No.04 職種選定テスト②
プレミア緑茶。
本日発売の比較的高価な緑茶。
先着50名。
スピード勝負なのだ。ただ、店に行き、お茶を買い、戻る。それだけの事。
ジェットボードに乗れば、空中を移動し、すぐにコンビニエンスストアに向かえる。
そのジェットボードに乗れるのが70名。
ざっと目測で200名が自分よりジェットボードに近い位置にいる。
この会社の近くに、飲料品を扱う店舗がいくつあるのか。
一店舗に何本売っているのか?
果たして、一人一本買うのだろうか?
妨害目的で大量購入する人間がいるかもしれない。いや、それを奪えばチャンスはあるか?でも、奪うなんて事、簡単に出来るのか?
どう考えても、難しい。
(あっ・・・)
承継は、ある事を思い出し、エレベーターホールへ向かった。
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同時刻。
灰城はジェットボードに乗る。
ビルの30階、エアゲートから勢い良く上空へ飛び出す。
春風が心地よい。
身体のバランスを取る。
大体はGBAにより、水平を保ちながら空を飛べるのだ。
ジェットボードは感覚的に乗れる。
灰城は指定のコンビニに向かった。
「おっ、いたいた」
先客が緑茶を買っている。灰城はそれを奪った。恵まれた身体能力が役に立つ。
「悪いね」
即座にジェットボードを飛ばす。
「待てっ!」
奪われた者は灰城を追いかけてきた。
灰城はジェットボードに乗りながら、デバイスを操作し始めた。
(うーん。これかな?)
灰城はナンデモのサーバーにアクセスし始めた。
(さすがにセキュリティは厳しいな・・・)
即座に、タイピングを行う。
(あったあった。)
ナンデモのビルを管理するサーバーだ。
ビル管理サーバーから、運行管理のシステムにアクセスし始めた。
(これこれ、このタイプのジェットボード70機が今この街中の上空を飛んでるな・・・)
灰城含め、ジェットボードの現在位置を含めた運行履歴が地図にプロットされている。
(えーと、俺の乗っている奴がID36番か)
(ID36番以外、セーフモードに変更!)
この操作、僅か82秒。
灰城以外のジェットボードはみるみる推力が衰え、地上に降りてった。
ひとりだけ優雅にジェットボードでエアゲートに戻る。
(間違いなく一等賞だな)
ホールに戻る。
なんと、既に1名、緑茶を持った人間がいたのだ。
青いシャツに赤いネクタイ。
「はい、第2位おめでとう!」
人事田が灰城を祝福するが、嬉しくはなかった。一番乗りでは無かったのだ。
灰城は1位の男に理由を尋ねる。
「ど・・・どうやって?」
「いやーフツーにこのビルに売店があったから」
「はぁ?」
灰城はあっけにとられた。
承継はジェットボードに乗らずに、1位を勝ち取っていた。




