まらなかった。

今までのランクでは、ランクEまでしか見た事は無かったのだ。


「ランクDまでは…

 暫定で良しとしましょう

 しかしそれより上は必要でしょうか?」

「そうですね

 今はランクDまでで十分でしょう

 ランクCが暫定の、冒険者ギルドでは最高のランクとしておきましょう」


冒険者の格付けが決まったところで、ギルバートはもう一つの提案もした。


「国王様

 騎士や兵士にも同様のランクを着けれませんでしょうか?」

「兵士や騎士にか?」

「ええ

 兵士や騎士でも魔物は討伐しますよね

 その際に参考に当てはめれる、ランクがあれば良いと思いませんか?」


国王はそれを聞いて、暫し熟考した。

確かに便利であるが、それによって弊害も出そうであった。

特に騎士に関しては、貴族の者が多く入って来る。

貴族の中には、金で名誉を買おうとする者が多く居る。

そういった者達が、金銭で買ったランクで討伐に出れば、戦場で大きな混乱を生むだろう。


「それは見合わせた方が良いだろう」

「何故ですか?」

「騎士の中には、金で名誉を買う貴族も多く居るのじゃ

 そういった者達が、金でそのランクを買ったらどうなる?」

「え?

 それは考えていませんでした

 そうか…金で…」


言われてみれば、確かに金を積んで騎士になっている者は見た事があった。

そういった者達は、実力も無いくせに力を持っていると勘違いしている者が多かった。

そんな貴族の騎士が、オーガの討伐に混じっていたらどうなるだろう?

戦場は混乱して、多くの者が犠牲になりそうだ。


「確かに…

 あんな奴等は迷惑で困りますからね」

「じゃから騎士に関しては、ランクは導入出来ない」

「分かりました」


ランクについてはある程度の指針は決まった。

後はギルドマスターに告示してもらって、冒険者達に伝えるだけだ。


「大筋は決まりました

 これを冒険者達に報せていただきますか?」

「はい

 ギルドにて告示しまして、さっそくランクを決めたいと思います」

「ある程度は決まっているんですか?」

「ええ

 これまでの実績は、ギルドへの報告書に記載されています」

「そうですか

 それでは大体のランク決めは…」

「すぐに出来ます」


冒険者のランク付けは、翌日から行われる事となった。

同時に今夜から、冒険者のランクが決められる。

今までの依頼の達成率と、違反が行われているかが考慮される。

依頼を沢山熟していても、違反が多い者は危険だからだ。


「他の者を囮にしたり、危険に晒す者は除外だな」

「そうですね

 そんな者は討伐依頼を受けさせられません」


「依頼を受けながら、失敗が多い者も注意だな」

「そうですね

 達成率も考慮に入れましょう」


「他に問題になりそうな事はあるか?」

「そうですね

 怪我が多い者は、ランクを一つ下に制限しましょうか?」

「そうだな

 怪我が多いという事は、それだけ仲間を危険に晒す」


「討伐依頼を受ける者は、自分と同じランクか、一つ下のランクに制限しよう」

「単独の依頼はどうしますか?」

「討伐依頼に関しては、基本を複数人としよう

 その辺も告示に載せてくれ」

「分かりました」


細かな修正も提案して、先ずはこれで暫く様子を見る事にした。

明日から依頼も受けれる事として、討伐依頼の受付も決まった。

それから、依頼は兵士達にも公開する事にした。

どこで討伐が行われているのか、事前に知っておく必要があるからだ。


「以上で様子を見ましょう

 問題があるなら、適宜修正とします」

「そうですね

 あまり最初から詰めても、上手くは行かないでしょうな」


取り決めが決まったので、ギルドマスターは執務室を後にした。

このままギルドに戻って、告示やランクを処理するからだ。


ランクを確認する物は、今までの羊皮紙を廃止する事にする。

低いランクは銅板にして、高ランクの者を鉄の板に刻む事にする。

これによって、簡単に高ランクか見分けられる事にした。

城門で確認するにしても、一々全員のプレートを確認するのは手間だからだ。


そういった小物の用意も考えて、職工ギルドに依頼をする。

刻むのは冒険者ギルドでも良いが、プレートは事前に大量に必要だからだ。

サルザートは書類を作ると、文官にそれを渡した。


一段落着いたところで、国王は改めてギルバートを見た。


「婚約おめでとう」

「何ですか?

 改まって」


「ふふふふ

 ワシも父親だからな

 我が子が婚約となると、それは嬉しいものさ」

「そうですか?

 それにしても、セリアでは不満がございませんか?」

「何でじゃ?」

「だってセリアでは、元領主の養女ですよ」

「ううむ」


国王は暫し考えてから、重苦しく口を開いた。


「お前は不満なのか?」

「え?」

「セリアでは不満そうじゃないか」

「それは…」


不満というより、困惑しているというべきか?

ギルバートは未だに実感が湧かなかった。


「不満というより…

 ずっと妹と思っていましたので」

「では、どこぞの貴族の娘を紹介しようか?」

「それは…」

「例えばアルザス卿の従弟に、年が…」

「ちょっと、待ってください」


「はははは

 それも不満なんじゃろ?」

「ええ…」


「それなら…

 セリアに婚約の話があればどうじゃ?」

「え!

 セリアはまだ子供ですよ?」

「あれぐらいの年では、もう婚約が決まっておっても不思議ではないぞ

 大体、貴族の子女に関しては、早ければ4歳から婚約が決まっておる」

「へ?」


「貴族の子女が宮廷に挨拶に参るのが、大体4歳ぐらいからじゃ

 それから茶会やサロンに呼ばれる様になる

 9歳になっても婚約者が居ないのは、些か遅れているぐらいじゃぞ」

「そうなんですか?」

「ああ

 じゃからセリアを狙っておる貴族はおるぞ

 お前との仲を取り持てるからな」

「ぬう…」


予想外の話を聞かされて、ギルバートは動揺していた。

いつの間にかセリアに、婚約の話が来ているというのだ。


「しかし、そんな話は聞いた事が…」

「そりゃそうじゃ

 ワシとジェニファーが止めておる

 お前の婚約者じゃからな」

「え?」

「お前がセリアを選ぶじゃろうと、貴族からの話を断らせておった」

「そんな

 セリアの意思は?」

「セリアはむしろ、お前から離れたくないと言っておったぞ」

「あ…」


つまり最初から、国王も絡んで婚約の話は決まっていたのだ。

だからこそ、前々からそんな話が出ていたのだ。


「私はてっきり、冗談だと思っていました」

「ワシは本気じゃったがな

 勿論、最初は反対しておったぞ」

「なら、何でですか?」

「それは…

 離宮であれだけ仲睦まじくしておればな

 既に王都では有名な話じゃぞ」

「え?」

「王子は深き森より救い出した少女と、深い恋仲に落ちたと

 少女は不可思議な力を持つ、森の精霊などとも囁かれておる」

「それはまた…」

「あながち間違いじゃ無いのう」


二人が離宮で会っていた事は、王都では公然の話題となっていた。

二人の出会いからのラブロマンスは、まことしやかに広まっていた。

身分を伏せて王宮から離れていた王子が、妖精の姫を森の魔物から救った。

そして二人は一度別れたが、滅びかけた街から再び救い出した。

王子は姫を王都に招き、そこで目出度く婚約となった。

こんな話が詩人によって広められていたのだ。


「ワシもさすがに、国民が希望を持つ様な噂話を封じるわけにはいかん

 それに…」

「それに?」

「セリアはあの通り、可愛らしいからのう

 あの子が娘になるのら、精霊女王でなくとも歓迎じゃ」

「それはまた…」


「あの子がどうであれ、お前が幸せになれるのならワシも嬉しい

 それに噂がどうであれ、国民が望んでいるのなら歓迎すべきじゃろう?」

「それはそうでしょうが…」

「それでも不満か?」

「ええ…」


不満では無いが、ギルバートは困惑していた。

大切な妹と思っていたのに、いつの間にか婚約者になっていたのだ。

それも国民が歓迎する、物語の様なロマンスをエピソードにして。


「私は…」

「責任を果たす…

 では不満か?」

「ええ

 確かに一緒に寝てましたが、それが変な誤解を生むとは…」


「問題はそこでは無いんじゃがな」

「え?」

「お前がどうしたいかじゃ」

「私が?」


国王は姿勢を正すと、真剣な顔をした。


「お前はイーセリアをどうしたいのじゃ?

 どこぞの誰か分からない、貴族の嫁にしたいのか?」

「それは…」

「それとも、ずっと妹として傍に居させて、結婚もさせないつもりか?」

「ええっと…」


「正式な婚約発表は、戴冠してからになる

 それまでに自分の気持ちを確認するのじゃな」

「自分の気持ち…」


「もう行ってよいぞ」

「はい」


ギルバートは執務室を出たが、気持ちは晴れて無かった。

自分の気持ちと言われても、よく分からなかった。

もやもやした気持ちのまま、ギルバートは再び自室に向かった。

このまま夕食を食べる気にはなれなかった。


ギルバートが自室に戻ると、そこにはドニスが待ち構えて居た。

ドニスは礼をすると、ジェニファーが待っていると伝えた。


「殿下

 ジェニファー様が離宮でお待ちです」

「母上…いや

 ジェニファー様が?」

「はい

 何やら内密な話があるそうです」

「分かった」


ギルバートは何だろうと首を傾げながら、離宮に向かって進んだ。

王城の裏手に出て、離宮の周りを見回す。

庭園にはセリアの姿は無く、夕日も暮れようとしていた。

離宮にも灯りが灯されて、幻想的な明かりで照らされていた。


「セリアは居ないのか」


旅の疲れがあるのだ、今頃は寝室で寝ているのかも知れない。

しかし先ほどの話があったからか、妙に意識して姿を探してしまう。

そして姿が見えないと、不思議と寂しい気持ちになった。


離宮の入り口を開けると、そこにはメイドが待っていた。

メイドは礼をすると、ギルバートを案内した。

そこは食堂で、夕食も用意されていた。

席にはジェニファーとフィオーナが座っていて、セリアの姿は無かった。

ギルバートがセリアの姿を探していると、ジェニファーはクスリと笑った。


「誰を探しているのですか?」

「え?

 あー…いや」


ギルバートが困った顔をしていると、ジェニファーは原因を言い当てた。


「セリアは寝ていますよ」

「そ、そうですか…」

「ふふ

 変なお兄さま」


「さあ

 座りなさい

 料理が冷めてしまいますよ」

「あのお…

 食欲が…」

「変な時間に食事するからですよ」

「はあ…」


ギルバートは席に着いて、葡萄酒を受けとった。


「それとも…

 セリアの事でハルバートに何か言われましたか」

「ぶふおっ!

 ゲホゲホ」

「何?

 どうしたの?

 お兄さま…」


ギルバートが思わず吹き出して、フィオーナが背中を摩る。

その様子を見ながら、ジェニファーはクスリと笑った。


「どうやらセリアを寝室に誘ったというのは、本当の様ね」

「ゲホゲホ

 誘って、ゲホ、何て、ゲホ、ません」

「ふふふ

 説得力が無いわよ」

「ええ!

 お兄さま、セリアをそんな…」

「違う!

 私はそんな事なんか…」

「言い訳なんて最低!」

パシーン!


フィオーナはギルバートの頬を叩くと、食堂から出て行った。


「え?

 ああ…」

「あら?

 はしたないわね

 仕方が無い子ね」


ギルバートは引っ叩かれた頬を押さえながら、呆然としていた。


「何で…」

「それはあなたが悪いんでしょう?

 一緒に寝るだなんて…」

「私は何も…」

「一緒に寝てたんでしょう?

 嫁入り前の年頃の娘と寝てたら、そりゃあ問題があるでしょう」

「ぐっ…」


「言い訳は良いから、キチンと責任を取りなさい」

「母上

 セリアは妹で…」

「私はあなたの母ではありません

 それにセリアも妹ではありませんよ」

「そんな…」


ジェニファーは冷たく突き放すと、お茶をゆっくりと飲み干した。

まだまだ続きます。

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