その2・豚とトンととんかつ
「……ねぇ豚ってさ、字面だけ見ると判らないよね。」
「ブヒィ?」
「は?」
「いやほら、豚だから豚ってのは判るけどさ。」
「だから何だよ……。」
「あぁまぁ…ふと思っただけだから、どうってわけじゃないけどさ……。」
「さいで。」
「ブヒィ。」
「気にならないの?」
「だから、じゃあどうするってんだよ……それに別に支障はないだろ?」
「うーん……あー…そうだ、ならお前は今からトンだ。 どう?」
「ブヒィ?」
「はぁ?」
「カタカナ表記のトン。 漢字のままだからイケないんだ。」
「そうか……そうか?」
「実際音はおんなじだしあんま変わんないっしょ。」
「ブヒィ。」
「な、お前もそれが良いだろ?」
「いやコイツ判ってねぇだろ…。」
「ブヒィ。」
「んー…よし、じゃあカタカナ表記にするだけでどんだけ変わるかまぁ試してみるか。」
「よしきた! これから改めて言うぞ、これからお前はトンだ。」
「ちげぇよ。 お前が変わるんだ。」
「は?」
「これからお前はハカセガワだ。 カタカナ表記になっただけでどのくらい変わるのか、体感すれば判るだろ。 判ったら教えてくれ。」
「え、ちょ…それ、カタカナ表記になっただけじゃないよね!? 音も変わってるじゃん!」
「何を言ってるんだい、ハカセガワくん。」
「いやいや……」
「ん…確かに、あんま変わんねぇかもしれないな。」
「いや大事なモノが変わってるよね? どうして見過ごせるのさ?!」
「なんだよ大事なモノって…カタカ表記にしただけだろ? あんま変わんないんじゃねぇかと言ったのお前じゃんかよ。」
「いやだから音以外のも変わってるじゃん……。」
「何言ってるんだ長谷川をハカセガワ……ほら、カタカナ表記になっただけじゃないか。」
「それ素で言ってるんですかねぇ!? 僕はh
「おい、ハカセガワ。 そろそろ授業始まるぞ、席に着け。」
「──いや待って! 先生も順応早過ぎでしょ!?」
「お前どっち表記か判るのな……それすげぇよ………。」
「ブヒィ!」
「それ以前に音が変わってるんだよ言ってるじゃないか……。」
「ほらハカセガワ、席に着けよ。」
「はぁ……何なの、このイジメ………。」
(……あっべ、昼飯とんかつ有っかなー………。)
「ブヒィ?」