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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
2章 カサルモス編

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第18-2話 〜道への始まり〜 


日頃から何かとカイルを引き合いに出すマルセル。

この豪傑にして皆の信任厚いカイルが、自分の部下であることを強調したいのであった。

自分に別段優れたものがない男は、他人を利用してでも自身を大きく見せたいものだった。


そんなある日、クレトは部下を引き連れ日課の偵察に出た。

雪解け水が運ぶ落ち葉が小川へと合流していった。

その鋭く冷たい水のさらさらとした声が、清らかな心持ちにさえしてくれた。


小川を渡り村の入り口に差し掛かった所で、吸血鬼と思しき一団に鉢合わせたクレト。

「おお、活のいいのがみっかったな!」

その吸血鬼の頭らしき男が言う。

(清らかなせせらぎの音も台無しか)

毒づきながらもクレトは、 

「我々はフェルクイエスの偵察隊、無用な争いは避けたいと思うのですが?」

と、周りに人がいるのを配慮し、気張ることなく伝えたのだが男は続けた、

「フェルクイエス?ああ最近巷で噂のな。しかしたった三人で名乗ったところで何にも怖くねぇよ!」

と剣を抜いてきたのだった。


応戦せざるを得ないクレトは、部下の一人を本部へ報告と増援依頼に向かわせた。

走り去ろうとする部下のその背中を、飛んできた剣が貫いたのであった。

「へへへ、一人減っちまったな?」

剣を投げた青い服の男がヘラヘラと、そう吐いた。

その薄ら笑いに激しい憎悪を抱いたクレトにもはや躊躇いは無かった。


こんな時も、周りを見回し見物人への危害が起きないか確認するクレト。

「人の死を嘲笑うものを殺しても、神はお怒りにはならないでしょう」

そう言うと、踏み込みながら剣を抜き青い服の男の胸を切り上げ、返す剣を振り下ろし頭領らしき男の額を割るのだった。


一瞬で二人を仕留めたその剣に怯えて逃げ惑う残りの三人。

それを許さないクレトは、そのうちの一人の首から背中を切った。

それを見て、

「冗談じゃねえこんな化け物!」

と、逃げようとする二人の前を塞いだクレトの部下を刺し殺した。


それに逆上したクレト、後は言うまでもなくそこには七つの体が転がっていた。

その後、二人の遺体を抱え戻り、その報告を済ませたのだった。

話を聞いたカイルは、現場の処理と一応の聴き取り調査をするため部隊を派遣した。


その直後だった。 

「困った事をしてくれたな?なんですぐ逃げなかったのだ、その者は」

出て来なくてもいい奴が出張って来た。

「今現場付近にて調査をしております。第三者からの視点も交え検討したい所存ですが?」

と、落ち着き払うカイル。

「検討なんかどうでも良い。あのお子が死んだのだぞ!ただで済むと思うのか?」

怒りよりも焦りが収まらないマルセル。 

黙ったまま立ち尽くすカイルの後ろで、自身の責任の重さに打ち拉がれるクレトが居た。


マルセルは我が見栄のために、貴族からその嫡子を預かった。

そして、カイルに手解きを受けたクレトなら、彼になら任せられると、その側に置かせたのだった。

しかし今は真逆に、

「カイルよ、お前がなまじ剣なぞ教えるからこんな失態になるのだぞ!分かっているのか?」

と、いつまでもクドクドと管を巻くように続いた。


そこへ、エリシアの助け船がようやく到着した。

コン、コン、コン、

と悠長に三つ鳴った。

そしてドアが開き、分厚い経典を手にした男が入室して来た。

「お話はお済みかな?」

と、聞くがホンネはどっちでも良かった。

「何だアベラルドか、何のようだ?」

さっきの勢いのまま不躾に放つマルセル。

「はて、ワシはそなたにそのようなあしらいを受けるのは何故じゃろの?」

この頃はまだ二人に上下の差は無かった。


何れにせよマルセルの答えなど求めないアベラルドは、

「カイル殿、エリシア様がお呼びですじゃ」

と、迎えに来たことを伝えた。

「しからば」

と、立ち去るカイルに、

「俺の話はまだ済んではおらん。どこへ行く気か?」

と凄むマルセル。


流石にこの不埒にはカイルも黙っていなかった。

強くマルセルを睨みつけ、

「いかにあなたでも、エリシア様の命に背くことは許さぬ。もし押し通すとあらば、このカイル=ヴァルテリウスが微力ながら対峙させていただくこととなろうぞ!」

と、その迫力がクレトやアベラルドの声さえも奪っていった。


そして立ち去る三人の背を見ながら、

「何が微力か!カイルのやつ今に見ておれ!」

とまだ震える手を押さえ、心にそう誓うマルセルだった。



そして、エリシアの元へアベラルドと共にやって来たカイルとクレト。

まずはカイルが口を開く、

「この度の失態を犯しました事……」

そのカイルの声を止めるエリシア。

「本当にカイル、そう思っているのかしら?」

覗き込むようなエリシアの目に、

「いいえ、本心は……」

また止めるエリシア、

「ハハハ、もうやめましょうカイル。もう限界よホホホ」

たまらず笑い出す三人だった。


目を丸くするクレト。

そこへ、

「あなたのことはカイルから良く聞いております。カイルがとても頼りにしているわ、いつもありがとうね」

思いもよらないエリシアの言葉に、クレトは込み上げるモノがあった。

「おい、まさか女の前で泣くのかクレト。そんなのは教えていないぞ」

と揶揄うカイル。

まだ合点のいかないクレトにアベラルドが、

「ふぉふぉふぉ、エリシア様はそなたに心を許されたのじゃ、さぞかし光栄な事じゃぞ」

と柔らかい爺様の声で安心させるように言った。


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