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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
2章 カサルモス編

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第24-3話 〜まっすぐな女たち〜


「……!?」

凝視する手の中、

「胎児か?これは!」

「そうだよ、エリーの子だよ。まだ生きているのさ!」

そう言う彼女の言葉を最後まで聞けたのだろうか?

つぅ〜と涙が溢れ流れた。


子だと!俺にか、俺に子だと——


例えそれが絶命していたとしても、そこにエリーとの結晶が”有った”ことに変わりはない。

急に生気を取り戻したリアン。


「よく見つけてくれたミリアありがとう。子がいた証を見れただけ嬉しかったよ」

と、感謝を伝えるリアン。

また恐れなく言い放つミリア、

「何を馬鹿いってんだい?この子は生きているよ!」

そんな口調の彼女は親戚のおばさんなのか。

「生きている?生きているのか、それは?」

「それはて何だい?大切な命だよ、エリーの子なんだよアンタとさ」

そんな強い言葉にさえ優しさが隠れていた。




——ああ、エリーまた会えたよ



透き通る、汚れのない涙がリアンの瞳に輝いた。

「しかし吸血鬼ってのは強いんだね?人間の子ならこの姿で出て来たらとっくに亡くなっているよ」

屈託が無いと言うより、遠慮が無い言葉だった。

それがミリアとの深い繋がりを表していた。

「この子は生きられるのか?」

子供がどう育つかなんて知る由もないリアン。

「ああ、育つさ。この私の生命に換えても育てて見せるさ!」

と、迫真のミリア。


(何故ここまでしてくれるのか?)

と疑問にさえ思う程だったが、この時のリアンにはまだ分からない。


昔、エリーが良く口にした、

『ミリアってホントいつもそう。真っ直ぐすぎて心が見えないの』

と言う言葉が色濃く頭に浮かんだ。

ミリアとは、ホントどこまでも底抜けに優しいひとだった。


「これからどうすんだい?もし良かったら私に預けてくれないかい?」

ミリアが提案する。

リアンと居ればやがてはエリーの二の舞になる。


それだけは避けなければ——


ミリアは、エリーの死にまだ責任を感じているのだろう。

だから、自分が人里離れた地でこの子を育てると言うのだった。

「しかし、それではアンタの人生が」

彼女にどこまでも甘える訳にはいかないリアン。

「何言ってるんだい、エリーの子だよ。そんな子と毎日居られるんだ、こんなありがたいことはないよ」

「そうか、ありがとう。ならあんたに頼らせてもらうよ」

「いつものことだよ。気にしないの」

「そうだったな、いつも……」


いつもエリーを、と言いかけ微笑みを浮かべた。

エリーとミリアがいつも、ちょっとしたことで言い合う姿、それが好きだったリアン。

そこに仲の良さが滲み出ているからだった。


「じゃ、善はなんとやらさ早速出発するよ。この子を育て上げたら、なんとかして便りを出すからね」

「ああ、そうしてくれ」

返す言葉に寂しさはなかった。



そして、見送り手を振るリアン。

それに振り返りミリアが、

「この子の名を決めてなかったねー」

と、叫んだ。



——リセルさ



「そいつの名は昔からリセルだったさ」


胸に熱いが、それでも優しく柔らかいモノが込み上げた。

「リセルだねー?いい名だねー」

そう言い残しミリアは消えて行った。


(ああ、アンタが咲かそうとした俺たちの花。こんどはその花を育ててくれ、頼む!)

姿が見えなくなってもいつまでも見守るリアンだった。



——薄い月に狼の遠吠え


それが止むと、静かな夜が押し寄せて来た。

焚き火に枝を掻き回すリアン。

懐かしさに自然と口元が緩んだ。


(結局、便りを寄越さずに逝ってしまったな)


焚べたばかりの枝がバチん、と爆ぜた。

それは『早く寝ろよ』と急かすようだった。



——ああ今寝るさ



だが、ホントにありがとなミリア。

アンタのお陰さ……



ミリアに見合う星を見つけ囁くリアンだった。



                                                     完


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