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カンパニーズ  作者: 大野春
chapter.01 新入社員
18/21

No.17 300のブレット②


承継はあるひとつのルールを思い出した。

仕入れ品が返品可能な物であれば、90%の値段で返却可能なのだ。


銃弾の原価は1発約33万電銭合計1億電銭だ。

購入し、仮に他社に負けた場合でも、損失は1,000万電銭で済むのである。もっとも、1,000万電銭は安い額ではない。


(仮に負けたら1,000万の損失か。。。勝てば5,000万の利益。。。)

承継はリスクとリターンを天秤にかける。

もちろん、リスクが傾いた。さすがに1,000万電銭の損出は笑えない。5,000万の利益に目が行きそうであるが、勝ちは確実ではない。しかし、勝負に挑んだ時点でリスクが生まれるのである。

ましてや新入社員が扱える額でもない。これまで良くて3桁の案件しかやってこなかったのである。


(あれ?待てよ?)


待て待て、これが一般的な思考だ。


じゃあ、どの企業もやらないんじゃーーー

つまり、他社はリスクを見て撤退する。その中で、勇気を出したものが、仕事を手にするのでは?


最初の一歩を踏み出したものが勝つのである。


承継は武器を販売する店へ向かう。


その姿を見る、乗間。

「剥離課長、あいつ、大丈夫でしょうか?」

「彼はね、なんだか不思議だよ。発想がちょっとだけ違う。なんとかやれそうじゃない?ところで何やるんだ?」

「承継くんからは、何も報告が」

「それはマズイね」


先輩上司への報告を忘れるな、と乗間は承継にメモを取らせていたのだが。。。


ーーーーーーーーーーーーーーー


商業区池袋。


様々なモノを販売する店が連ねる街だ。

承継はどことなくわくわくしながら目的の店へ赴いた。


武器商店不殺。


なんとも矛盾した名前である。

小さな雑記ビルの一角に構えた店舗だ。

「いらっしゃい」

小柄な老人が現れた。首元に入墨がある。昔はやんちゃだったのかもしれない。


「この型名の銃弾300発分を探してます」

承継は型名を見せた。


「あー、これね。450発在庫があるね。買うの?」

「はい、すぐに」

「えーと、33万の300発だから、9,900万電銭だね。5,000万超えちゃうから、売買契約書ちゃんと読んで、同意出来るなら、君のデバイスの検収ボタン押してね」


流し読みし、検収ボタンを押す。

迷いは無かった。この時点で会社には9,900万電銭の請求が行く。


(あっ・・・・)

承継は乗間先輩に言われたことを思い出した。


「他にこの銃弾を買いに来た人っていますか?」

「うーん、記憶にないねぇ。それも300発だろう?」


競合はいない様だ。

しかも在庫は450から300購入し、150。

後追いされても300はすぐに用意出来ない。


「ありがとうございます」

銃弾タマだけじゃなにも出来ないけど、危ないから気をつけてな」

ダンボール一箱分の銃弾を渡される。

承継はそれを受け取り、店を出る。


商業区池袋からリニアで客先へ向かう。

行く先は商業区台場。

15分で着く予定だ。


勇気を出した者、判断の鈍らない者、それこそが競争に勝つのだ。

転ぶ事を恐れぬ、児童の徒競走のように、承継は300の銃弾を抱えながら走る。


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