表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご当地戦機 イバラギア  作者: くぴどー
第二話 初陣
8/32

2-3

「司令、それはご冗談ではなくて?」松井は明らかに動揺していた。

「ハハッ、私はこんな時に冗談を言うことはないよ。」佐久間司令は相変わらずの下衆笑を崩さない。

こんな作戦おかしすぎる!まだ意識の戻らない定を機体に乗せ、強制出撃させようというのである。

「まあ見ていたまえよ」

「そんなことを仰られても…」松井は言葉を詰まらせるばかりであった。

そういうやりとりの間にも着々と機体の方の準備が完了し、担架に乗せられた定がコックピットに乗せられた。敵は5キロ圏内まで来ている。オペレーターは緊張感のある声音で状況を報告していた。

「だったらこうしよう、もし定が目を覚まさずに一撃でも攻撃を食らえばすぐ降伏だ。悪くないだろう?」確かにそれであれば一撃必殺の何かでやられない限りは定の命は助かるだろう。これ以上突っかかってもラチがあかないので松井は大人しく食い下がることにした。

機体の電源が入れられ、定のモニタリング結果が本部のモニターに表示される。すべて正常値、もう敵は近くまで来ているというのに今までやってきた全てが無駄になんてことにはなって欲しくなかった。きっとそれは定も同じであろう。こうするしかないのか?松井は葛藤の波に揉まれていた。

やがて機体は大型の昇降機に乗せられると、急速に地上へと揚げられていったのだった。


中心部にたどり着いた斬金はコンテナパックを設置する場所を決めていた。交戦が予想される地点から適度に離れた距離と遮蔽物、それはパイロットである有馬の勘に委ねられていた。

適当に目星を付け、とっとと設置に掛かる。コンテナパックからの接続が解除されると、重い足かせが外れた気分だった。

「さて、ご当地ロボはまだ出てこないのか?」有馬は耐えかねていると、遠くの方から機械の動作音が微かに聞こえた。

「来たか!」彼は斬金に鞭を打ち、音のする方向へ進んでいったのだった。


定の乗る機体は沈黙を保ったまま、地上へと揚げられていた。外の天気は晴れ。幹線道路の交差点にその出撃口が設けられていて、その前には長く続く近代的で幅広な道路が見えた。そして地上は急遽人払いも済まされて異様な光景が広がっている。いや、それも元からかもしれない。ここは元々研究施設が密集している場所で様々な実験区画がその道沿いには存在していた。そこは機体の開発が行われた場所でもある。それ故に機体の胸部装甲にはその地区の名称、「つくば研究学園都市」の名がペイントされていた。

上空にある飛行機は恐らくメディアだろう。本来は禁止だが、佐久間司令は敢えてそれを黙認していた。その分命の保証はしないという条件付きだか、その事で怯むメディアは居なかった。茨城県民の見るテレビ画面にもその様子はリアルタイムで流されていた。


「さあやって参りました!今回の戦闘はあの愛知対茨城!まあしかし当の茨城県民の方々からは早々に諦めムードが漂っているこの戦いでございますが、未だに機体が発表されていないようですね。まさかいないなんてこともないんでしょうけど…どうなんでしょうかねぇ〜、おっとここで愛知側がついにコンテナパックを置いて中心部に向かい始めました!対する茨城側は一向に動きなし、これは本当にご当地ロボが無いのでは?或いはマシントラブルか?こんなことがあっていいのか茨城、どうした茨城!、」ナレーターはろくに戦闘が無いのでは数字が取れないと落胆し始めていた。

だが流石にそれはなかったようだ。交差点の出撃口が開いたことに安堵の表情を浮かべた。

「おっと、ここで茨城側も遂にご当地ロボを投入しました。地下から、地下からの登場です!」だがその容姿を見たナレーターはまたも落胆することとなるのであった。


定の乗る機体は地上へと揚がった。照りつける太陽に照らされたその機体は、鋼板を繋ぎ合わせた感丸出しの外装。母材そのものの灰色をしていて、その姿は何か試作機のような雰囲気を醸し出していた。肩の装甲にある「茨」の字ですら最早なんの飾り気にもなっていなかった。機体も斬金に比べると貧相なものである。大きさがそもそも違うのだ。さらに装備の数も違う。余りにも地味、テレビでその姿を見たものは皆そう思い、茨城県民は落胆の表情を浮かべた。もう終わりだ、彼等はその姿を見て直感したのだった。それは、すぐにその場に辿り着いた有馬も同じ感想であった。





(いける!…)





有馬はそう思うと同時に左肩に搭載された荷電粒子砲の銃口を向けたのだった。その時、誰もがやられた、そう思った。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ