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魔王軍騎士団長決定戦

ベルターみたいなおじいちゃんが欲しいと

思ってきた。卯月でございます。


魔王城地下広場

本来静まる時間帯。

ここには大勢の血の気の多い魔物、魔族たちが押し寄せていた。

まさに一触即発。


「──ヤバい、腹痛くなってきた」


魔王城の主、ロアはキリキリと痛む胃を抑えていた。


「はぁ、主には魔王のスキルがあるだろう。んと、なんだ、あの怖いやつ」


「いや、あれやるのもとんでもなく緊張すんだよ」


(勇者時代もこういう表に出るのは戦士とかだったな… 当時の俺はチヤホヤされるのは苦手だったんだよ…)


「ロア様、今日は魔王軍の存亡がかかった重要な日です。多少の緊張感を持ちつつ望めばいいのですよ」


「うぅ……」


「さてと、そろそろです。前へどうぞ」


ロアは重い腰をあげるようにゆっくりと席から立つ。

カリスマ向上exを発動していることを確認し前にでる。魔の者達はロアに気づくと次第に静かになっていった。


(……やることはこの前と同じだ。緊張することなんてない…)


「ようこそ同胞たちよ。今宵、魔王軍は新たなるステージへと向かう! 先代魔王は破れ、そして俺が誕生した。しかし、我一人で出来ることは攻めの一手のみ。 民が安心して暮らせる国を作るためにはお前たちの守る力が必要だ。」


ロアは尊大に手を広げたかだかに宣言した。


「ここに新生魔王軍()()()()()()()を開催するッ!」


──────────────────



「この死合の説明は魔王軍幹部アブソリュート・フェアベルターがする。ベルター、頼んだぞ」


ベルターがロアの横立った。

会場からは

「なんだあの爺さん…」

「俺でも勝てそうな老いぼれじゃねぇか!」


などという声が聞こえてきた。

それをロアは聞き逃さない。


「──ベルター、人化を解いてみろ」


「よろしいのですかな?」


「……」


「ははっ…あなたは本当にお優しいのですね」


人化を解き、魔の者達の前に躍り出る。

[グリムリーパー]の姿は見る者に死を魅せる。

言いたい放題だった彼らは顔を強ばらせる。

失神手前の者までいるようだ。


「…ふっ!」


してやったりの顔をしてロアは彼らを見やる。


「主はわっぱみたいな性格だなぁ」


「…うるせっ」


[失礼します。魔王軍は幹部。フェアベルターでございます。僭越ながら魔王様の代わりにワタクシが今宵の死合での説明を任させて頂きます]


鎌を地面に付けた。

地面に引火した淡紫色の炎は冷ややかな風を彼らに送る。


『4グループ_赤、青、黄、緑_の紙を参加者の方は渡されたかと思います。その色ごとに別れ、最後の一人になるまでのバトルロワイヤルをしていただきます。

その後、残りの四名は魔王様が送る()()と戦っていただきます。そこで、()()()()()()()魔王軍騎士団長となります。

紙には転送魔法が組み込まれていますので破れば自動的に闘技場へと転送されます。

始まりの合図とともにお破り下さいませ。

───今宵は魔王軍の無くてはならぬ柱。騎士団長を決める極めて重要なものです。心して挑んで下さいませ。では、魔王様。』


「それでは、健闘を祈るぞ………始めッ!!!!」


一斉に紙を破る彼らはどんどんと淡い光に包まれていき、転送されていく。

全てのもの達が転送されたのを確認した三人は彼らの様子を帝国でも使ったアイテムでモニターに移す。


───────────────────


「うおぉぉぉぉ!!!」

「ック!! はァっ!」


様々な異形や亜人族が武器をもって戦っている。


(魔物同士が戦っていることにとても違和感を覚えるな…うわっ、グッロ!)


この闘技場において死は無い。

ロアの蘇生魔法によって生きたまま地下広間に転送される。


「ぐぼぁぁぁぁ!!」 ザシュッ!!

「うわァァァ!!!」 ゴスっ!!

「ありがとうございまs」 ゴリュッ!!


なにか変な(雑音)が聞こえた。

それと同時に広間にある観客席へと魔の者達は続々と帰還していく。

広間にはロアが見ているのと同じ、モニターで戦闘を中継している。

赤グループで一際歓声が湧いている。

そこには、一人を中心に大勢が結託し取り囲み戦闘をしているようであった。

にもかかわらず、その者は敵をどんどん殲滅していく。


「おい…これ、一応バトルロワイヤルなんだけど…協力してはいけないというルールは作っていないけども……───しかしまぁ、凄い剣さばきだな、黒い馬に乗って……その馬には()()()()、と。おとぎ話でそんな異形を見たことがある…」


そこには、首がない馬に乗り真っ黒な鎧に兜をつけ無双している者がいた。


「主、気づいたか」


「おう……あの鎧の凸凹凸! あれはまさしく女性特有のライン…!」


「違うわっ、あれは[デュラハン]という種族だ、黒い馬に乗り自分の首を脇に持っている伝説上の怪物……私も、男のデュラハンは見たことがあるが女は見たことがないな…しかもこの参加者の誰よりも強そうだ。主よ、あやつは有望だ」


「うーん。あの首は取れるのか…? 是非とも見てみたい」


ロアは知識人。

王城の図書館の本は全て読み尽くしていた程だ。しかし、デュラハンくらいになるとおとぎ話で読んだことがあるくらいで、勇者時代にもその姿を見ることはなかった。

曰く、死を予言する能力がある。

曰く、家の戸口の前で家族ひとりを指さしてその死を予言する。

曰く、一年後に再び現れて予言した相手の首をとる。

それがロアの持ちうる知識である。


「本で読んだ存在が目の前にいるなんてな…」


「魔王の方が本になる機会は多そうだがなー」


そんな会話をしている頃にはもう4グループは全てにおいて数が少なくなっていた。


「残るは…おっ、赤グループ以外は全部終わったか。案外早いもんだな」


赤グループ、デュラハンは二人のコボルトを相手にどって戦っている。

二人同時に戦っているというのに圧倒されるコボルト達は思わず悪態をつく。

コボルトの連携は凄まじく、並の実力ではあの斬撃は捌ききれないであろう。

しかし、


「クソッ!! なんなんだよコイツッ!!! 近寄れねぇじゃねぇか!!」

「こっちは二人だぞ!? このアマ何者だァ!?」


コボルト達ははデュラハンに左右から斬り掛かる、馬から飛び、デュラハンは斬撃を回避する。地面に降り立つと同時にコボルト達の剣を()()

自分たちの剣が壊されたことにより戦意を喪失したコボルト達は降伏しようとした。が、

デュラハンはコボルト達のもとまでゆっくり歩く。コホォォ、コホォォという音を出しながら剣を構える。


「や、やめてくれぇ! 降参だ!」

「助けてっ! ヒッ」


左手には漆黒の剣、背後に首なし馬を連れている様子はさながら、己が死を予言した生命を今にも刈り取るようだった。


『『あー、あっ。相手方降参のため終了だ。デュラハンの、素晴らしい健闘ぶりだったぞ』』


────────────────


「よくぞ勝ち上ってきた。素晴らしい死合を感謝する」


各グループを一位記録で突破した者達。

赤グループ [デュラハン]

青グループ[ゴブリンロード]

黄グループ[ウィッチ]

緑グループ[魔剣士]

ひと目でわかる強者の顔。

そんな顔をみてロアは満足そうだ。


「早速、今回の我からの刺客だ。──リル、行けるか」


「んっ!? 行っていーのか!?]


興奮のあまりに人化を解いたリルはロアに擦り寄る。リルの尾は「キター!」というふうにブンブン振られている。


「あぁ、行ってこい!」


[やった! 愛してるぞ主よ!]


「程々にですよ。力を抑えてです。一人は残さないと行けませんよ!」


ベルターは注意するが興奮のあまり聞いていない様子。


遠吠えをしながら上空に飛び、戦場(闘技場)に参戦する。

それを見届けたロアとベルターの二人は先程の席に戻る。


アォォォォォォンッ!!!

[──リルだ。一応幹部、らしい! 構えろ挑戦者よ]


ロアですら対立した場合足が竦むような咆哮。

しかし、伊達に生き残った者達ではないのか、勇敢にも戦いに挑む。

リルは前足を上げ振り下ろす。

すると、左右に魔法陣が現れた。

なにか長いものが出てくる。


「ろ、ロア様? あれはなんでございますか?」


「いや…うん、リルにせがまれてな。」


「私も主と同じようなやつがほしいぞ」、と。

言われたため作ってしまった。


それは、ロアの持っている黒銃より長い機関銃のような銃身(バレル)

ロアが前魔王の倉庫から持ってきた物を魔力操作できるように改良したものである。流石幼少の頃から化け物並みの才能を持っていただけある。


[久しぶりに暴れれるんだ。せいぜい私を楽しませろ]


次の瞬間、怪物の口(銃口)が火を吐く。


ドドドドドドドドッ!!!!


衝撃舞う場内は荒れ狂う。

ゴブリンロードは反応が出来ず一瞬で肉塊となった。


「ヒッ! 『ウォール』!!」


その成れの果てを見たウィッチは恐怖に顔を歪め即座に防御魔法を構築。しかし、抵抗虚しく貫通。

やむなく転送された。

残るは魔剣士と、デュラハンの二名。


魔剣士は空を飛んで轟轟たる弾を避け、難を逃れた。


「おいおい、マジかよ…」


観客も、ベルターも、ロアでさえもその光景に驚愕した。


「弾を……あの魔弾の嵐を()()()()()!?」


観客はあまりに突然のことで反応できなかった。

デュラハンは魔弾の数々を斬り伏せ、避け、流している。不測の事態にリルは撃つことを止め、滑空し、デュラハンと対立した。


[やるなぁ!デュラハン女]


「……」


無言でデュラハンは剣を構える。

ニィッと好戦的な笑みを浮かべ、リルは脚を踏みしめ、魔力を集中させる。

リルの口内に高密度の魔力弾が出現。


「これはまずい」、と。ロアは地下広間が吹き飛ばされることを防ぐため広間全体に魔力壁を張る。


(リル! 城をぶっ飛ばす気か!)


圧倒的な魔力量にあてられ、魔剣士は失神した。

デュラハンはリルへと向かって走る。


[これが私の最高出力だ! 食らえっ!]


「……っ!」


リルからでる衝撃にデュラハンは吹き飛ばされる。

この弾をリアルで受けてしまえば、どんな生命体も消し炭になるような一撃。

魔剣士が失神したことも把握出来ていないデュラハンは剣を落とし、負けを悟った。


刹那、



「───やりすぎだっ、バカっ!」


ロアが轟速でリルに近づき、その口を膝蹴りで閉じさせた。

瞬間、広間は光に包まれた。

轟音、衝撃が魔力壁を殴る。

数十秒後、土埃から人影が見えてくる。


「大丈夫だったか、デュラハン」


「……!!」


ロアに担がれていたデュラハンだった。


「ロア様! ご無事ですか!」


「あぁ、全然大丈夫だ。…リルは後で罰が必要だな」


プスプス…と煙をあげているリルはピクっと前脚を震わせている。

ロアは会場の安全を確認し、デュラハンをそっと下ろし、手を取った。


「皆の衆! 少々のアクシデントがある中、素晴らしい技量を見せあげたこのデュラハン! この者を、魔王の名のもとに新たなる魔王軍騎士団長に任命する! 以上だ!」


パチ…パチパチ!


オォォォォォォォォォッ!!


だんだんと拍手、歓声が鳴り響く。

デュラハンは魔王に膝まづき、忠誠を誓った。


───────────────


さて、どうだったでしょうか。

デュラハンはわたくしが好きな伝説上の

怪物でしたので入れてみました。

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