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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
3章 幕開け編

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第33-2話 〜其々の生き方〜


それは恐怖からではない。

(私にも権利が——)

サングィナトーレスに連れ去られてから、意思など持ったことがない。

いや、許されなかったのだ。

それを今、この大将軍はこの敵国のスパイかも知れぬ女に——

尋ねたのだ。

一気に惹かれた。


——これが、理想の共有


これこそが、真なる強者なのか——


跪くベラはセリナの顔を仰ぎ、

「セリナ様、許されるのならここに置いていただきたく存じます。そしてこれまでの……」

罪を償いたいと言いかけ、涙をグッと堪えた。

”泣けばいい”

そんな安直な人間では無いと、自分に言い聞かせたかったからだった。

「そうか、其方への処遇は一任されておる故、追って知らせを寄越そう。それまではここを居室と使って構わん。アマリス殿も異論は御座いませんな?」

と、切り捨てるような言い方を選んだセリナ。

彼女にはまだベラへの接し方に迷いがあると見えた。


そして去り際に、

「クロエ様への感謝、忘れるなよ」

と、セリナらしからぬ余計なひと言。


しかしそれが、多くを語らずとも、ベラへの『赦し』を表しているのだった。



そしてその足でエリシアに、お目通りを願ったセリナ。

その部屋に通されるとアベラルドもそこに居た。

「わしがお邪魔なら遠慮は要りませぬぞ」

と、気さくな笑顔を見せた。

「いえ、司祭様にも」

そしてベラから得た情報と、彼女の処遇について話し出すのだった。

「うーん彼女の役目ねぇ」

決めあぐねるエリシア。

そこへ、

「特に無いのなら、わしにくれんかの?」

アベラルドが何かを所望するのは珍しいことだった。

それに驚いたセリナが、

「司祭様には、若すぎるのでは?」

と真顔のまま返すのだった。

「なぁに馬鹿な事をいいよるかのう?わしの後継者候補にと言っとるのじゃ」

笑いつつも呆れるアベラルド。

「だって、あなたが『くれ』と言うから、私もついセリナと同じ事を考えてしまったわよ」

と、半分本心だったエリシア、これまた彼女も真顔だった。


アベラルドは、熾烈な過去を背負った者ほど、エレスミア様の教えを心から受け止めるのではないか?

そしてそれこそが、ベラ自身が自分を赦せる未来を、掴めるのではないか? 

そう素直な思いを告げた。

「そしていずれは、多くの人をも救える存在になってくれようて」

と、白い髭をさするのだった。


ベラの一件はアベラルドに任すこととなったのだが、

「やはりマルセルが絡んでいる様でして……」

シリウスという名が出たことを切り出すセリナ。

「そうねえ、一度マルセルに問い正してみるしか無さそうね?もうここまで来たら」

と、エリシアがこれもアベラルドに任すと言わんばかりの顔で言う。

「ちと、荷が重いがやるしかなさそうじゃな」

恭しく答えるアベラルドに、

「お待ち下さい」

と、声を強張らせるセリナ。

顔を見合わせる二人。

「その役目、この私にお任せいただけませんでしょうか?」

と、セリナ。

それに対して、

「その理由は?」

と、つき離すエリシア。

当然だ、総帥の下したモノを覆すのだ、それなりの根拠が必要だった。

「此度の一件、到底赦される事にございません」

と前置きを置いた上で、

「お恥ずかしながら」

と話を続けるセリナ。

内容としては、先程アマリスの思いに触れ、今までの自分の傲慢さに気付いたこと。

その身を捧げても、罪滅ぼしをしようとするベラの姿に、心を洗われたこと。

それらを、相対していた両者から受けた事を踏まえ、マルセルに向き合う機会をいただきたいと言うのだった。

これまでの頭ごなしの彼女からしたら、大きな進歩と言えた。


「そう、それがあなたの意思なのね?」

優しい姉のような顔になるエリシア。

「はい、但しまだ犠牲者が増えると判断した時は、彼を幽閉致します。そのお許しだけは戴きたく存じます」

毅然と言うセリナ。

最高機関に属するマルセルを、確証無しに牢に入れるのは、民衆への心象もよくないという配慮だった。

「いいわ、この一件をアークセントリオン・ヴァルテリウスに委ねます」

と、その役職を呼ぶ度に心を震わすエリシアがいた。



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