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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
3章 幕開け編

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第28-3話 〜その花を咲かせたのは〜


冷えた爪先の向きを変え、ややリアンに背を向けるリヴィア。


どう話せばより誤解を招かないか、そればかりを思い悩んだ。

(違う、そうじゃないわ)

再び爪先をリアンに向けるリヴィアは、「その生態をあなたを観察するようにと、ミリアは指示を受けていたそうです」

と、ミリアからそう聞かされていたと、そのまま話した。

「じゃあ、ミリアが近づいて来たのは」

視線を地の枯葉へと移すリアンの声。


自分の伝え方の拙さを恨むようなリヴィアだったが、

「ええ、初めはそのようでした——しかしお二人に心を許した彼女は……」

あの時の、懐かしさの中に翳りを浮かべたミリアの顔を思い返し、思いのままにと話を続けるのだった。

そして、ミリアの知らぬままに教会は、村は、サングィナトーレスに塗り替えられ……


そこまで話しリヴィアはその顔をそっと覗いた。


はあっ——


思わず口を塞ぐリヴィア。

その頬には、想像だにしなかったものが光り輝いていたのだった。



——星明かりが照らすこころ



「そうか、ミリアはずっとつらかったんだな。そんな彼女を一瞬でも疑ってしまったよ、俺は」

それに返す言葉は思い浮かばなかった。

いや、例え浮かんだとしても、リヴィアはそれを飲み込んだことであろう。


人の心を労り、涙を流す赤獅子。

そんな彼を想像だにできたであろうか?

リセルとリアンの再会する日を待ち望んだその裏側には、彼への畏怖が心の隅にはあった。

それを今は心の中で恥じ、そして悔いるリヴィアがいた。


しかし、

『そんな事はいいんだよ、気にするな』

と、告げているようなリアンの広い背中が、青い星あかりに揺らされていた。



そんな二人を見つめていたのは、星だけではなかった。

不在の月に変わり、遠い木陰に息を潜め闇に染まる瞳があった。

「見つけた!遂に辿り着いたぞ」

と、遠くの木陰からそう呟くのであった。



——リヴィア捜索


それは、慈しみの子略奪計画にも匹敵する重大事だった。

サングィナトーレスにとっても、あの無敵の大将軍セリナの弱みを握るのは願ってもないことだった。

それを、今この巨大な功績を手中に納めんとしているのだ。


カッシヤヌスが赤獅子に怯えながらも、喜ぶのは無理もなかった。



その頃、アラコールを発った馬群があった。


それは、まずフェルナスの村を目指して、この早朝に土煙を上げた。


「もう出るのか?日が出てからでも遅くはない。ささ、もうちっとわしと」

と、指を動かすヴァルグラムの手を押しのけ、

「いえ、此度ばかりは失敗できませぬ故、ガルマにもこれ以上失望されたくはありませんので」

と、立ち上がり服を着ながらそう言うテオドラだった。




——紫の雲が夜を追いやった


その冷めた地面に、これまた冷め切った遺体を検めるサングィナトーレスの回収班。

それを不安そうに見守る物資調達員。

遺体への最初の処置が、クルヴァルス計画の『オルクスナイツ』の出来を大きく左右するからであった。


そこへ、地面を叩きつける蹄の音が彼女の到来を示した。

「おお、これは想像以上に凄惨だな」

と、テオドラを持ってしてもそう言わしめるリアンの痕跡。

そこへ、

「テオドラ様、カッシヤヌス隊長よりの伝言です」

と駆け寄る隊長代理。

「そうか、カッシヤヌス殿は自ら!?あのお方らしいな」

と、遥かなユトレーデルの空を想い微笑むテオドラ。


武の者でもない彼だが、その強い心持ちがいっそ爽やかで、テオドラが敬意を向ける数少ない男でもあった。

「代理殿、道案内をお借り出来ますかな」

カッシヤヌスへの想いが、その部下にも向けられるテオドラの言葉。

「はい、この者たちをお連れください」

と、三人の調達隊員をさしだした。

隊により道標の仕方に違いがあるからだった。




——ユトレーデルを目指して


一つは、テオドラの進攻が始まったのである。


親子の、そして父の親友との温かいひと時——


それを邪視する黒い影と、そこに伸びようとする魔の手。


そしてもう一つは、それを阻止せんと躍進するコーラルレッドの疾風(かぜ)


そのすれ違いと交錯が、この人の踏み入らない異端の地に巻き起ころうとしているのだった。



ヴァルミナ平原でリアンとの合流を待つクロエは、ただただ流れゆく雲を眺めるのだった。



                          完



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