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死を司る異形

はい、3話目です。



前魔王が倒されて一週間、新しい魔王が誕生したという噂が囁かれている中、王宮のある一室にて、教会の重鎮や上位貴族達が集まっていた。


「魔王復活だと!? 何故だ!早すぎるっ!転生でもしたというのか!」


きらびやかな服に身を包み、怒号を飛ばす太った男は脂汁を散らしながら叫ぶ。


「よさないか…ここで悪態をついてもしょうがないだろう?」


痩せた神経質そうな見た目で眼鏡の男がいさめる。

部屋はピリッと張り詰めた空気で充満していた。

すると、見かねたようにため息をつきながらら鎧を装着した金髪の青年が眼鏡男に問うた。


「おい、例の備兵共はまだ帰ってきてはいないか?もう()()は討伐したのだから、そろそろ帰還し報告があっても良い頃合だろう?」


「騎士長様、はい、()()はきちんと殺したとのことです」


「ちゃんと死体は確認したか? 奴は化け物だ。並大抵のことでは倒れないが」


「いえ、確認はしていないようでして…」


「っ!……何故だ」


「[ハーメルンの笛]でモンスターを引き寄せ、その場を後にしたと…」


「……」


騎士長と呼ばれた青年は額に青筋をたて、激昂した。


「… つまり、 アイツ(ロア)が生きている可能性があるということだな!? やはり、軍の者はすぐに特定されるからといって備兵風情に任せるのではなかった!」


歯噛みし、乱れる青年の剣幕に押されその場にいるもの達の表情は固まっている。


「ご、ご安心を! アイテム使用時に呼び出された魔物の軍勢の中に伝説の獣、フェンリルらしき魔物が観測されたとのことです。理由は不明ですが、勇者が生存している可能性はゼロに等しいかと…」


「……ん?フェンリルだと? 妙だぞ…あの笛は低位の魔物しか呼び寄せないはずではなかったのか? そして何故魔王城にフェンリルがいる? あれらは魔界の奥深くにしか生息しないはずだ」


「はい。原因は不明であり、調査部隊を今編成しております」


「チッ…俺は陛下にこのことをに報告をする。魔王が死んで以降…低位の魔物も活発になっているという情報もある…予めに備え、追加で警戒範囲を広めろ」


「では、失礼する」


青年は部屋を出ると扉のすぐ側に甲冑姿の男が待っていた。

男は青年に声をかける。


「副騎士長、お耳に入れておきたいことが」


「ッ!副長では無い! 僕はもうこの国の()()()だ!」


癇癪を起こした子供のように喚く青年。


「も、申し訳ございませんっ」


「フンっ、話とはなんだ?」


「はい。実は魔王が倒されて以降、少し気がかりになることがありまして」


「……」


「それが…魔物、それも高位の魔物ばかりがこぞって姿をくらましたようでして」


「なんだと?」


青年は酷く驚いた。

魔王が倒されたといっても魔物自体が消える訳ではない。魔物にとっては指導者がいなくなっただけのことなのだ。

魔物の存在が確認出来ないとなるとそれは何か異変が起きたと考えるしかない。


「至急近隣諸国にも通達、軍の再編成もしておくように伝えておけ」


「了解しました」



..··…··.─__─__.__─..···._─(·─_…·_─)


時は少し遡り虫も静まる夜、ロアは意思疎通ができる魔物達を魔王城に集めた。


「聞けぇい! 勇敢なる我が部下であり同志達よッ! 魔王は勇者の前に破れ、我は前魔王が成し遂げられなかった野望…そう!! 世界を我等の物とするッ! そして、かつての悪逆非道なやり方は性にあわないゆえ! 完璧な法国家を我は目指すことにした! そのために尽力した者は必ずや歴史に名が残ることだろう!」


うぉぉぉぉぉっ!!


「素晴らしい! 暁には貴様らの望む楽園を与える!! そして共に世界を取ろうぞ?

───そして、一つここに誓いを立てる。無闇な殺生を金輪際禁ずる。正当防衛は可だ! 異形のもの達も例外ではない! 異論のあるやつは国家反逆罪だ!」


「我が名はロア! 貴様らを導く者の名だッ!! 心に刻んでおけぇい!」


ワァァァァァァァァッ!!!!!


歓声と拍手が鳴り止まぬ中、ロアは魔王の間に転移して戻る。


「あ"あ"あ"ぁ 疲れたぁ」


「お疲れ様だ、水はいるか?」


「いる…」


ロアは重苦しいマントを玉座の背もたれへ脱ぎ捨て、腰を掛ける。リルは水魔法で水を出しグラスに注いで手渡す。


「いやぉ、凄いな。あんな知性の欠片もなさそうな魔物どもを一発で統率するなんて。しかし何故本名を名乗らなかったんだ?語呂悪すぎだろ」


「あぁ? ん…俺な、実は勇者なんだよ。いや、元か」


「───は? 勇者? 元?は?」


「色々あってな、っていうには大きすぎる話だけどな。魔王倒した。アイテム拾った。魔王になった。今ココ。おーけー?」


「あぁー? うん?…は?」


「今の魔王が同族虐殺してた勇者だったなんて知れたら知ったら暴動どころの騒ぎじゃなくなるからな…いやぁ、我ながら頭がキレるぜ」


「ッスーー…今度その話、詳しく説明を求む」

「…っさて!お腹空いたな、魔族って普段なに食べんの? 人の肉?」


「…………魔族は肉から魔素を吸収して生きている。しかし魔王は食事を必要としないと聞くが…主はどうなんだろうな? 食事というならヒューマンと同じで良いと…思う。まぁ、我は生肉だけでも美味しく喰らえるがなっ」


「そかここ(魔王城)キッチンとかあんの?」


「まさか…主、料理が出来るのか?」


「おう、出来るぞ? 慣れたら出来るようになるさ。おっ、キッチンはあるみたいだな、じゃあ作ってくるから適当にくつろいでおけ、《転移》」


「りょ、了解した」

(魔王が料理…)


─·…·──···"─


ロアはキッチンに着き、早速冷蔵庫の中をみる。中にあるのは謎の肉と金の卵にトマトなどの野菜に調味料。


「色々あるな魔王城…よし、ビーフシチューでも作るか」


ロアはまず野菜と謎肉をブロック状に風魔法で切り始める、その手業はまさに神の業。

切り終えたら鍋にバターと溶かし、小麦粉をぶち込み、色が変わるまで炒める。

そしたら、赤ワインとトマト、砂糖etcをいれて中火で煮込む。

アクを取り、煮立ったら皿に移し替えローリエの葉を乗せて歓声。パンも忘れずにね。

……素晴らしい出来だ、レシピ本を出せそうだ。


「よし、《転移》」


─··──".··────...·.·.·.


「おーい、出来たぞぉ」


「んむぅ? うぅぅ……」


リルは人化して地べたで寝ていたようだ。

メイド服が乱れてて艶めかしい。


「…ほら起きろ 飯だ飯。どんなところで寝てんだ」


リルの顔の前に料理を置いてやる。

…おっ? 匂いを嗅いで目が覚めてきたようだな。


「美味しそうな匂いじゃないか、主。生肉よりずっとそそる」


「だろ?……置く場所が無いな。ここ何もないじゃん」

(こう、椅子とか机とかあったら良いのにな…地べたでは食べたくない)


メキッ、メキッ……


そう、ロアが思うとなにやら軋む音が聞こえてくる。

するとどうだろう。

音の発生源である床がどんどん浮き出てくる。

そしてどういうことか瞬く間に石製の机と椅子が出現した。


「」


「主! そんか便利ことも出来たのか」


「嘘だろおい…ステータス見れば分かるか?」


動揺しながらも運んできた料理を全て置く。


──────────────────────

名: ロア・ ウングリュック

種族: 魔王

属性: 悪·闇

称号: 魔王《魔王スキル付与》

魔王殺し《魔王のステータス付与》

壊れた勇者《勇者スキル不可》

逆鱗《繧ヲ繝ウ繧ー繝ェ付与》

──────────────────────


いや分からねぇよ


「あるじっ、さっそく頂こう」


暖かいトロトロのビーフシチューはふたりの鼻腔をくすぐる素晴らしい香りを出していた。


「これ、主が作ったのか…主?」


「…」

(あの時は意識が朦朧としていて見れなかったが、魔王になって色んなことが変わっている。勇者スキルが使えなくなっているのはおろか、『逆鱗』この効果だけ見れないんだが)


リルはビーフシチューを見てごくりっ、と喉を鳴らす。


「あっ? お、おう、味わってたんと食え」

(魔王スキルはおいおいだな。何ができて何が出来なくなったのかも)


早速、リルは肉をすくい、自分の口へ運ぶ。

ホロホロと舌で切れる肉と野菜の自然な甘みが口いっぱいに広がりリルの顔は幸せで顔が緩みに緩んだ。


「美味いか?」


「あぁ…とっても美味しいぞ、こんなものを食ったのはいつぶりであろうか…召喚前でさえこんな美味いものは初めてだ」


「それは良かった。これは昔料理下手な母が唯一美味くて教わってた料理でな」


あの日々は今でも忘れられない。

平穏な日々……アイツらさえ、あの王国さえなければ俺はッ!


「主? 顔が怖いぞ、せっかくこの飯が台無しだ」


「! すまん、昔の思い出に浸ってただけだ」


「~~!」モッ、モッ!


リルは食べるのに必死のようだ。

ロアはそんなリルを横目で見ながら食べてゆく。


「そんなにがっつかなくてもおかわりはあるぞ」


「主よ…」


「なんだ?」


「惚れたよ、番にしてくれ」


「番…? ……ッんんーー」


ロアもロアでリルの容姿がドストライクなため、そう反応するしかなかった。


──·─·..··─·.···─·····─..·


「主よ、私はもうお腹いっぱいだぞ…フェンリルなのにタヌキになりそうだ」


「ははっ、そりゃ良かった」


今はもう朝、魔界にも少し暗いが日は差し込んでいる。


「これからどうするか…スキルの確認でもしてみるか」


ステータスを開いて称号:魔王を押す。

すると目いっぱいに広がる文字飛び出してきた。

たくさんの項目があるなかひとつの項目が目に付いた。


《魔王スキルLv1》アンデット作成

※この作業は魔王城でしか使用できない。


「これを試してみるか」


ロアはその項目。アンデット作成を押す。


────ピピっ…ゴゴゴゴッ……


その言葉に反応するように魔王の間の床から謎の台が先程の机椅子同様に生えてくる。


「なんだ…これ?」


「主、これはモンスターのオベリスクだ。世界中のモンスターはこのオベリスクからでてくる召喚門を通って出現しているんだ。門は一方通行、我も気づいたらこの世界に降り立っていたぞ」


「じゃあリルもこのオベリスク…?っていうのから召喚されてきたのか?」


「そう…らしい、我も我で知識だけあるようなものだ。というのも我はさっきこの召喚門から誕生、そこから主のいる場所まで来たからな。途中小汚い低級モンスターが我の道を阻んでいるので腹が立ったがな…」


「その節はどうも、、、」


と、いいつつロアはその台へと恐る恐る手を伸ばす。すると辺りは光り始め、オベリスク周りには魔法陣が張られ前に選択画面が出てくる。


「えぇと、これでアンデット設定ができてモンスターを作れるのか…? 可能って書いてるやつを適当に…MPが必要なのか」


画面にはモンスターの名前、特徴、消費MPなどが記載されている。

ロアはその文字を押してみる。


「うわッ! なんだこれ!」


作成をしたロアの前に紅色の召喚陣が形成されていく。周辺には風が巻き起こり、電流がほとばしっている。

オベリスクを中心として無風の屋内にも関わらず暴風が吹き荒れる。


「これが召喚門だ…ちょいとおかしいな、」


「ん? どした?」


「…主よ、召喚陣とは普通、青色のはずなんだが」


「えっ? 赤やん?」


そんなロア達を尻目に召喚陣は大きくなってゆく。

そして魔王の間ギリギリまで大きくなった召喚陣からモンスターがその姿を表す。


それは中央に黒いローブと鎌を持った姿の骸骨。

体長は3mほどで、鎌はそれよりも大きいサイズ。

紫煙は足下を這い、目は淡い紫色とエメラルドグリーンのような、炎が渦巻いている。

その骸骨が召喚陣から完全に姿を表すと、持っていた鎌をその場に立てる。


ドォン!!


魔王城が揺れた。

骸骨はゆっくりとかしずき。


───言葉を発した。

[お初にお目にかかります。魔王様、ワタクシは、種族名、死を司る者、『()()()()()()()』と申します。以後お見知りおきを]


「…声渋っ、しかも丁寧ッ」


突然の自己紹介に唖然とする二人。


「君はグリムリーパー、要は『()()』なのか?…」


[はい、ワタクシの種族を既に存じ上げてらっしゃるのですか]


(とんでもないもの召喚してしまった気がする)


ロアは思う。


「俺はまだスキルLvが1で下級の魔物しか召喚できないはずだが…見た感じもうエンドコンテンツなんだよな」


[ほっほっほっ!そうですね、しかし、来たのはワタクシです。その事実をどうか、受け止めて頂きたい。まぁ、下級魔の召喚門の魔力消費量で死神が手に入って儲けもの、とでも思っていただければと思います。わたくし、腕には自身があります]


[ワタクシが来たのもアナタの才に惚れたこそ、これから誠心誠意尽くさせていただきます。]


そうやって鎌を持つグリムリーパー。


「俺の才…? いや、うん。戦力的には十分と思ってきたくらいだ。来てくれてありがとう、グリムリーパー、お前を歓迎したい」


[恐悦至極]


「ところで…人化は出来るか?名前を授けないとこれって出来ないのか? 」


ロアはダメ元で聞いてみる。リルは名前を与える。ネームドモンスターになると可能になったが…


[容易く…]


(できるのか…)


グリムリーパーの周りに紫の炎のようなものが出て体を包み込んだ。そして数秒、炎から出てきたのは執事服を纏った老紳士だった。

…凄い姿勢が良い、モノクルがとても似合っている。


「いかがでしょうか? 魔王様」


「うん、感動してるよ、こんなにも執事服が似合う人に会えるなんて…あとロアで良い、むず痒い」


「ではロア様と、私は…いかが致しましょうか? 名前を頂けるならば、そちらの方が良いと判断します、本契約の説明はあちらの方が済んでいるようなので不要でしょう」


「名前か、やはり必要だよな……安直で悪いが、

『フェアベルター·アブソリュート』でどうだ? 執事っぽいだろ? これからはベルターと呼ぶことにするな」


「素晴らしい名前です。感謝致します、ロア様。」


物腰柔らかな老執事、ベルターはにこやかに笑いながら言った。


「じゃあ、ベルター。ひとつ聞きたいことがあるんだが、何かネームドモンスターになれば何か変わるのか? その辺りの知識はからっきしでな」


「はい、ではネームドモンスターになるとは、という所から……高位魔物、魔族には大抵一つ、個々に秀でた能力があります。ネームドモンスターになるとその能力が開花され、劇的に性能が向上されます。」


「べ、ベルターの能力はどうなったんだ?」


私の能力は『呪い(カース)』。相手を衰弱させる能力ですが…能力の向上により、私の攻撃に当たった者は即死するようですね。しかし、全て即死する訳ではなく魔法防御耐性が高ければ高いほど即死の効果は薄くなります」


(なるほど、名前を与えた物にはそれぞれの特典があるようだ。リルはなんだったんだろうか? それにしても、即死…やっぱり俺はとんでもないものを召喚してしまったようだ。グリムリーパー時の姿からして只者ではなかったが…)


「あのとんでもサイズの鎌はどうしたんだ?」


「あぁ、それなら粒子化させて見えないようにしております」


そう言いながら、先ほどの縮小版鎌を実体化させるベルター。


(とんでもねぇな…)


「少し、魔力の使いすぎで眠くなってきた…少し寝る、ベルター、来たばかりで悪いな。…()()()()()()()()()()()()()()()()()


「はい。ごゆるりとおやすみなさいませ、ロア様」


「話は終わりかー? 了解、おやすみなさいだ。主」


─.─…─..─··.──…─


ビーフシチューが食べたくなってきましたよ。

さて、新キャラです。フェアベルター·アブソリュートさんですね。

完璧な執事という意味にしたかったのでこの名前にしました。


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