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カンパニーズ  作者: 大野春
chapter.01 新入社員
2/21

No.01 入社式①

鼻をほじる。

正確に言うと、鼻の毛が出てないかをチェックした。

一張羅のスーツを着る。鏡を何度も確認した。


朝のラッシュを避け、始発のリニアに乗る。

それでも席には座れなかった。


ーーー銭化センカ東京の朝はとても無機質だ。


特別な業種を除いて定められた時間外の労働は処罰を与えられる。故に通勤で向かう人間以外は誰も何も仕事をしていない。

昔の人間は効率が悪く、ダラダラと仕事をしていたらしい。時間など気にせず、夜遅くまで・・・身体を壊してまで・・・馬鹿な話だ。



朝はリニアや自動販売機だけが働いている。


(・・・ちょっと派手だったかな?)


承継うけつぐはリニアの窓に映る自分の姿が気になる。

スーツは黒だが、シャツは青、ネクタイは赤だ。今時スーツを着て出社する人間は減ったが、人の流行とは不思議なもので、スーツを着て出社するという風潮が今のトレンドである。


【特区新橋】


特区新橋駅のホームに降りる。

無機質なホームの歓迎を受け、階段を降り、改札ゲートを抜ける。


ポケットに入れたNBCナンバー・カードがゲートと通信し、違和感なくゲートを抜ける。同時にリニアの利用料金がサーバーを通して引き落とされた。


昔は切符というものや、ICカードという不便なシステムで改札を抜けていたらしい。

今や全てが電銭と財布代わりのNBCによって紐づけられている。


ーーーーーーーーーーーーーーー


入社式まで3時間も早く特区新橋に着いてしまった。

承継はオートカフェに向かう。


無機質なカフェだ。

自分でメニューを選び、クッキングマシーンがサンドウィッチやコーヒーを作ってくれる。

最近は料理を作りながら、小話まで喋るようになったが、やはり人間には程遠い。


マシーンが切り刻んだ肉。それをパンで挟んだ食べ物を口に含み、コーヒーで溶かす。


椅子に座りながら承継は鞄からデバイスを取り出した。

ネットワークに接続し、自分が入社する企業について、調べていた。


【総合商社ナンデモ】


経済歴22年創業、64年の歴史を誇る総合商社。

現代表の孫駅そんえき氏は4代目を務める。

主要取引先は銭化東京。

飲料品から都市整備、プラント建設まで、文字通り“なんでも”販売する企業。


もう、何度も確認した会社説明。

おそらく調べなくともわかる。


承継はそれでも時間が余ったので、ナンデモの自社ビルについて調べ始めた。

32階建のビルだ。30階〜屋上は、エアゲートとなっている。


色々と調べる。15階に販売店があるだとか、17階にはトレーニングルームがあるだとか、3階に病院があるだとか。

これからそんな、会社で働けるのかと思うと、期待が止まらない。


デバイスの画面に出る情報を見ながら、うとうと。。。


目が覚めると、入社式の5分前になっていた。

冷や汗をかく。


このオートカフェから歩いて10分。そこに自社ビルがある。慌てて飛び出した。


本日、経済歴86年。4月1日。入社式。

焦りと期待。

勢いのある一歩だ。

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