第30-2話 〜新たな黒い灯火〜
パウラのことだった。
彼らにとっては他人の人生など取るに足らないものなのだろう。
「はい、オルヴェウス様の力を注ぎました故、あれはもう慈しみの血ではありませぬぞ。このジョアモズの渾身の一品、いえ、渾身の一滴にございまする」
鼻を高くするジョアモズの悪い癖が出た。
「そうか、その言葉嘘だったら分かるな?」
と言い残し奥へと入って行った。
ジョアモズにとってアダムノアは特別な存在だった。大司教として敬う心さえ持っていた。
「セヴラン居るのか?セヴラン」
と、ドアを叩きそう呼んだ。
開くドア、
「何じゃこんな遅くにアダムノアよ」
と、不機嫌な男はオルヴェウス教の教皇だった。
「そう怒るな入れてくれよ。折角こんなとこまで来たのだからな」
と、部屋に押し入るアダムノアだった。
この二人は従兄弟同士だった。
本来ならエレスミアの元で赦しを説いて居たかったセヴラン。
今でもアベラルドとのやり取りの楽しさが忘れられなかった。
ヴァルグラムにサングィナトーレスを乗っ取られた日から、否応なくオルヴェウスを崇める身に落ちてしまったのである。
そして、このアダムノアはヴァルグラムの手先のような男で、従兄弟でなかったらとうに【救済】をしてやりたいほどの恨みがあった。
「で、要件とはなんだ?すぐに引き上げよアダムノアよ」
相変わらず露骨に目をひそめるセヴラン。
「まあ、そう言うなよ。いよいよわしも動くことにしたぞ。ここだけの話だがな」
と、声を抑えるアダムノア
。
話によると遂にガレンが動くと言うのだ。
ガレンとは前身サングィナトーレス騎士団のセントリオルムにして、その武勇を轟かせていたものだ。
「ほほぉ、遂にあやつがの、とうとうヴァルグラムも用済みなのじゃな?」
と白髭を引きつつも口角を上げるセヴラン。
それもそのはずである。
今のサングィナトーレスの前身団体はリアン討伐を掲げ、先日【救済】されたパパス侯爵と共に立ち上げた物だったのだ。
ヴァルグラムが私利私欲のために乗っ取り、悪行の限りを尽くしてきたのが、現行サングィナトーレスである。
「しかし、それは本当なのだろうな、ガレンはエリシアの報復に倒れたのじゃなかったのか?」




