No.12 生命線、最前線①
ーーー特区世田谷公共病院
「先生!大変です!」
看護師が慌ただしくノックし、返事を待たずにドアを開ける。担当医の川上は気を緩めていたのでびっくりした。
「ど、どうした?」
「薬品L2Dが明日までに必要なのですが、システムトラブルで発注漏れがあったようです」
「はぁ!?システムトラブル?いやいや、今は発注漏れの原因より、L2Dだ」
「メーカーに問い合わせましたが。。。現在L2Dを切らしているようで」
「どうすんだ!」
川上は怒ったが、看護師が悪いわけでもない、また、システムトラブルを今、非難する時間はない。
川上は即座にデバイスを立ち上げる。
【L2Dの調達】という案件をビジネスネットワークに依頼した。
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「おい、ウケツグ!早くついてこい!」
乗間先輩が言う。承継はすぐに支度した。
「なんですか?」
「説明は後からだ、2人乗りのジェットボードで世田谷公共病院へ向かう!」
総合商社ナンデモの自社ビルの最上階から、ジェットボードは発進する。
2人乗りタイプの操縦を乗間が行う。承継は乗間の腰を持ちながら立つ。
客観視するとマヌケだ。
空を切り、移動しながら乗間は承継に話しかける。
「病院で薬が必要になった。L2Dというものだ。薬品メーカーはすべて品切れだ。明日までに用意しなければならない」
「えー?無理じゃないですか」
「なんとかするんだよ!人の命がかかってんだ!」
乗間は少し慌てていた。
すぐに病院に到着する。
依頼主の川上先生の部屋には既に先客がいた。
「どうも。医療商社ゲールの澤口です」
「総合商社ナンデモの乗間です」
承継は何故か緊張し、挨拶をしなかった。
「L2Dは調合でも作れますが。。。銭化札幌のメーカーで出している薬と銭化大阪にある薬がなければなりません。明日までに。。。」
どうしたものか、遠いな、と承継は思った。
「澤口さん」乗間が名を呼ぶ。
「はい?」
「我々で手分けして、調合薬を入手しましょう。これなら1日で充分だ」
「私も同じ事を考えていましたよ」
「どちらが銭化札幌に向かいましょうか?」
「私が向かいましょう」
「では私は銭化大阪に向かいます。移動中、薬剤師を派遣しておきましょう」
「ありがたい。よろしく頼みますよ」
川上は安堵の表情を浮かべている。
澤口と乗間と承継は即座に病院を出た。




