No.09 ブリキの兵隊①
赤間晪秀は書斎に戻る。銭化東京の都市部から少し離れた場所に、赤間はひとりで暮らしていた。
親の財産を引き継いだこの家は、ひとりで住むにはとても広すぎる。
朝食を済ませて、コレクションのある書斎でクラシックを聴きながら、ゆるりと1日を過ごそうとしていた。
かつての時代の書籍や、古いオモチャのコレクションが部屋には飾られている。
(あれ?おかしいぞ?)
赤間は違和感を感じる。
窓際に飾られていた、ブリキ製のおもちゃ、それが何やらおかしい。
(あれ? 兵士が1人足りない!)
長くて黒い帽子、赤い出で立ちのブリキの兵士はいつも3人いるはずだ。
いまは2人しかいない。
気になって仕方なかった。
部屋をくまなく探すが、どこにもない。
赤間は仕方なく、依頼を出す事にした。
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「客は指定のブリキのオモチャを探しているようだな」
乗間は腕を組みながら承継に話しかける。これが先輩風というやつか。
「先輩、ブリキってなんですか?」
「えぇ!?おまえ、ブリキを知らないの?」
乗間先輩は目を丸くする。
経済歴28年(承継が生まれる前)に起きた材料革命、スーパープラスチックの発展以降は銅や鉄の類はあまり見なくなった事は確かだ。彼の世代でブリキを知らない人間が多い事は間違いない。
「これは一旦、客のところに行った方がいいかもしれないな。俺たちじゃこのブリキのオモチャの詳細が分からん」
「行きますか!」
リニアで移動する事7分。
その後、徒歩で20分。
その家が、依頼者の家だった。
「ずいぶん、デカい家だな。。。」
乗間と承継は門扉の前に立っている。
表札には赤間と書かれていた。
よく見ると、色んな箇所にドーム型の監視カメラがついている。
警備はばっちりのようだ。
チャイムを押す。同時に2人のNBCが読み取られた。
インターホン越しに声が聞こえる。
「どうぞ、お入りください」
ごごごご、と音がなり、電子音が聞こえる。
扉が開いた。
2人は庭を抜け、玄関へ向かう。
中肉中背の男が現れた。
「遠くまで、ありがとうございます。」