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自転車部シリーズ  作者: はせがわ
高校時代編
2/9

スポーツ少女の箸休め。

 目の前の純粋な笑顔に、私は思わず視線を逸らした。

 私と違ってスポーツ万能少女、陸上部のエースであるリカちゃんが私をキラキラした目で見ている。

 こういう視線には心当たりがある。

 きっとおそらく、このあとに続く言葉は、


「ねぇ、ミノッチ。とうとう柳と付き合うことになったんだって?」


 ……やっぱり。嫌な予感が的中した。

 柳とリカちゃんは、いわゆる幼馴染という関係で。そもそも私とリカちゃんと仲良くなったのも、私が自転車部のマネージャーになってから、柳を通して紹介されたのがきっかけだ。


「………なんで、そんな話に?」


 私がそう聞けば、リカちゃんは綺麗に笑う。まるで、花が咲いたみたいに。


「だって、ミノッチ、柳についてフランスに行くって宣言したんでしょ?」


 きょとん、と本気で信じて疑わないような表情だ。


「…あのね、リカちゃん。それ、たぶん柳もそう言う意味で言ったんじゃないと思うよ」


 もちろん、私も。あんなプロポーズ紛いの言葉だけど、その意味が含まれてはいなかったと私は思う。


「嘘よ。だって、柳は絶対ミノッチのこと気にしてるって。ミノッチもとうとう、受け入れたんだと思ってたのに」

「あのね……」


 思わずため息をつくと、リカちゃんは微笑む。一見天使にも見える微笑みだ。百点満点、お見事だ。

 だけど、私には何故か悪魔の微笑みに見えてしまった。

「いいわ。ミノッチがそのつもりならそれでいい。だけど、柳って結構モテるのよ」

「知ってる」


 予想できていた言葉だったので動揺すること無く、淡々と返事をする。

いくら球技が出来ないと言っても、勉強できるしその上ルックスもそこそこだ。

短距離は苦手みたいだけど長距離では、飄々(ひょうひょう)と上位を攫っていくのでそこで注目もされていた。

 リカちゃんは私の淡々とした様子がお気に召さなかったのか、頬を膨らませて言う。


「でもね、ミノッチは柳にとって特別な存在よ。だってあの子、人に触れるのすごい嫌がるのに、ミノッチにだけはそうでもないんだもの」


 ………そう、なの?

 たしかに、私に対してはわりと普通に触れたりする。

 私の体調が悪かったら額に手を当てたり、言葉を遮るときは口元に人差し指………あ。

 あのときの真剣な柳の顔を思い出してしまって、血液が逆流するのを押さえられない。

 そんな私の様子を見て、リカちゃんは微笑んだ。


「ふーん、ミノッチも脈無しって訳じゃないんだ」

 満足そうにしながら携帯を取り出したリカちゃんに、一本とられたと思って思わず大きくため息をついた。


「もしもし、柳。ミノッチがね、柳のこと好きだって」


 ………ッ! そんなこと言ってないから!

引き続き高二の作品。

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