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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
1章 白い綻び編

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第3-2話 〜魔王と赤獅子〜


——吸血を絶った赤獅子の瞳は、元の『銀灰』に戻っている


そう触れ回った噂が、頭によぎったからだった。


「あぁ、そうだ。お前の思ってる通りのお方さ」

と、土蜘蛛の疑念を先回りに答えるリアン。

その余裕が嘲るように緩む口元にも現れていた。

(こんな奴——相手に出来る訳がない)

と、さらに怖気づく土蜘蛛。

リアンに見えないように、そっと足を後退りさせながら逃げるチャンスを窺うのだった。


しかし積もる雪が容易にそれを告げ口した。

「雪は正直だな?お前の足跡でさえもな」

わざとその足元に目をやるリアン。

悪戯を見つけられてしまった子供のように、立ち尽くすだけの地蜘蛛。


雪は、どれだけ地蜘蛛の狩りを手伝って来たのだろうか……しかし今は、それがただの裏切り者にしか思えないのであった。

「つっ!」

と舌打ち、下から見上げるようにリアンを牽制することしかできない地蜘蛛。


そこへ、

「じゃあな!」

と、大剣レイキスを抜くことなく、素手で十分と手刀を繰り出すリアン。




——降り続く大粒の雪


まだ地に落ちていない雪の結晶が、一つまたひとつと、

赤く、そして黒く染まっていった——



その手を離すと地蜘蛛の口から、

「ぶふぉ」

と、血が溢れ出した。

それは石塔にしがみつく死体に、マントでもかけてあげるかのように、その背を赤く染めていった。



「リナー!」

心を切り裂く叫び声が木々の雪を落とし、そこに休む鳥を揺り起こした。

飛び降りる赤い声の主、飛び立つ白い鳥。

リアンを睨む真紅の瞳には見覚えがあった。


そう、山火事の夜にリアンを襲ったレイピア遣いだった。



「クロエ……逃げて、スールよ!」

我が身のことより、クロエと呼んだ赤い女を気遣う地蜘蛛のリナ。

そんな思いを他所にリアンを睨みながら、リナを抱き上げるクロエ。

「ごめんリナ、もう少し早く来ていれば」

「いいの、早く逃げ……」

最後の時までクロエを思うリナは、言いながらその手を雪に落としていった。

「大丈夫よリナ、この男のことは分かっているから」

呼吸を失ったリナに、そう答えるクロエの手には力が入りわずかに震えた。


雪の上にそっとリナを置き、冷めゆく顔をそっと見つめた。

唇を染めた血のルージュが土気色の肌と相俟って、その雪の白に映えた。


その妖艶な死化粧が、さらにクロエの怒りに火を付けた。

鋭い目をカッ!と見開き、相手を威嚇した。

だが相手はリアンだ。

そんな脅しなどどこ吹く風、

「お前があのクロエだったのか?」

と思念のまま屈託のないリアンの声。

「赤獅子の耳にまで届いているなんて光栄ねっ」

それが精一杯の皮肉だったクロエ。

しかし、彼女もまた名を馳せる吸血鬼。

言い終わるより先に、赤い剣身に金色の線が入ったレイピアが、降り頻る雪を斬りつけていくのだった。


その剣身の細さに高い声で風が鳴いた。

しなるレイピアは赤い蛇となり、リアンの喉元へと飛びかかっていった。

リアンもリアンでいつ抜いたのか? 

分からない速さで、レイキスをそれにぶつけていった。


「この間といい今日といい、何度も何度も私の剣が弾かれるとはね?」

感心というよりは、軽蔑のような口調で言うクロエ。

「まあ簡単では無いがな?魔王と呼ばれた、お前の剣を受けるのはな」

と言いつつ、初めてクロエに向かって太刀を振り下ろした。



——受けきれない


瞬時にそう見抜くクロエは後ろに飛んだ。

すぐさま次の斬撃に備え、もう一度右に飛んだ。

それを見て、

「やるなぁお前、流石だな」

と心底感心するリアン。

しかし、赤獅子に褒められるのは光栄だが、浸ってる暇などくれないのは当の赤獅子だった。


(そこが死角)

と、逃れたはずのクロエ。

ところが、そこへ信じられない速さで、大剣レイキスが振り込まれて来たのだった。

 


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