裏切り 後 出会い
さて、物語に入っていきます。
皆大好き魔王と勇者でございやす。
ガンッ! ガキンッ! ドォォォン!
「ッ!! はァァァァ!!」
「グゥっ! 小癪な奴よ! ぬぅっ!」ごぉン!
「いっけぇぇぇぇ!!」 ガキンッ! ゴリュッ!
「…ここ、までなのか…」
「…」
「勇者、よ。それ程の力があるのなら貴様…世界を支配できる、ぞ。どうだ今から我と結託しないか」
「愚問だ、僕は勇者。戦う理由は見つかっていないが魔王にだけはならない」
「そう、か…残念だよ」
勇者、ロア·ウングリュックは魔王を倒した。
世界に平和が訪れた瞬間である。
「…やった…やったぞ三人とも! これで世界は救われ…ん?」
ロアは振り向く、しかし背後にいた戦士、賢者、魔法使いの三人はうつむいている。
「おい、どうした? そんな辛気臭い顔して。長い戦いが終わったんだぞ? もう少し喜べっ…グッ!?」ズトッ!!
刹那、戦士の短剣で貫かれた。
徐々に体が痺れてくる。痺れ薬を塗っていたようだ。
「……へっ、へへっ! やったぜ! 報酬は俺のもんだ!」
「戦士。話が違うわ、3人で山分けよ」
「賢者さんの言う通りなのです! 山分けですよ!」
「わぁーってるよ、んなこと言われなくたって!」
(…そうか、王国は僕を裏切ったのか…分かっていた。魔王がいない時代に勇者はいらない。そんなことぐらい…)
「おま、えらァッ!」
「ん? あぁ、まだ意識あんのか、魔物でも即死の毒だったんだが…流石勇者様だァ」
戦士はロアをゴミを見るような目でこっちを見てくる。
「だま、したのか?」
ロアは朦朧とする意識の中声を絞り出す
「あぁ、お前と冒険する前からな! 陛下直々に依頼してきたんだ! 『勇者を殺せ、報酬は如何様にでも払う』ってなぁ!」
「戦士…契約違反よ。過度な干渉は控えなさい」
「いいじゃねぇか、もうすぐ魔物の餌になるんだからよぉ」ゴスッ!!
「そうだけど、時間の無駄だわ。早いとこ報酬貰いに行きましょう」
戦士はロアの体を蹴る殴るで痛めつける
「がァっ! お前、ら絶対に殺、殺してやるッ!」
「へぇ、待っとくぜ、これで終いだがな、ハハハっ!」
「それ、は!」
戦士が取り出したのは
マジックアイテム紫《ハーメルンの笛》。
低レベルから中レベルの魔物を呼び出す効果を持つ。
「それではさようならね、勇者 この茶番、なかなか楽しかったわ」
「さよならなのです! 勇者さん!」
「じゃあな、せいぜい悶え苦しんで死ねよ!低レベルのモンスターに殺されるなんて惨めなもんだよなぁ!」
三人は無慈悲に僕を置いて逃げる。
この空間に残ったのは音を奏でているハーメルンの笛とロアだけだった。まもなく、大量の魔物がくるだろう。
──憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いニクイニクイニクイっ!!
僕、いや『俺』の人生はろくなものでは無かった!
幼い頃に両親を失い、軍に連れてかれたら化け物を見るような目でこっちを見てくる!
何故だ! 俺はただ頑張っていただけなのにッ!!
褒められたかっただけなのに!! こんな事になるなら勇者なんて受けるんじゃなかった! …力、力が欲しい、誰にも負けず絶望に陥れる力がっ!──
…マズい…!このままでは、死んでしまう。 何か、何かないのかっ!?───これは。
そこにあったのは魔王が死んだときドロップしたアイテム
マジックアイテム???《魔王転生》
詳細
: これを使用した場合、種族が『魔王』となります。
使用後元の姿には戻れません。
本当に使用しますか?
「これを使えば、力が…手に入る!」
ロアはドロップ品を手に取り宣言する。
「俺が、この世界の最強になってやる! そして、見返してやる。俺を裏切ったヤツら全てだ!」
瞬間、ロアの体が闇に包まれる
「グッ!ァァァぁぁぁあァ!!」
痛みと共にロアの体に異変が出始めた。
煌めく金色だった髪は、漆黒に。
エメラルドの様な緑目は、紅色に。
背中には悪魔の翼、頭には鋭い角が。
痛みが収まったころに近くの水辺で自分の体を見る。 その姿はまるで、
「魔王…」
少し声まで低くなっていた。背も大きくなり。筋肉が浮き出ている程ある。
外見だけではない…ステータスを視る。
──────────────────────
名: ロア・ ウングリュック
種族: 魔王
属性: 悪·闇
称号: 魔王《魔王スキル付与》
魔王殺し《魔王のステータス付与》
壊れた勇者《勇者スキル不可》
逆鱗《繧ヲ繝ウ繧ー繝ェ付与》
──────────────────────
「魔王…はぁ、はぁ、クソっ、頭が割れそうだっ…」
───ドドドドドドドッ!!!
「ハーメルンの、笛で! モンスターが!」
轟音をたてて迫り来る魔物の軍勢。
ゴブリン、オーク、スカル等低級~中級モンスター。
その中に一際目立つ大きな狼がいた。
──『フェンリル』。
黒い体毛に紅い線が入り、目は金色の禍々しい姿。
普通のフェンリルとは灰色の体毛であるが、特異種であろうか。
実力も並大抵ではないように見える。
今のロアでは絶対に倒せない相手だ。
「ッ!? 不味い! なんでだ、呼び出されるのは低位の魔物だけのはず…」
ロアの周りに武器は使える武器は壊れた聖剣しかない。
「くっ! 喰らえぇぇ!」
剣を捨て必死の抵抗を見せるため右腕をフェンリスの前に突き出し。
勇者特有のユニークスキル。
高位魔法『ホーリー・アロー』を頭に叩き込む。
MPもギリギリ。右腕に力が宿っていく。
そして発射するために念じようとしたその瞬間、右腕の力がふっと抜け、霧と化して消えていく。
「──えっ?」
[称号:壊れた勇者の付与により、勇者スキルは使用不可です]
頭の中に無機質な声が響く。
その言葉は今の勇者にはとうてい理解できないものだった。
その言葉を理解しようとして放棄して理解しようとして放棄して。その繰り返し。
そうこうしている間にフェンリルが目の前に悠然と立っている。
「ぅ、ぁ…」
───殺される。
フェンリルは自身の口に魔力を溜める。
見る限りその量は普通の人間なら一瞬で塵と化すレベルだろう。
(いや!まだだ!こんな所で死んでやるかぁっ! 何がなんでも生き伸びて…)
聖剣を投げて牽制しようとしたその時。
フェンリルからの魔力弾がロアではなく、魔物の群れに当たった。
一瞬のことでなんの事か分かっていないロアには理解が追いつかない。
全ての魔物を消し炭にした後フェンリルはゆっくりと顔をこちらに近づけてくる。
食われるッと思ったのもつかの間。
───くぅん くぅん グルるる
「…へっ?」
フェンリルから人懐っこい犬のような鳴き声がした。あまつさえ頬を舐めてくる事態だ。ロアは混乱した。
『そう怯えるな。我が主の使い魔だ。以後宜しく頼む。新たなる魔王よ』
「…へっ?」
フェンリルが喋った…混乱した。それはもうとても。
高位の魔物は自我が芽生え、喋る個体もいる。しかし、主…?
「へっ?…」
『それしか言えないのか? まぁ仕方もあるまい。』
「…ひとつ聞きたい、我が主とはなんだ」
『貴殿は魔王となったであろう? 故に使い魔として私がサポート役に任命されたということだ。ステータスを見てみろ分かるはずだ』
「俺が…魔王?」
そう言いロアにステータスを見させる。
大分心は落ち着いてきたが混乱はしている。
「魔王は、皆そうなのか?」
『少なくとも前魔王は使い魔を持っていた』
「そう…なのか。この魔物達は?」
『? 主の部下であろう』
──魔王になったことで魔物は俺の部下になったのか…?
ザッ…と魔物たちはどんどんひれ伏す。
知能のないはずの低位モンスターが。
唖然としているロアにフェンリルは、
『さて、ひとまず名をくれないか? 名を与えられた使い魔は仮契約から本契約が成立となる。そして新たな力に目覚める』
「名前…ネームドモンスターになる訳か…ところで君は…フェンリルなのか?」
『ふむ、我の種族はフェンリルという型にはハマらないより高位の存在だ。さしずめ[フェンリルロード]といったところか。レベルは本物と引けを取らないどころか、それよりも強いと自負している』
「それは、凄いな。…にしても、名前? すまない、色々なことが立て続けで起きて大した名は付けれそうにないが……[リル]なんてのはどうだ?」
『まぁ、ハズレではないな…』
そう言いながらもリルは尾をフリフリと振っていた。
「そうか、それは…良かっ、た」バタンっ
「主! ………寝ている、のか?」
糸が切れたように気を失ってしまった。
消耗が激しかったのだろう。
『にしても、ここは陰気な場だ。ひとまず、休むために場所を変えよう』
リルはロアを咥えあるきだす。
ここは魔王の城内部、魔王の間。
魔王がいる最奥の大部屋である。
そしてここは魔界、つまるところ魔王領である。
別に別世界とか違う次元とかにあるわけではない。ただ世界の最北端にある国である。
「……ん?」
『ようやく起きたか、あれからもう3日くらいにはなるのか?』
「夢じゃ…ないよな、」
『ふむ、外の景色が、人外魔境だがな。じゃあ早速だが魔王様よ? 探検の時間だ』
─────……………………………──
「探検っていっても何処にいくんだ?ってか魔王になったってことはここマイホームじゃないのか?」
『前魔王はカラクリが好きだったようだな』
リルは魔王の座っていた玉座を見つめる。
『主、玉座の肘掛けの下に小さい魔法陣があろう? そこに魔力を流してみろ』
リルは面白いものを見つけたような声色で言う
「えっ? 魔力?」
(魔力なんて雀の涙程しかないとステータスに書いてあった、魔王になったことでそれが底上げされたと考えたら妥当なのか? ステータス測定不能って書いてたし)
ロアは玉座に触れ、魔力を流す。
ポゥっ、と赤色の光に手が包まれている。
『主の魔力は綺麗な赤色をしているな』
「そうなのか?」
─そういえば、魔法しか脳がない«ピー»がパーティーにいたな。アイツの色は小汚い«ピー»のような色だったな。
そう思いながらロアは玉座の肘掛けの下に手の平サイズの魔法陣があるのを確認して魔力をながす。すると····
ガコンっ! が、ガガガガ! カラカラ バダァン!
「これは…」
[この世界にこんな技術を使った仕掛けがあるとは]
出てきたのは隠し扉だった。
魔力に反応して後ろにあった魔王の自画像が動き、扉が出てきた。その扉にロアは入ろうとする。
「…リル、お前どうやって入るんだ?」
リルの大きさはちょっとした一軒家くらい。
とても大きい。
[あぁ、問題ない。名を貰ったことで魔力が開放されている。人化も自在に出来るようになったようだ。元より人化は出来たがあまり得意な方ではなかったのでな]
と、説明しながらリルは闇に包まれていく。全身に闇がいきわたり数秒。中から人影が出てきた。
「これでどうだろうか」
出てきたのは一人の美人さんだった。
黒髪ロングで金色の目。ロングの清楚な方のメイド服を着ている。
そして、獣耳。
ロアのドストライクの顔である。
クリティカルヒット、
「お、お前、雌だったのかっ!」
「雌という言い方は気に食わないが生物学上女ということになるぞ、主よ」
「…」
「おや、この顔の紅く染め上がっている顔に動悸の騒がしさ、まさか主…惚れたか?」
リルはニヤニヤした顔でロアの顔を覗き込む
「主なら良いぞ? さぁ、 かむなう!主よ。私も番のいる経験をしたいと思っていた」
おもむろに服を脱ぎだすリル、これ以上は不味いと悟り、止めにかかるロア。
このあと、メチャクチャ話し合った。
─··─.._._.......____.·.··..__
「さて、改めて入るか」
「いけずだな、主よ」
「…まだそんなの早すぎだ」
「まだ?」
「……入るぞ」
ロアはドアを開く。その中に広がっていたのは草を編み込んだような床に紙で出来ているドア。
それと、部屋の奥には階段が。
「なんだ…この部屋…見たことない物ばかりだ」
「ふむ、極東の国にこのような物を作る文化があったと思われる。この床は確か…タタミと呼ばれる物だな、ドアはフスマと呼ばれていたと本で見たことがある」
「フスマ、タタミか…よく知ってるな」
「ふふん、結構博識なんだぞ」
そしてフスマをロアは見る、そこには紙が貼っており、こう書かれていた。『土足厳禁』と。
「ここは履物を脱ぐのか、めんどくさいことこの上ないな」
二人はそう思いながら部屋に入る、内装は机と床にあるベット? くらいしかない。
「机にノートが置いてあるな」
ノートの表紙に書かれていたのは、『現代武器の使用方法と製造方法』と書かれていた
「現代武器? 何だそれ」
「流石に分からんな」
リルは後ろから抱きつくようにノートを見る。
…二つの豊満な双丘という名の凶器がロアの背中に押し付けられる。
「当たってるぞ?」
「当ててるのだよ」
「…そこに階段があるぞ、行ってみよう」
「そうだな」
二人は階段を降りていく。
下に行くに連れて温度は高くなっている。
「熱いな、ここは何をする場所だ?…!」
降りた場所には広い空間が広がっていた。
昔ロアが武器を買っていた鍛冶場のような場所だ。
ふと、近くにあった机をみる。
そこには見慣れない黒い金属の筒があった。
「これは拳銃だな…そのモデルは黒銃と呼ばれる物らしいぞ? これに書いてある」
リルが見せてきたのは説明書と書かれている紙だ。現代武器とはこのような武器なのか? …第一、現代とはなんだ?
「…使用方法その一、グリップのメーターを見ます。これは魔弾装填量です。その二、グリップの上にあるセーフティーモードを解除します。弾の種類は任意で選べます、これで撃てます、と書いているぞ? 主」
「えっと、察するにこれは中距離、遠距離の武器なのか?」
「そうらしいな、主よ。撃ってみてはどうか?」
「そうだな、魔力を入れて…セーフティー? を解除したら、もう撃てるんだよな?」
「そう書いているぞ?」
「なるほどな、じゃあ試しに撃ってみるか。ボウガンの様なものだろうか」
「主、別室に訓練場のような一室があるらしいぞ?」
「おぉ、何処にあるんだそれ?」
「ここから15kmくらいの所にあるぞ、主転移しよう、魔王城の中なら自由に転移出来るはずだ。確か、右腕を目の前にかざすと…」
「…これか、 おぉ、何か浮かび上がった」
「それはこの城の全体図だ、右下の訓練場を指して念じろ」
リルはロアの服の裾を掴む。
ちょっとドキッとした。
「…(転移)」
淡い光に包まれ二人は部屋をあとにした
___.._..···.._._...··___._...··
「広いな、訓練場って、誰が使うんだこれ?」
「不明だ。さて主撃ってみてはどうか?」
「ゲージは、まだ大丈夫そうだな」
ロアは拳銃を構える。
的は人型の藁だ。風は無いのに少し頭が動いているのが気持ち悪い。
ロアはよく狙って引き金を引く。
ドン! パシュッ………ドォォォォォォォンン!!
発砲音が轟音になって返ってきた。流石の二人も唖然としている。
何故こんなことになったのであろうか。
…まず、ロアが発砲、次に紙の的(魔力で固めたやつ)を貫通、そして壁も貫通、最後に延長線上で闊歩していたギガンテス(体長50m)に当たり、停止。ギガンテスは跡形もなく消滅した。
「「………はっ?」」
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