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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
3章 幕開け編

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第27-2話 〜クロエにはクロエを〜


少女を掴む黒ずくめがジリっ、ジリっとクロエの左側へと廻る。

クロエが向きを直そうと身体を入れ替えた瞬間、黒ずくめは少女をクロエに投げ付けたのだった。

それを受け止めるクロエに、一目散に逃げ出す黒ずくめたち。

彼らは”逃げるが勝ち”を選択したのだった。


少女を抱き抱えたままのクロエは、ついでに逃げ遅れた女を一人確保した。

「大丈夫かいお嬢ちゃん?」

と、確保した女が武器などを持っていないか確認し、胸の少女に問いかけた。

すると、

「お嬢ちゃんじゃないは、私もクロエよ」

と、さっきまで囚われていたとは思えぬ気丈さでクロエにそう言い返し、手を振り解く少女のクロエ。


「へぇアンタもクロエってのかい?

じゃあアンタはおチビクロエって所かね?」

なんだか自分のミニチュアができたようで、思わずニヤける魔王クロエ。

「痛っ」

と、魔王が発した。

「おチビじゃないわ、これでもレディよ」

と、魔王を恐れず、その脛を蹴り上げるおチビクロエだった。


怯えたままの女をよそに、その二人の手を引いて歩くクロエ。

そして食材屋の前まで来ると、

「おばちゃん、こんにちは!」

おチビクロエは店の中へと飛び込んで行くのだった。

するとすぐにそのおチビを抱えてリオラが今度は飛び出して来た。

「く、く、ゴホン、え、えとあの」

言葉にならないリオラ。

「おばちゃんしっかりね、こちらはクロエ、魔王さんよ」

クロエに手を添えそう言うおチビのクロエ。

「ば、バカを言うんじゃ無いよさっきから。こんな美人さんがあの魔王な訳ないだろ?」

と、見かけに依らず案外小心のリオラ。

「でもみんな逃げて行ったよねぇー!?」

と、クロエの肩にいるピュチェリ向かい首を傾げて頷くおチビ。


それでもまだ俄かには信じられないとリオラ。

しかし、酷く怯えるその女の様子が、クロエの正体を物語っているとも言えた。

それを見て、

「ほ、本当なのかい?ええっ!?」

と、また驚きを露わにした。

「ああ、そうだがアンタらに危害を加える気は無いから安心しな。世話にもなったしね」

「いえ、いえ、お世話だなんて滅相もご、ございません、よ……ん?」

まだ落ち着きを取り戻せないリオラ。それを見て二人のクロエは大笑いした。



「さーて冗談はここまでにして、アンタ覚悟しなよ」

とクロエは、偵察の女に穴の開くような鋭い眼光を放った。

クロエは決して忘れない、パウラのような無垢な少女が命を奪われたことを。

そして、絶対に許さない。

「アンタ、五体満足に帰れると思わないことだね」

クロエの言葉と容姿に、女が震え上がるのは当然だった。

が、そこへ、

「でも安心してねお姉ちゃん、クロエはねホントは優しいの。ねーピュチェリ」

また可愛らしく首を傾げてそう言うおチビ。

そしてすっかり主導権を握られた魔王のクロエだった。


「ここに居ても仕方ない。私の宿に行きましょ。後はそこで……ね」

意味深な言葉にさらに怯える女。

しかし、おチビの肩を離れないピュチェリ。

「それじゃあ、おチビと一緒に居な」と、置いていこうとすればするで、

「キーキーチューチュー」

と泣き喚く始末だった。

それに根負けしたクロエは、おチビも連れて宿に戻って行くのだった。

「あれが本当にあの魔王なのかね?でも、あの様子ならクロエに任せれば大丈夫だね?」

少し落ち着いて来たリオラ、おチビクロエの実力の程をよく良く知る者の口調であった。



バタン、

と、部屋のドアを閉めるその音に、ビクッとする女。

「さあ、まずはアンタの……」

「ねぇお姉ちゃんお名前は何て言うの?」

と、クロエの言葉に被せ、完全に彼女のペースを乱すおチビクロエ。

「わたしは、ベラと言います」

恐る恐る魔王に答えるベラと名乗る女。

それが少し気に障ったと見え、ベラの膝をピシリとはたくおチビ。

そんな彼女の潤みかけた瞳はどこか厳しかった。

「あ、あぁゴメンなさい。クロエちゃん、今度はちゃんとお答えするからね?」

と、魔王に怯えるあまり、この少女を軽くあしらい悲しませたことを心底詫びるベラ。


そんなベラの表情や声色を受容するクロエは、

「アンタ、いやベラは何でアイツらと居るんだい?そんなにあそこが良いのかい?」

当然とも言える質問を投げた。

このベラの場合はどうなのだろうか?

「私は子供の頃に拐われまして。そして今ここに……」


彼女の話しでは、ヴァルミナに生まれ育ったらしい。

そして子供の頃、サングィナトーレスの焼き討ちに合い、生き残った彼女は連れて行かれたというのだった。

吸血鬼狩り(カサルモス)を理由に、村は焼き払われました。それで両親もそこに……」

嫌なことを思い出させたと目を伏せるクロエ。

吸血鬼狩りという言葉に思い出すものがある。

ベラの瞳には蝋燭の灯りを閉じ込めるような雫が輝いていた。


「そうかい、嫌なことを聞いちまったね、ツラい思いをしたんだろね」

と、そんなベラの言葉に疑いの色を見出せないクロエ。

いつの間にか眠りに落ちた小さなおデコを愛おしそうに撫でるベラ。

その膝にはピュチェリが座っていた。

「この子もベラをお気に入りみたいだね?女好きにも程があるよ」

と、笑うクロエに、少し遠慮するベラの笑顔。

そんなベラに好感さえもってしまったクロエは、漆黒の夜空を映す窓に彼女たちの姿を見ていた。



そして、不意に眉をひそめベラを凝視するクロエは、

「で、なんでこの子を狙ったんだい」

と、再びベラを氷の冷ややかさに突き落とすのだった。


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