第1工程 ピザストーリーは突然に(1)
惑星ナンデスカイ唯一にして最大の都市、首都カヤコス。
小さな集落の呼びかけから始まったこの街は、やがて応じるように人が集まり、ついには全人口の協力のもと、百年余りで目覚ましい発展を遂げてみせた。そして今もなお、成長の途中であるこの街は、人々から『成長都市』と呼ばれている。
高層ビルの立ち並ぶ繁華街。カヤコスのメイン通りとなるこの場所では、休日の昼過ぎとあってか実に多くの人で賑わっていた。
かくいう青年イツモも、雑多に紛れたその一人。
数人の友達と目的もなくブラついている最中、とある友人が話を切り出した。
「なぁ、イツモ。この前バイトするっていってたけど、そういえばどこかいいトコ見つかったのか?」
イツモは腕を組み渋い顔で唸ると、
「ん~、どうもね、どれもしっくりこないというか……、これじゃない感じというか……」
丁度その時だった。
ビルとビルの間の狭い路地から大通りへ抜け出そうと差しかかっていた一台の配達用バイク。他の友人は立ち止ったのに、よそ見していたイツモは気付かず、そのままバイクの前へ。
「イツモ危ない!」
誰かがとっさに叫んだ。
「へ? あ……」
気付いた時にはすでに遅く、頭も真っ白で動けない。あとは衝突を待つのみという状況。
あわや大惨事だと誰もが思った。しかし瞬間、バイクはイツモの頭上を軽々と飛び越えていったのである。
そして空中で鮮やかに回転し、華麗に着地してみせた。
「「「お、おお~!」」」
通行人や目撃者から、賛辞や感嘆の声が上がる中、
「バイク危ない!」
また誰かがとっさに叫んだ。
「へ? あ……」
ドライバーが気付いた時には、猛スピードで突っ込んできたトラックに撥ねられていた。
ものすごい衝突音と共に数メートルも吹き飛ばされ、バイクは潰れるような音を立てて地面に激突。
放り出されたドライバーは勢いのまま地面を何度も転がり、やがて勢いがなくなるとその場でグッタリ動かなくなってしまった。
「「「…………」」」
すぐには理解できず、そこにいた誰もが言葉を失う。
次第に状況を飲み込んだ人々は、堰を切ったかのように悲鳴や叫喚が響き渡る。
騒然とする事故現場。全身血だらけで一人うなだれるドライバーは朦朧とする意識の中、最後の力を振り絞って大破したバイクに手を伸ばし、
「……ピ……ザ…………と……ど…け…………」
何かを呻くようにつぶやいた後、力尽きて気を失った。
伸ばした手の先、大破したにも関わらず荷台部分は無事のまま横たわる配達用バイクには、
『Pizza Panic』のロゴが刻まれていた。