No.05 7と3
「おっ、今年の新人は優秀だな」
大柄の男が緑茶を持った2人に近づいてきた。
承継と灰城は大柄の男に一礼する。
「君が一等賞かね?」
「はい」
「どうやって?」
承継は説明した。
たまたま、入社式の朝にこのビルについて調べていたところ、ビル内に売店がある事を知った。
それを思い出し、エレベーターに乗り、緑茶を買い、戻ってきたのだった。
「君は?」
灰城は緑茶を他の人間から奪い、運行管理システムをハッキングし、他のジェットボードを止めた話をした。
「なるほど。どちらも素晴らしいね。1位の君は準備に優れていた、2位の君は実力が備わっていたんだね」
2人は褒められ、嬉しかった。
「まぁ、その昔から、仕事は段取り7割って言われているんですよ。まぁ、準備段階で決まる、と言うわけさ。1位の君が1位たる所以。一方、2位の君は3割のほうに特化して、仕事をこなした。それも凄いんだよ」
ははは、と大柄の男は笑った。
「7の君と、3の君が、今後この世代をリードしていくのかな?まぁ、頑張ってくれよ」
大柄の男は去っていった。
人事田が喋り出す。
「今のは営業部の束芋統括部長だよ。君たち、嬉しい言葉を貰ったね」
灰城は悔しさが残った。
こんな、単純な事で1位になるなんて。ラッキーな奴だな。
「君、名前は?」
「うけつぐ。承知の承に、継続の継だよ」
「俺は灰城。次は負けない」
「まずは飲み比べでもする?」
承継はにこっと笑う。灰城もくだらない冗談に笑ってしまった。
この時代を担っていく二人が、初めて互いを認識した瞬間だった。