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カンパニーズ  作者: 大野春
chapter.01 新入社員
21/21

No.20 ほころび①


総合商社ナンデモ。


第2営業課。


そこに、配属された新人は1名。


彼の名は灰城誠はいじょうまこと

職種判定テストでは第2位だった。ナンデモの自社ビルのサーバーにアクセスし、他者のジェットボードの運行を妨げた強者である。


その功績が認められ、2課に配属された。


2課は銭化東京のサーバー専門部隊である。

総合商社ナンデモは古くから銭化東京のサーバー運用・保守を請け負っている。


銭化東京のサーバーは都市機能の要だ。

全てを管理しているのである。

幾人のも個人情報や、数多ある企業情報、そしてそのカネの流れを管理する機能、ビジネスネットワーク。


サーバーも無数に存在している。

冗長化しており、サーバー拠点は銭・日本国内だけで8拠点。全世界で合計12箇所あるという。


それぞれのサーバーの拠点は、各担当のみがそれを知りえているだけで、社員同士であってもその場所を教えることはできない。

総合商社ナンデモの最重要機密の一つだ。


ーーーーーーーーーー


灰城は営業兼、システムエンジニアの役割を担っていた。

新人の仕事としては、顧客(銭化東京)からの小さなバグ等の指摘を修正するのが主である。


ある日、灰城は入金システムの些末なバグを修正していた。


(ん?なんかおかしい)


ログを辿っていた。

入出金のログだ。銭化東京の金銭のやり取りは1秒どころかコンマの世界で行われている。


(16時37分25秒02と16時37分25秒04)


この僅かな03の隙間が無い。

全くあり得ない事では無いのだが、灰城は気になってしまった。


(ログが削除されたのか?)


灰城は整頓された文字の羅列が好きだ。プログラミングは簡単にこなせるし、汚いソースコードは嫌いである。

気になりだしたら突き詰める。これが彼の流儀だ。


サーバーの削除履歴を確認する。


無い。

16時37分25秒03の履歴を消した、という履歴は存在しなかった。


それでも疑い深い灰城。

削除履歴のログ、数字の羅列を覗く。


(16時45分28秒08と16時45分28秒10)


削除は頻繁に行われるものではないため、コンマ02の開きなどよくある話である。

しかし、彼は常に自分の直感を信じるタイプだ。

何事も無ければそれで済む。とことんチェックしたい性格なのだ。


(予感がする。削除履歴すら、削除したような、そんな悪寒がする)


誰が?何のために?


灰城は銭化東京の900日前まで遡れる、電脳履歴博物館へ向かう事にした。


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