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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
3章 幕開け編

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第31-2 〜娘に贈るもの〜


妹のリヴィアと、部下であり友でもあるクラウディア。

その二人に技量で劣っている、と勝手に思い込み逆恨みをしているセリナ。

そして、そのリヴィアをクラウディアが救出に向かった。

それもこのフェルクイエスの秩序を乱してである。


昨夜、一度は治ったものの、一夜明けたらまたこれだった。

「総帥の懐刀であるフェンガーリアが、これでは示しがつきません。今回は私が行かなければっ」

と、頑固の極みのセリナ。

しかしその主張は正しい。

だからこそ、手に余すアベラルドだった。

(さて、どうしたものかのぉ)

珍しく途方に暮れ窓の外をみるのだった。


それをよそ目に、

「今すぐ発つ。隊を十余りすぐに仕立てよ!」

と、配下に告げるセリナ。

それは四百を超える兵を引き連れて向かうと言うものだった。

『ひと』としてのアベラルドの言葉が届かない。

ましてや司祭の言葉など、アークセントリオンのセリナにとっては、そよ風程の効力も無い。

打つ手無しのアベラルドだった。


そこへ、

「いい加減にしなさい、セリナ!」

と、アベラルドの胸を撫で下ろす声がした。

はっ!?

と、焦るセリナは胸に手をあて礼を尽くした。

しかしそれに応えず、

「セリナ、無理にその立場を貫くと言うのなら、今すぐその任を解きます」

と、エリシアの厳しい言葉。

黙ったまま、エリシアを見つめるセリナ。


エリシアには、セリナの心の内が分かっていた。

四百以上の兵、それはクラウディアに対しては脅しにもならない。

しかし、抑止力にはなるだろう。

そうすればセリナは、直接クラウディアと剣を合わせずに済む。

今この時でさえ、クラウディアと戦うことを、彼女を斬るという危険を冒したくないセリナであった。

それをエリシアは手に取るように理解していた。

「総帥、それが叶わないのであれば、せめてマルセルの方だけでも」

と懇願するセリナ。

その抑えきれない、やり場のない気持ちを理解しているエリシア。


——セリナ

戸惑いが、エリシアを締め付けた。

最高指導者として、

『心に流されている』

と受け止められるようなことは言えない。

どうしたものかと思案に耽った所で、再びあの男の出番だった。


「閣下、恐れながら、この司祭アベラルドのお話をお聞き願えますか?」

と、腰を落としながら礼を尽くした。

そんなアベラルドに、

「はい、心得まして……」

と、頬を強張らせるセリナだった。

アベラルドの伝えたかったこと、それはカイルの思いだった。

「元々マルセルは心を一つに、このフェルクイエスを、その理念と共に興した同志だった。また、彼は時の流れ、人の移り変わりに飲まれたのも事実じゃ」

セリナからドアへと視線を移すアベラルド。

そして、ここはフェルクイエス。

赦しの神を祀り、その心を受け継いでいく者の集まりの場だということを、カイルは身を持って示していた。

度重なるマルセルの弱さを赦し続けて......

その思いをここで踏みにじることはさせないと言うのであった。


「しかし、その甘さがサイノゼールを」

殺した、と言いたかったセリナ。

そこへ鋭いエリシアの声が、

「甘えるなっセリナ!エレスミア様の教えを貫いたカイルの重責を、そのアークセントリオンの名を何と心得るのかっ!!」


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