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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
3章 幕開け編

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第28-1話 〜その花を咲かせたのは〜


色濃く塗りつぶされた空に、

淡い褐色の森がふんわりと広がり。


真っ青な空から差す陽は柔らかく、

そして白い輝きへとその潤いを変えた。


そこに色を与えられた空気が、

涼しく清らかにこころを育んでいった。




あの初夏たよりが届いた頃なのに、辺り一面を枯葉が埋めていた。

自生する木々が緑に色づくこともなく——季節の移り変わりさえも……


そこには存在しなかった。



——もの悲しさ


そんなものだけがそこにあった。

一年を通して心に冬の到来を思わせるような……


そこは人の住まない地、ユトレーデル。

かつて神に深い業を閉じ込められた森。

そしてリヴィアは、そんな地に佇んでいた。


風は吹かぬはずなのに、髪がそっと揺れた——


ユトレーデルの空気は、いつも理由のない寒さを孕んでいる。



枯れた木々の間を進みながら、

(あの胎児がどんな姿に化けたのだろう)

と、心を弾ますリアンがいた。

「もうそろそろのはずだが——どこだ」

辺りを見回すも、枯れ木とパリパリになった落ち葉だけだった。

その葉っぱをカサカサと踏み鳴らすリアン。その溜まった落ち葉が、脛の辺りにまで重なっていた。

(やはり人も獣も来ないんだな)

秘境の地ユトレーデルを改めて認識したリアンであった。


そんな矢先、白く輝く人影を二つ見つけた。

白く零れ落ちる光に艶やかにそして淡く光る髪。

それを取り囲むような木々が、細くとも二人を守るように迎えうった。

そこへ気配を消すことなく歩み寄るリアン。


「は!?逃げて人よ」

と、灰色の髪が慌ててもう一つの薄金を逃がそうとした。

しかし、その手を優しく握り返し、

「大丈夫よリヴィア。あの人は……」

と薄金がリアンに視線を置いたまま更に呟いた、

「ミリアから聞いていた人と同じ、そして——夢でいつも私を呼んでくれていた人よ」

と、その柔らかい言葉の終わりに、ぽとと大粒の涙が溢れ出すのだった。


ザクザク、

と無造作に歩み続けるリアン。

いつしか白い光はそんなリアンさえも包み込み、そこに三人を淡く彩るのだった。



——ああ、お前が


白い影の顔を、姿を、まじまじと見つめるリアン。

「やあ、り……」

リアンの呼びかけを遮る声、

「あなたはリアンでしょ?お父さんなんでしょ?」

逸る心が言葉を突いた。

リアンは更に歩み寄り、

「ああ、そうだ——待たせたなリセル」

涙が先に物語っていた。



その大きな胸に飛び込むリセル。

夢に、まさに夢にまで見た瞬間が遂にやって来た。

これまで色々な人に守られて来た。しかし、肉親に会えるのは初めてであった。

いつも物静かに何かを待つようなリセル。

そんな彼女が無邪気な少女に戻った瞬間を、ともに喜ぶリヴィアの心がそっとリセルの背に手を添えた。

(やっと、やっとなのねリセル。待った甲斐があったのね)

と、自分の喜びのように微笑み涙するリヴィアだった。



そんな白い再会の後に、リアンを嬉しくも辟易させることとなった。

まず最初は、

「ミリアはとても煩かったのよ。私のことはお母さんと呼べ。しかしお前には他に母が居るとか……」

と、リセルはミリアへの不満と親しみから始まり、これまで過ごしてきた日々の想いをリアンへとぶつけるのだった。


そして、今度は身を乗り出すようにしながらリアンの手を取り、

「ねぇ、リアンはどんな暮らしをしていたの?」

とか、

「お母さんのどこが良かったの?」

など、今までの疑問が、思いが、とめどなく溢れ、そしてそれが問い詰めになっていった。


(まるで小さいエリーだな)

そう思いふっと笑うリアン。

それがまた気に入らなかったのか、口を尖らせて見せるリセル。

「リアン、私の顔がそんなにおかしいのかしら?」

と、往年のエリーを彷彿とさせる物言いだった。


そこに割って入ったのが、

「リセル、お父さんと呼ばないといけないのでは?」

と、リヴィアが優しくお姉さんをしてくれるのだった。

「……!?」

リヴィアの指摘に、我を失っていた自分に気づいたリセル。


呆気に取られたその顔は、そのあどけなさは、リアンの胸に突き刺さるものがあるのだった。



——こんな時が来るとは


過酷な少年時代には、とても想像も付かなかった未来がここにあるのだった。


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