第30-3話 〜新たな黒い灯火〜
疑いの消えないセヴラン。
それに応えるアダムノア、
「ああ、確かにエリシアに殺され掛けたさ、しかし彼は不死鳥の如く甦ったのだそうだ」
と、そのアダムノアの顔に目から先に振り向くセヴラン。
「どうしたセヴラン、そんな顔をして?」
その表情に顎を引くアダムノア。
「いや、だそうだとは何だ?誰に聞いたと言うのか」
そこに引っ掛かるセヴラン。
「ん?いやそうだな、実のところわしも見ておらんのよ、そのガレンの姿を」
そう打ち明けるアダムノア。
背中でアダムノアを追いやりベッドに戻るセヴランだった。
——異彩放つオルヴェウス像
青黒く光る石に包まれた祭殿。
そこに相も変わらず、世の果てを睨みつけるその風貌。
青い光がその尖った目に差し込んでいた。
そのオルヴェウスの足元では、ワンヴュエズの身体に呪文を唱える、あの銀の仮面があった。
そして、いよいよパウラの血を媒介としたオルヴェウスの召喚が、今ここに行われようとしていたのだった。
——冬将軍の到来
明日にもそれが?
と思わせぶりなそんな寒さが、そんな朝がここユトレーデルにあった。
「そんなに急がなくても?」
と、せがむリセル。
一夜明けてもやはり娘は幼いままであった。
「リセル、リアンさんを心置きなく見送って差し上げましょう」
そう諭すリヴィア。
リヴィアはリアンがここに立ち寄った本当の訳を聞かされていた。
だから不安のないように、後ろ髪を引かれることなく送り出したかったのだった。
(まさにカイルの家の娘だな)
と、その将来は戦士の嫁に相応しい、と言える女性だった。
だが、リセルの思いを二人は知らなかった。
気づくことも出来なかったといえようか?
「どうせ、これが最後になるのでしょ?だから私に会いにきたのでしょ?」
図星だった。
リアンは、一度でいいから娘に、エリーの形見に会いたかった。
そして、娘にも肉親の温かさを見せておきたかったのである。
(この子は強いのか甘えん坊なんだか分からないよ?エリー)
お前に似てな、と呟きたかったリアン。
「ああ、リセルその通りだよ、俺はお前に別れを言いに来たのさ。どうしてもやらなければいけないことがあるんだ。分かってくれ」
そう、切な思いをリセルに告げ、立ち去るリアンだった。
枯葉の上を素足で歩くリセル。
そこに跪き、天に向かい祈りを捧げる。
リセルと共に祈りを、天にそしてリアンの背中に、その思いを贈るリヴィアであった。
——そして、リセルを守る戦い
それこそが、リアンの目的であると、
『血の宿命』
がそこにあると聞かされたリヴィア。
いつか彼女にそれを告げなければいけない日が来ると、予感するリヴィアであった。
その髪はまた無風の空へと流れていくのだった。
淡い光と希望を乗せて……
その陽が夕方に傾いた頃、
——我はテオドラ
その声が、寂れた薄褐色の世界を凍りつかせていった。
やがて茜に染まるのはその空だけではないと告げるように……
完




