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ご当地戦機 イバラギア  作者: くぴどー
第四話 over man
16/32

4-1

特機の出撃は思ったより時間がかかる。特に今回は遠距離パッケージの接続があるので尚更だ。定はイバラギアの操縦席で目を瞑り、静かにその時を待っていた。まだ接続はしていない。赤い非常灯に照らされたその空間は外のジメジメした暑さとは裏腹に適度に冷やされていた。自動車用のエアコンを搭載してもらえたのだ。最初は贅沢ではないかと考えもしたがやはり背に腹は変えられない、この夏の猛暑にあってそれは非常に有り難かった。定はそこで方々から聞こえる作業音に耳を澄ませ、いまどんな作業をしているのだろうかと想像していた。自分の体となる機体である。世界各地で模擬戦闘を行っていた頃はよくメカニック達と一緒に整備をしたものだ。その頃が懐かしい。

「また一緒にやりたいなあ」今はもう何から何まで全てやってもらえている。イバラギアを大勢の作業服が囲い忙しなく作業をしていて、その様を見た定はまるでレース車両みたいだなどと考えていた。

「引き起こーし、始めー!」メガホンごしの声が聞こえると、機械の動作音とともに機体が引き起こされ始める。ようやく機体が起こされ重力が下向きになると、定はイバラギアの起動準備を開始したのだった。


挿絵(By みてみん)


「しかしこの光景は壮観ですね、司令」睦は感無量といった表情だ。隣の巌十郎はいつもの下衆笑いなのは言うまでもない。司令本部の地上3階から見ると目の前で出撃準備に追われているイバラギアと同じ目線の高さになる。外をふと見ると規制線が貼られた外では見物人で溢れかえっていた。応援メッセージを書いたプレートを横目にパッケージを搭載したイバラギアの核凝結エンジンが唸りを上げた。定も恐らくこの光景を見ていることだろう。念入りに動作確認が行われた後、見物人に向けて手を上げ、親指を立てる。それを見た見物人達からはどっと歓声が上がった。その光景を一通り見て睦は、我が子のことのように喜び、涙ぐんでいた。

「睦、ひとまずご苦労様...だな」半ば呆れたように巌十郎は睦の肩を優しく叩く。どっちが定の親なのかわからない二人であった。


イバラギアは大勢の人々に見守られる中で離陸を開始し、徐々にその高度を上げて行った。京都までの道のりは長い。前回は戦う直前まで眠っていたため緊張する暇もなく戦えたが今回は移動しなければならないのでそうはいかない。見慣れた街並みが小さくなるほど心配になってきていた。そんな中で定は長い航行の間少しでも不安感を紛らわすために京都侵攻の会議の内容を反芻していた。


京都は今まで侵攻戦を行ったことがなく全ての戦闘は防衛戦であった。京都市民からはそのことに関しては大分抗議があったらしい。戦闘によって重要建築物が損壊でもしようものなら大変だからである。だがそれでも尚京都が防衛戦に拘るのには理由があった。それはバックについている国からの圧力であるようである。京都のバックについているのはドイツだと調査結果が出ている。確かに防衛戦であればサポートの充実化や固定武装である大口径レールガンを使うこともできる。戦いを有利に進めるには防衛戦を行うのは絶対条件であった。もちろんドイツもそのことは見逃さない。京都に圧力をかけ防衛戦のみを行うようにしていたのだろう。だがされる側の京都府作戦司令本部も府民との板挟みでさぞかし大変だったことだろう。

そんな京都府作戦司令本部はその双方の希望を満たすために少々強引ではあるが敵機を京都市内に絶対に入れないでその手前で殲滅する事を主眼に置いた作戦を敢行、セラミック強化弾頭を使った大口径レールガンを投入、さらにアンシエントの高度な機体制御性能をもってして、見事にその要望に応える事に成功していた。だが結局のところそのしわ寄せは全てパイロットに行ってしまっているのもまた事実であった。

今回我々茨城県が行わなければならないのはまず京都市内に入る事である。市街地に入りさえすれば敵も迂闊には攻撃できずにレールガンを使用するわけにも行かなくなる。そこでイバラギアにはLLPの電磁推進装置に一時的に効率は下がるが出力の大幅な向上が見込める電磁力仮想的増加機構(EVIM)を搭載させ、交戦が始まると同時に使用を開始する。そうすればテスト結果ではイバラギアは地上付近でも時速945kmまで加速する事ができる。その分で敵のレールガンのチャージ時間が長い事を鑑みれば、アンシエントの数発の発射の時間で市内に到達する事が可能であると予想された。だがその間に1発でも喰らえば致命的ダメージとなる。決して楽な作戦ではなかった。だがそれは京都も同じことである。


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