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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
3章 幕開け編

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第29-2話 〜連携と分断〜


——ギギっ


硬い地に叩きつけられるピュチェリ。

そのままピクリとも動くことはなかった。

「ピュチェリ!」

言うが先か、泣くのが先か、おチビの頬はすでに濡れていた。

そして、そのはたき落とした黒ずくめの足に噛み付くのだった。


小さな子の歯は薄く、その布を引き裂きそして腿へと食い込むのだった。

たまらず脚を上げ、おチビの頭を叩こうとする黒ずくめ。

しかし、咄嗟に救済が目に浮かび、それを躊躇い両手でその頭を掴み引き剥がそうともがくのだった。

「何をしている、急ぎなのだぞ」

足止めに焦れる隊長。


そこへ、

「お前ら懲りずによく来たね」

その声と同時に、赤い線の入ったレイピアが黒ずくめたちの視界に姿を現すのだった。

「き、きさ……ま」

怯えることを隠し得ない黒ずくめたち。

「ベラ、クロエの目を塞いでおきなっ」

そう言い放つと、次々に黒ずくめの一団を斬り伏せていくのだった。


残るはあと四人。

そして、地べたに転がるリスの姿が目に入ったクロエ、

「ピュチェリっ」

叫ぶその顔は宛ら子を失った悪鬼。

瞬く間に口が、目が、裂け吊り上がるのだった。


そこへ、

「ああ!?」

と、咄嗟に息を漏らすベラ。

クロエの背後を取り黒ずくめが剣を振りかぶった。

目を瞑り肩を窄めるベラ。

シャっ、

赤いレイピアが背中へと突き立てられ、背後の黒ずくめを貫くのだった。

はぁあ、

と息を漏らしながら崩れ落ちる黒ずくめの喉。


そのままの姿勢で地べたのピュチェリに目をやるクロエは、

「誰だい?」

とようやく目を開けたベラに尋ねた。

隊長の傍の男を指差し、答えるベラ。

「貴様っ」

と、目尻に赤く血の涙が溜まったような魔王の如き形相。


ピュチェリをはたいた男の両膝を薙いだ。

続けて隊長の首を跳ね飛ばし、そしてその左手にいた男の喉元を引っ掻き、その血を噴水の如く噴き上げさせるのだった。

「私の大事な仲間をヤッたこと——あの世で嘆きなっ」

と、最後に敢えて活かした黒ずくめの脳天を叩き割るのだった。



動かぬピュチェリを大切そうに拾い上げる魔王クロエ。

こんな小さな友の命に——こんなにも大きな虚無感が、絶望が、、、



——ピュチェリ



漏れるその声にさえ気づかず、ただ傷心に打ちひしがれるのだった。



そこへ、


ダダダっ、


と近づく蹄の音。

「これは何をして居られるのか、この者たちは一体」

と、倒れた十五の死体を訝しむ馬上の女騎士。

「何だいあんたらは、コイツらの仲間かい」

未だ動かぬピュチェリを見つめ続けるクロエ。


そこに慌てて声を上げたのは意外にもベラだった。

「この方たちはサングィナトーレスではございません」

と、新手の騎士たちを庇うように早口に言うのだった。

そんなベラの姿に不信感を抱く女騎士は、

「お前はまさか——」

と、穿つような視線を送るのだった。


そんな雰囲気をクロエが不快に思うのは当然だった。

「アンタらを庇おうとしたこの子をそんな目で見るのかい」

ようやく顔を上げるクロエ。

その眼光に唯ならぬものを見る女騎士。

そこに膠着が生まれた。


続く平行線を嫌う女騎士が口を開いた。

「その者たちは何故斬られたのか」

と、発端に戻るのだった。

「ふっ、そこのチビをこいつらが連れ去ろうとしたのさ」

思いの外素直に答えるクロエ。

そこへ声が飛んできた。

「おチビじゃない、だから私もクロエだよ」

と、初対面の人の前で恥ずかしいとばかりにおチビが……



——クロエ


その名に戸惑う女騎士。

すると、騎馬に囲まれた馬車の扉が開き、そこから顔を覗かすものがいた。

「クロエさんっ」

耳に懐かしい女の声が飛んできた。

「おお!?アンタはパウラの……」

その女は馬車から降りると、

「はい、その節はお世話になりました」

深々とお辞儀をし、騎士の手を振り解きクロエへと駆け寄るのだった。


「やはりアマリスかぁ、済まなかった。パウラをパウラを私は……」

今にも泣き出しそうな魔王。

その手を取り、

「いいえ、クロエさんはやはり私たちにとって恩人に変わりは有りません」

と、パウラを思い出し、涙を浮かべるアマリスだった。


下馬する女騎士。

「貴女がクロエ様でしたか、先程の不躾な態度、ここに改めてお詫び申し上げます」

と、謝意を露わにするのだった。

そこへ、

「この方はマーヴェルさんといって、私を守りセレスタリアに連れて行ってくれるところだったのです」

とアマリスからは女に対する親しみさえ感じられるのだった。


「そうかフェルクイエスか、済まなかったね」

こちらも態度を改める魔王だった。

そして、今ここにアマリスがいることとなった経緯を聞かされた。

「そうだったのかい、母親のアンタまでねぇ。アイツらは何をしたいんだい」

そんな集団を嘲るような顔をでベラを見るクロエ。

ただ首を横に振るばかりのベラ。


それを横目に見るクロエは、

「今更、疑ったりなんてしないさ。それよりアンタらこのベラは要らないかい、この子こそはそのサングィナトーレスだよ」



不吉に口角を上げるクロエだった。



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