フードコートで下世話な話
今日も黒いです(^-^;
「ねえ! なに見てんの?」
チャラく声を掛けて来るオトコを一瞥もしないガン無視で七海はスマホをスワイプし続ける。
そう、彼女にとって……『ラーメン豊吉』の呼び出しチャイムや相棒のかおるを待つこのフードコートでの隙間時間こそが集中力を高める事のできる学習時間!
これが明日の英単語小テストの明暗を分けるのだ。
果してかおるの方がチャイムより先に現着し、チャラ男を目力で排除してこのサラサラロングヘアの優等生風美少女の前にドカッ! と座った。
「相変わらずエエ乳してるやん」
言葉遣い以外はどう見てもイケメンDKにしか見えないかおるを七海は軽くあしらう。
「そんな風にしてるとマジでオトコにしか見えないんだけど……たまにはスカート履いたら?」
「あ~ダメダメ! 一度スラックスの味を覚えたらもう、スカートには戻れんわ! 冬、めっちゃ寒いし」
「だったら、下にスパッツとかジャージ履けばいいじゃん」
「それやったら、スカートが余計になるやん」
「アンタの高校にだって、下、ジャージ履きのコは居るでしょ?!」
「そりゃ、おるよ~ でもウチは共学やから、いちいち座るんも男子の目を気にしとるわ」
「別にナニが見えるわけも無いのに?」
「そうやで。そいつらの生態を観察するので、たまにワタシが見つめてても同じ反応されるけど」
「同じ反応?」
「そ、気の無い男子には鬼対応。気のある男子には萌え対応」
「萌え対応?」
「うん、ああ……『これやられたら男子は萌えるやろな』って感じの……」
「アンタ、そんなにオトコの子マインドが分かって大丈夫? マジで『王子様症候群』になってない?」
「どやろ? 昔から男子とはよう遊んだけど、ガチで惚れるとかは無いなあ~」
「じゃあ、聞くけど女のコは?」
「ガッコウの?」
「うん」
「惚れるとかは無いよ! なんか惚れられてんのかなって思う事はあるけど」
「やっぱ、モテてるんだ!」
「んーどやろ? 高校に入ってから、周りに女子が来る事が多くはなった。七海は知ってるやろ? 中学の時は、ワタシ、ハブられてたん」
「それは違うよ! みんな、かおるの事、近寄りがたく思ってただけで……吉瀬とか、アンタの事、好きだったんだから!」
「それやったら、声掛けてくれればエエやん!」
「それはね!」と言い掛けた時にテーブルの上の『ラーメン豊吉』の呼び出しチャイムが鳴り出し、七海は席を立ちながらかおるに言葉を投げた。
「とにかく! 私が最初に声を掛けたんだからね!」
◇◇◇◇◇◇
髪をクリクリッと纏めてラーメンを啜る七海をかおるは頬杖をつきながら眺めている。
「ワタシも豚骨ラーメンにすれば良かったわぁ~」
「何にしたの?」
「ダブルチーズバーガー」
「足りる?」
「まあ、多分」
「へえ~意外と燃費いいんだね」
「それって七海の燃費が悪いんちゃう?」
とかおるは七海の双子の“マッターホルン”へ目をやる。
「ちょっと! セクハラ親父的発言はしないでよね! フタコブラクダとか……」
「自分が言うとるやん!」
とかおるが返すと七海は割り箸をラーメンのどんぶりにカツン! と当て、大きくため息をついた。
「正直、憂鬱なんだよね……」
「何が?」
「修学旅行……」
「なんで?」
「修学旅行だと、やっぱり皆とお風呂入んなきゃじゃん!」
「そやね、きっと大浴場とかで……でも、七海、女子高やん! スケベな男子はおらへんし、何が問題なん?」
「……恥ずかしいから……」
「えっ? ひょっとして下半身無毛症やったりするん?」
「違うわよ!」
「へえ~そうなんや~」
「なによ! その目!! アンタこそ! 剛毛じゃないの?!」
「な! 何を根拠に!!」
「だってアンタって! 昔から『両さん』って言われるくらい毛深いじゃん!」
「あ~!! それ、言うか!」
「言うわよ! 私は真面目に悩んでんだからね!! 毛深いのはエステとかでどうにでもなるけど……私の胸はどうにもならないんだからね!!」
「いや! それこそツルペタなワタシ、ディスってない? 七海のはおっきいし、カッコええやん!」
「だから!! 私は脱いだ時の話をしてるの!!」
「分かった! 補正しとんのやろ? そんなん、気にするなよ! ワタシみたいに補正のしようもないモンからしたら充分羨ましいハナシなんやから」
「かおるは全然分かってない!! 私からすれば! 無い方がマシに思えるの! そのくらい! ハダカがみっともないの!」
「いや、分からんわ~ 胸の事で何がそんなにみっともないん?」
七海は何か言い掛けて、止めて……また言い掛けて止めてを繰り返す。
手元の豚骨ラーメンが少し延びた様だ。
その様子にかおるはため息をついて謝った。
「さっきはふざけてゴメン。でも、やっぱ何か言いたいやろ? 今度はちゃんと聞くし……」
「絶対! 笑ったりしない?!」
「せえへんて!」
「絶対だよ! あと……かおると旅行する事あっても、私、お風呂は一人で部屋風呂入るから!」
「分かったって!」
「じゃあ、話すけど……かおる、『びっくり目玉風船』って分かる? 鳥除けの」
「ああ、銀色の……真ん中が的みたいなヤツやろ? なるほどな! 目玉風船って言うんや! それがどないしたん?」
「私の胸って!……あんな感じなの!」
「へっ?!」
一瞬、フリーズするかおるを……七海はさっきの十倍の圧で睨め付ける。
「分からないの?!」
「えっ?! うん……いや、分かった! 大丈夫! 分かったから……」
と、かおるはタジタジだ。
「でも、きっと……そこまで恥ずかしがる事では…… 無いんとちゃう?……」
「いいえ! おっぱい欲しがる赤ちゃんがビビッて泣くレベルだと思う!」
「赤ちゃんは泣くものやし、そんな事、気にせえへんよ! そもそも、男の子とイチャイチャせんと赤ちゃんはできへんし」
「イチャイチャは電気消してもらうもん! って言うか、それができないくらいだったら子供、いらない!」
「少子化に貢献してどないすんねん?!」
「そんなに言うんなら私の分もかおるが産んでよ!」
「ワタシ?! ワタシなんかカレシも出来へんよ!」
「なら、偉そうに言うな!」
「えろうスンマセンなあ~ まあ、そんなに風呂入りたないんやったら、生理になったら?」
「そんなの、真っ先に考えたわよ! そしたら生理中の女子だけ集められて順番に入るシステムなんだって!」
「そりゃ、難儀やなあ~」
こうして彼女たちのフードコートトークは尽きる事が無いのだった。
おしまい
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