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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
2章 カサルモス編

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第23-2話 〜取り違えた神〜


その女は先日、この近くの森を彷徨い、青白いモノに気を失った女だった。


「何じゃ年増ではないか?まったく。これではさっきのペッタンの方がまだいいわ」

聞きようによってはその女に失礼な言い方だが、或いは『では逃がしてもらえるのか?』と期待させる言い方でもあった。

ジョアモズはうーん、と思案の末に何か閃いたように女を物色しだすのだった。


その舐めるような目の動きに合わせるように、身体を捩り顔を背ける女。

「ほほほ、そんな態度をとっていられるのも今のうちじゃぞ」

半ば女を軽蔑するような視線を作りながら扉を開き、棚の上から道具を取りだし薄気味の悪い笑みを浮かべるのだった。


さすがテオドラに毛嫌いされるだけのことはある。

繋がれた女をその上、凶器を持ってして制しようとしているのだった。



そして朝を迎える頃、女は鎖に繋がれたまま、気を失っていたと言う。

いや、それは放心していたのかも知れなかった。

石の壁の冷たさもその素肌の背中には、何の感覚も既に与えてはいなかった。

逃れようとして、手枷に食い込んだその白かったはずの肌。

闇の中に静かに埋もれる、その表情を失った顔。


何れにせよその身体が、また自由に陽の光を浴びることはあるのだろうか、、、





——黒く光る像があった


人の三倍ほどの大きさはあろうか?

剥き出しになったその身体は、怒りに満ち溢れるように盛り上がった筋肉が包んでいた。

眼差しは、そこに立つ者を睨みつけ、焼き焦がさんとする威圧感が溢れ出していた。

「Orveus, sanguis maledictum, meum cor imple.」

響き渡るパイプオルガンの音色を、その祈りの呪詛の声が揺らしていった。


黒く冷たい石の台の角が白く光を跳ね返した。

そこに裸に剥かれ鎖でくくり付けられた男が寝そべっていた。


そう、あの女を置き去りに逃げ去った男である。

「な、何なんだここは?何してんだ、お、おいなぁ、おいって」

押さえつけられた頭に視界を狭められた恐怖が、男にその言葉を与えた。

冷たかった石も男の背中の生温かさを、もう記憶していた。

手足に鉄の痛み、時折吹き抜ける風の湿気臭さに咽ぶ喉。

響き渡るオルガンの音色が鳥肌を呼び、祈りの声がついに男を恐怖の淵へと追いやるのだった。


抜かれた目と口を黒く残し妖しく光る金の仮面。

その下に覗く黄色味がかった目は生々しく、その仮面とのギャップにさらなる不気味さを加えていた。

そこに呼吸さえも奪われゆく男。


ジャラ、ジャラン、


擦れる鉄の音が聞こえて来たが、頭を動かせない男にはただ恐怖を与えるのみだった。


ザっズズ、ジャラン、


見えない怖さに詰まる息——


走る胸の痛みに背中を浮かせながら、首を右へ左へと無理にでも動かすのだった。

が、ただ黒い光が支配するばかりで何も見えない。


シャン、ジャララ、


迫り来る音に怯える。

心臓の筋肉の凝縮が、更なる痛みを呼んだ。

ようやく吐き出される息、それがまた逆流するが如く肺の中へ吸い込まれ、それを圧迫して止まった。

「あ”あ”ぁ」

声にならない驚愕の音。


擦れる音と共に視界に入り込んできたのは、あの時見た黒い塊だろうか、それが女を引きずっていたのである。


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