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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
2章 カサルモス編

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第24-2話 〜まっすぐな女たち〜


酔い覚ましに、回廊から庭へ出た。

そして月の泳ぐ池のほとりに腰を置くクラウディア。

石ころを一つ拾い、池に泳ぐ月に投げつけた。

パシャン、

(あんたが居なければこんな時間も無かったのに)

と、空へ帰る月の後ろ姿に八つ当たりをするのだった。

それでも、月が無くても夜はまたやって来る。

そして人はまたそこに酒に酔う。


懲りず池に戻って来た月。

再び浮かぶ月の顔にぼぉーと、あの目が滲み出てくるのだった。

「はっ!」

アルコールに溶かされ消えかけていたあの記憶が鮮明に甦る。


あの目どこかで——


するとどういう訳か、パウラのあの無表情で虚な目がそこへ重なり出した。

無意識に立ち上がるクラウディア。

(そうだ冷たい、あれはあの女の目だ!)

月に代わり、あの吊り橋の女の顔が水に浮かんだ。


——テオドラ


遂にその名が思い出された。


しかし何故、標的を置いて先に行ったんだ?

(母親が目的では無かったのか?)

それとも他に何か!?

疑念が疑念を呼び、堂々巡りをして行った。

(私は今日なぜ部隊を残して奔走したのか?)

最優先の保護対象を残してまでも……


(そうか!)

振り向き駆け出した。

その時、

「……」

足が止まった。

そして相対したそれもまた時が止まったように突っ立った。

「あの……クリス……」

と、言い淀み何かキッカケを探した。


静寂が支配する月夜の世界。

池の妖精でも現れて、この場をやり過ごしてくれないか?

そんな、ありもしないことに縋ろうとする、少女のような不壊の二柱もまた、ここに居た。


そんな時、向こうの木陰に走る人影が見えた。

(こんな遅くに?あの走り方は確か……)

先程の憂いが何故か戻って来た。

居ても立っても居られないクラウディア。

「ごめんセリナ、ちょっと失礼するわ」

と走り出すクラウディアの姿が、逃げるような違和感としてセリナの目に映ってしまった。


それは自分の嫉妬に気づいた反応なのか?それとも……

が、その懸念が心に水嵩を増し溢れ出した時、二人の船の舳先は共に、

それでも違わず並び得るのだろうか——





——東の果てユトレーデル


そこを目指しフェルナスのさらに東方、その山の中にリアンはいた。

延々と続く山谷。

かつて赤い花の蕾を抱いて、ここを歩いたであろうミリア。

その軌跡を辿るためにもリアンは歩くことを決めていた。


あの時、どんな思いで彼の地を目指したのか——



今夜もリアンは焚き火に向かい合っていた。

(ここでさえ人が居ない。あそこは何て僻地なんだ?)

150年は生きているリアンでさえ、そこに行ったことはない。

ミリアもよくそんな所を選んだモノだ?

と感心するようにあの顔を懐かしんでいた。



——焚き火の暖かさ、そこにミリアの温かさ


フェルナスで花屋を営んでいたミリア。

リアンたちのせいで、そこを失いそして追われたとも言えた。

しかし恨み辛みのひとつも口にせず、それどころかリアンの子のリセルを育ててくれた。

いわばリアンたち家族にとっての恩人だった。



——カサルモス


人による吸血鬼狩り。

それがただの狂気に変貌した夜、エリーは命を絶たれた。


見るも無惨な彼女の亡骸を、綺麗に洗ってくれたミリア。

「り、リアン!り、りリアン!」

落ち着きが取り柄のミリアが慌てふためく。

傷心止まぬリアンに反応する気力は持ち合わせがなかった。

「リアンてば、見とくれよコレ!」

と、ミリアは赤い手を見せて寄越した。

「何だコレは?」

リアンの素直な疑問。

それに、

「何だとはなんだよ?あんた、よく見なよ」

と、彼女はリアンを臆さない数少ない人間の一人だった。


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