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カンパニーズ  作者: 大野春
chapter.01 新入社員
9/21

No.08 ビジネスネットワーク


「君の担当になった、乗間のりまだ。よろしくね承継くん」

承継の直属の先輩が現れた。乗間と言うらしい。天然パーマに黒縁眼鏡。眼鏡が似合うのか、似合わないのか、そんな微妙なラインの出で立ちである。


「これからしばらくは、俺に付き添って仕事を覚えてもらおうかな」

乗間は黒縁眼鏡をかけ直し、デバイスを開いた。


「承継くんは、NBCに企業IDは追加した?」

「はい、しました」

「ならもう、ビジネスネットワークに接続出来るね」


ビジネスネットワークとは、企業に属する人間が閲覧可能な銭化東京の重要な基幹システムのひとつである。


客Aが例えばカレーを食べたければ

ビジネスネットワークに依頼を出す。


依頼の内容には、カレーの味(モノの詳細)や食べたい時期(納期)やカレーを届けて欲しい場所(納品場所)を主に明記する。


この依頼をネットワークに通知すると、例えばカレーであれば銭化東京の食品販売許可を得た業者に通知が行くのだ。


ちなみに銭化東京では基本的にすべてのモノに単価が設定されている。標準的なカレーの場合、500電銭マネーである。


通知を受けた企業たちは、いち早く500電銭に対応出来る原価でカレーをつくり、客に届けるのだ。


各々がカレーをつくり、配達に向かう。

一等賞の企業が検収を貰い、あとは電銭が自動的に引き落とされる。客Aはカレーを食べれる。もちろん、二位以下の企業は作ったカレーは用済みなので無駄になる。


超、競争社会において、妨害は認められている。


他社のカレーを奪って、販売すれば原価0円で販売する事も可能なのだ。配達途中のバイクをパンクさせても構わない。


とにかく競わせ、速やかに納品する。

この考えが、いまの銭化東京を急速な発展に導いた理由なのだ。



「ナンデモは総合商社だからね。なんでも販売出来る。1日に溢れるほどの依頼が来るんだ。無論、うちの会社では全ての依頼を受けるわけじゃ無い」


承継は依頼をざっと見てみる。


野球ボールが欲しい、だとか、輸送を手伝って欲しい、だとか、お笑い芸人を呼んでショーをしてほしい、だとか


なんでも、いくらでも仕事があった。


「なんか、興味を惹くものはあったかな?」

「うーん、これなんてどうです?」


【ブリキの兵隊を探しています】


「へぇ。ブリキの兵隊。これは骨董品の一種だね。これは単価が決まっていない。お客さんは、、、5万電銭で購入希望みたいだね。どう?気になってるのかな?」

「やってみたいです」

承継は新人らしくやる気をアピールした。


「よし、やってみようか」

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