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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
3章 幕開け編

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第25-3話 〜旅立ちのかたち〜


——やはりあれはテオドラか


上腕辺りから肩へ、ゾクゾクと嫌な虫が走るようだった。

居ても立っても居られないクラウディア、悪寒だけが行き来する。


不毛の地というのが油断となり仇となったのか?

サングィナトーレスの偵察能力なら、発見されるのも容易いだろうと、今となってはそれが脳裏に……

「今すぐに行かないと!?」

焦燥がクラウディアの胸を掻き立てる。

「カエサル、後のことはお願い。そして、エリシア様への報告もおねが……」

そのクラウディアの言葉を遮るアベラルドが、

「閣下、エリシア様への釈明なら、不詳ながらこのヴェーンにお任せ頂けませんでしょうかな?」

と、クラウディアのみならず、カエサルにとっても願ってもない申し出であった。


しかし、アベラルドなら百人力!とはいかないことは承知の上だった。

無許可の外出は重罪にあたる。

ましてや戦闘の予感を孕んでいては尚更である。

アベラルドにその片棒を担がせることにもなるし、

「しかし、司祭様にお願いするのは虫が良すぎる気もしまして……」

自分を律するのがクラウディアの長所でもある。


しかし、今回ばかりは短所とも言えた。

「憚りながら閣下、リヴィア殿の生命に関わるのですぞ?そんな悠長なことを」

と嗜めるアベラルド。

「ありがとうございます。司祭様、必ず……」

必ず救ってみせる、そして必ず償うと言いたかったクラウディア。

カエサルの目を見て頷くと、直ぐに駆け出すのであった。


(私は間違っていない、今すぐ成すべきことがあるだけ)

走りながら心にそう言い聞かせるクラウディアだった。

フェルクイエスの法を犯したことなど一度たりともなかったのだ。

今は二人に後押しされ勇気を持って、その法を犯すこととなった。




——暗い夜道に駆ける白馬



辺境の地への乙女独り旅だ。

たとえそれが『鉄壁の盾』と恐れられた者であっても、想いを寄せるひととなれば事情は別だった。


彼女の無事とそして事の成就を、月を仰ぎひたすらに願うカエサルだった。


そしてそんな彼を、自身に課せられた重責を忘れ見守るアベラルドがいた。




月はもう一つの影を、彼らを怪訝に見つめる女の姿をそこに照らしていた。



その奥底に秘めた憂いも見え隠れするかのように……


                   

                          完


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