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ご当地戦機 イバラギア  作者: くぴどー
第二話 初陣
6/32

2-1

「先輩、うちの県ってマジでやるんすか?」今は夜の8時、すっかり暗くなった外の景色に燦々と光る明かりの群れを眺めているのはこの工場で整備士として働いている整備士である。そして、その隣で一緒に眺めていたもう一人もつぶやいた。

「さあな、まぁ所詮負け戦に決まってんだろ…」

ここは茨城県。茨城が戦う、それも強豪愛知と…。このニュースはつい先ほど特報で報じられ、茨城県民もそれを知ることとなった。だがその一報を聞いた時の彼らの頭の中には未だに発表されないご当地ロボと、県民たちの間に渦巻くネガティヴな噂しか流れていなかった。

「儂は信じとるぞ、」

「おやっさん!?」固くなる二人の後ろにコーヒーを持ってやってきたのは、恐らく主任か誰かであろう。

「おやっさん、そんなにコーヒー飲んで飽きないんすか?」

「飽きんよ、と言うか飽きてたら飲まんわ!アホ!」

「確かに、」

「でもおやっさん、さっきの話に戻りますけどだって茨城はあの最下位の県ですよ?それに今だって見てくださいよ、ここは県庁所在地の水戸だっていうのに争奪戦のために何処か工事してるわけでもなく、いつもと変わらない風景が広がってるじゃあないですか。戦いなんてやるだけ無駄ってなもんですよ」確かにそこには前と変わらぬ風景が広がっている。至って平和な光景だった。

「そうなんかなあ、でも茨城が勝ったらお前らも嬉しいだろう?」

「そりゃ嬉しいに決まってますけど、」俯いたのは先輩の方だった。

「じゃあせめて、儂等だけでも信じておらんとな」老輩のその言葉には、二人も同意した。

「そう、すね...」

「勝てたら、凄いすよね...だってあの愛知ですもん」若手のその言葉を最後にそれっきり、彼らはいつもと変わらぬその風景を眺めることに専念した。


「松井司令補、只今戻りました!」ここは茨城県作戦司令本部の一室、司令本部の存在はまだ部外者には知らされていないが、確かに存在していた。そしてその慌ただしさを増した本部の中でも異様に静かなこの部屋の奥では、あの悪人面が座っていた。

「早かったじゃないか。こちらの準備の方が遅くなってしまったな。だがそれももうじき完了する。」

「ですが操縦者があの状態ではどうにも…」

「考えはある。むしろこの状況は想定内のことだ。君たちはよくやってくれたというべきだな。だがすまないが休みをくれてやるわけにもいかなくてな、君たちがこの施設の最後の一片だ。君たちがいて初めてここは機能する。活躍を期待しているよ。しかしな、とても楽しみだよ。こんなに心躍らせられたのは何年ぶりだろうか」彼は渡された報告書、および改善案書類を眺めながらさも嬉しそうな表情を浮かべた。人の言うところの下衆笑などと呼ばれもするが、それこそが彼が佐久間巌十郎たる所以である。

「司令補、貴重な意見感謝する。これで私の作戦にも実が詰まるというものだ。」書類を束ねると彼はゆっくりと席を立った。

「さあ、定の件はこれにて終了だ。我々も持ち場に着くぞ。急がねばならん。目標は開戦3時間前までに最終調整を終わらせることだ。」

「了解しました!」松井もいつしか彼につられ、下衆笑になっていたが、その余裕こそが松井自身の能力を発揮させるきっかけとなるのであった。現在時刻午後10時、そして戦いは明日の午後1時。施設や設備、システムが完成しているとはいえ、初陣である。やる事はまだたくさんだった。


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