第2工程 ピザストーリーは突然に(2)
「弁・償・し・ろ」
「……あ、いや……その…………」
高圧的な雰囲気の中年男性と、完全に萎縮して目の泳いでいるイツモが、向かい合って座っていた。
この経緯に至るには、先ほどの事故直後まで遡る。
※ ※ ※
通報を受けて駆けつけた警察と救急隊員によって、混乱していた事故現場は落ち着きを取り戻しつつあった。
一時は野次馬で溢れていたが、それも今はほとんど見られない。
交通の混乱を避けるためトラックとバイクはすでに撤去され、重症のドライバーは緊急搬送されていった。
そしてイツモはというと――――――
事故の原因は彼だ! と証言があり、警察署で事情徴収を受けていた。
何時間も質問と説教をされ、終わるころにはすっかり疲れ果てていた。
「いいね? 今度からはしっかり注意するように」
「……はい、すみませんでした。それで、あの――――」
ずっと気がかりだったことを、緊張気味に尋ねるイツモ。
「バイクの人って、どうなったんですか?」
「ああ、彼ね。さっき連絡があって命に別状はないみたいだよ」
無事の知らせにホッと胸をなで下ろすと、
「そっか……、よかった」
「いいわけあるかぁ」
低く威圧的な声が、突然後ろから聞こえた。
驚いて振り向くと、そこには見知らぬ男性がイツモを見下ろしている。
全体的に清潔感があり、髪や爪までキレイに整えてある中年男性。
全く心当たりのない相手に、イツモは再び緊張が走り、
「えっと……誰、ですか?」
――――ガシッ!
「え!?」
「来い」
なんの説明もなしに有無をいわせず、頭を鷲掴みにされて連行されていった。
※ ※ ※
――――そして現在。
イツモが連れてこられたのはカヤコス唯一のピザ屋である『Pizza Panic』の事務室だった。
都心の一等地にある『Pizza Panic』の店舗は、なかなか立派な店構えで、連日絶えず賑わいをみせている。
そんな人気店の事務室に、先程の男性、店長のマイドゥとイツモが話し合っていた。
内容は当然事故について。
「なんでここに連れてこられたのか、分かるよな?」
「…………」
小鹿のように震えてうつむいているイツモ。
「よくもうちの大事な従業員と、備品のバイクを台無しにしてくれたな」
嫌な汗が溢れるのに寒気がするイツモ。
一方的に静かな怒りをぶつけるマイドゥは追い打ちのようにさらに、
「弁・償・し・ろ」
――――こうして冒頭へ戻るのであった。