No.11 ブリキの兵隊③
就業開始になるや否や承継は乗間先輩のところへ駆け寄る。
「先輩!なんとなく分かりましたよ!」
「え?何が?」
乗間は全く別の業務をしていた。後輩の顔を見て、あー、あの案件か、と思い出した。
「カラスですよ!」
後輩が途端に野鳥の名前を出すので困惑する。
「はぁ? カラス?」
「たぶん、赤間さんのブリキのおもちゃはカラスが持ってったんですよ!カラスって光る物好きですよね?」
「はぁ。。。ってブリキのおもちゃはあんまり光らないと思うけどなぁ」
「昨日のデータを見せてくださいよ!」
乗間は昨日写真を撮った3Dデータを見せる。
「ほら、この銃剣の部分、塗装がなくて光ってるじゃないですか!」
承継は自分の仮説を伝えたくてたまらない。
「まぁ、ありえなくはないけど」
「赤間さんの家に監視カメラがありましたよね?あれを見せてもらいましょう。カラスが映っているはずですよ!」
乗間は黒縁メガネを片手で調整する。
(めんどくせーけど、行ってみるか)
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赤間は快く監視カメラの映像を提供してくれた。
承継の仮説は当たっていた。
窓を開けっ放しにしている。
カラスが1体のブリキのおもちゃを咥え、飛び立つ。
飛び立った直後、何を思ったのかカラスは咥えていたおもちゃを離した。広い庭の草の茂みに落ちていく。
探すと間もなく、仲間はずれになった兵士がいた。
「これで、元どおりになりましたよ」
赤間は喜んでいる。
「では、検収を」乗間が言う。
赤間の端末から、承継のNBCを読み取り、赤間は検収ボタンを押した。
この瞬間、ビジネスネットワークを介して、銭化東京のサーバーへ情報が反映される。連携して銀行経由で会社に電銭が振り込まれた。
さらに連携し、承継の仕事の実績が反映された。
「ありがとうございました!」
承継は元気良く言う。初仕事達成の瞬間だった。
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帰りのリニアで乗間が語りだす。
「お手柄だったな。仕入れ0電銭で、金だけ貰ったようなものだ」
「ふふふ、昨日寝る前に閃いたんですよ」
「ま、あまり、浮かれるなよ。今回はライバルがいなかっただけだ」
「運も味方にしたわけですね?」
承継は調子が良い。
「検収をして、振り込まれてまでが仕事だからな」
「はい、分かりました」
即座に承継はデバイスにメモをした。
「ちょっとは成長したな。飲み物ぐれー奢ってやるよ」
2人は寄り道しながら会社へ戻る。