表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
2章 カサルモス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/64

第17-2話 〜新たな危惧〜


——季節はその肌に優しくなって来た頃


丘を彩った草の葉もいつしか、白髪混じりのように褐色が見え隠れしてきた。


「店のことはいいから、たまには二人で出掛けておいでよ」

と、いつもの屈託のない明るい声が、押し出してくれたのだった。

そんなミリアの曇りのない笑顔が、エリーはとても好きだった。

「ミリアってホントいつもそう。真っ直ぐすぎて心が見えないの」

そう嬉しそうに言うエリー。それがミリアに対するエリーの決まり文句だった。

彼女がどこまでもミリアを慕っているのが窺えた。


長く伸びた影を追いかけながら、二人は村の畑道を並んで歩いた。

「今日の夕焼けはなんだか少し紫色をしてるね?」

ウキウキするエリーは花屋を出てから喋るのをやめない。

リアンは毎回、

「ああ」

と、返すだけだった。

上目にリアンの顔を覗くエリーが、

「そんなに退屈なのかしら?私はこんなにも楽しみにしているのに」

揶揄うつもりで言ったのだろうが、何故か切なさが籠っていた。

「俺だって楽しみさ」

そう答えながらも、

(なんだろう?この嫌な感覚は)

と、何かの予感が頭をすり抜け、丘の上の教会を見据えるリアンだった。


そして程なくして、

「ここか?」

と、リアンたちがやって来たのは、この村に最近できた料理屋だった。

そこは飯屋と酒場を兼ね揃えたような店だった。


その外観はロッジハウス的な面持ちに、黒系のシックな色使いであった。

入り口の大きな木のドアは開いていて、その前にはローズマダーのこれまた大きな布が掛けられていた。

そのローズマダーの先には広大なホールが広がり、開け放った大きな掃き出し窓には、微かな暖かさを残した夕陽が差し込んでいた。


「うわぁ、綺麗なお店ねリアン」

感嘆に閉じることを忘れたエリーの口元。

見渡す限りの歓談の笑顔と心躍らす香りに、

「もうこんなに人がたくさん」

と、ウキウキの止まらないエリーだった。

「あそこがいいわ?」

店の者に聞かれる前に勝手に答え、そして勝手に席につくエリー。

(まるで子供だな?)

自然と微笑むリアンに、先ほどの嫌な感覚は消えていた。


そして席に着いたら着いたで、

「ねぇ、どんな料理でしょう?早く来ないかしら」

と、じっと座っていられず身を乗り出し、厨房の方を覗くエリーだった。

(いよいよ子供だな?)

遂にリアンの笑いは、微笑みだけでは済まなくなっていた。


インディゴに包まれる頃、テーブルにゆらゆらと落ちる蝋燭の灯り。

大きな梁から垂れ下がった蝋燭立てが、優しい夜風に揺られていた。


そして、いよいよ料理が運ばれて来た。

その前菜は、満面の笑みの中へと消えていき、それがなくなった頃に合わせてスープがやって来た。

その皿には、スライスしたパンと、衣を付けて炒められた貝の身が添えられていた。

ニンニクとオイルの少し焦げた香りが、なんとも食欲を掻き立てた。

その料理が来てからリアンに異変を感じたエリーは、

(やっぱりニンニクが苦手?それともまさか食べ方が……)

と心配したが、実は違っていた。


リアンもそれ程高位ではないものの、元は貴族の家柄である。幼少より食事マナーは躾けられていた。

それにリアンにニンニクは効力をなさない。

リアンの動きを止めた原因は、その添えられたパンにあった。


まだ幼い頃の食卓、いつも母はパンを食べ易い大きさに千切ってくれていた。

その度に父が、

「甘やかすな!」

と彼女を叱責した。

しかし彼女はどこ吹く風で優しく語りかけた、

「さあ、これでリアンも食べられるわね?パンは喉につかえるから気にしないでスープに漬けていいのよ」

父の家柄よりも母の家の方が格式が高い。

そんな彼女だ、彼の言葉に耳を貸さないことは日常茶飯事だった。

それに仏頂面をする父の顔は今でも鮮明に思い出せた。

それでも、この両親のやり取りに、リアンが憂鬱になることはなかった。

その二人の端々に、仲の良さが垣間見えていたからだった。


(実際そうだろう?あの厳格な父が、あんな奔放な母を見る時はいつも……)

そんなことを思い返していたリアンの顔に僅かな笑みが溢れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ