No.10 ブリキの兵隊②
「この2体のブリキの兵隊と同じ物を探しています。今朝、気が付いたら、何処かに消えていたのです。何をしたつもりも無いのに。ずっと、窓際に置いてただけなのに。。。」
赤間はブリキの兵隊を2人に見せた。細長い黒の帽子に赤い服装。銃剣を自分の身体と平行に立てて持っている。
「失礼ですが、写真を撮らせていただいても構いませんか?」乗間が聞く。
「ええ、構いませんよ」
乗間はデバイスを取り出し、上下左右を撮った。解析ソフトにより、瞬時に3Dデータが出力される。
「ブリキとなると、すぐには見つからないかも知れませんが、色々回ってみます」
「そうですか。ありがたいです。あれは、父の遺品のひとつでして。。。」
赤間は寂しそうな目で語る。
「父のものでなくとも、あの兵隊は3体いなければなりません。どうか、見つけ出してください」
「分かりました。余談ですが」
ポン、と承継は肩を叩かれた。
「入社したての彼が頑張りますので」
承継は元気よく、はい! と答えた。
「最後に、我々の他に参加している企業はいますか?」
「今のところは、お話は頂いてないですね」
「分かりました」
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帰りのリニアで、乗間が話しかけた。
「いいか、客先に訪問したら、とにかく情報を得る事。さっきで言えば写真だ。次に、競合している他社がいないかを確認する事、いいな」
「はい、わかりました」
「メモぐらい取れよな」
(うるせえな。。。)と思いながら、承継はデバイスにメモを記録した。
「あー、今日は就業時間を超えちゃったな。仕事は一切ダメだ。はい、帰りなさんな」
オフィスに着くや否や剥離課長が課員全員に伝える。
時間外の経済活動は法律違反である。
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自室に着き、スーツを脱ぐ。
今日は1日頑張った。
承継は気疲れしていた。
承継は趣味の動物図鑑を読む。
動物は小さな頃から好きだ。
鳥になれたらと何回思っただろうか。
ジェットボードで飛ぶ空と、鳥が見ている空は違うはずだ。
そんな事を思いながら、明日の仕事の事を考えていた。
その時、ひらめく。
なんとも言い難い、仮説。
途端に明日の朝が楽しみになった。