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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
2章 カサルモス編

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第15-3話 〜風に背中を押されて〜


——光りそよぐ糸の髪


そしてエリシアの声が会場に響き渡った。

「まずはこの弔いの儀が滞りなく執り行えたこと、そして死者も皆の心に包まれエレスミア様の元に辿り着けたことを感謝する」

その風格に酔いしれた群衆から壮大な拍手が沸き起こった。


その喝采を手のひらで制し、

「この葬儀の意を皆に——フェンガーリア・クラウディア=レンツ!」

そのエリシアの声が白い壁に反響した。


戸惑うクラウディアは、エリシアを、次いでセリナを見た。

当たり前だ、この壇上で話すなら最上級統括のセリナか、それに次ぐマルセル辺りであろうと考えていたからだ。


そんなクラウディアの背を、風の爽やかさが押してくれた。

「さ」

の一文字で、そっと柔らかく押すアベラルドの目は、群衆を見据えたままだった。


戸惑いつつも、エリシアに一礼して壇上、中央に立つクラウディア。

そして会場中を見渡した時、皆の視線に自分の果たすべきことを見出した。


昨日の不甲斐ない振る舞い、アベラルドに助けられ、何とか悲しみを受け入れられた、そしてまた今も……

(そうかエリシア様も私に、こんな私を……)

そして本来のクラウディアの心が戻って来たのだった。

顔を見合わせるエリシアとアベラルドに、見過ごしてしまうような一瞬の笑みが溢れた。


貧弱にさえ見えたクラウディアの肩に、双月としての心が宿った。

会場中の全員にそれが伝わったのか、同じく姿勢を正すのだった。



「まずはエリシア様と同じく、そしてここにおらせられる方々を代表して改めて礼を言う」

甦った強い眼光に群衆は吸い込まれていった。

そして、この少女の素性をはっきりと話した上で、この葬儀の意義を皆に伝えた。


そして、黙ったまま会場中を見渡したのち、

「我らが戴く理想の上には如何なる犠牲もあってはならぬ。理想は人のためにあり、人が理想のためにあるのでは無い!そしてここに、神エレスミア様のその血を引く“慈しみの子”を手にかける者には、このクラウディア=レンツが崇高なフェルクイエスの正義の元に鉄槌を下さんことを、ここに宣言する!!」

と、拳を天に高々と突き上げた。


わぁーと湧き上がる歓声と拍手の渦に、拳を上げ飛び跳ねる者さえいた。

そして、会場の周りを囲んだ騎士たちも剣を天に高々と差し上げ、

「双月、双月」

と大きな声で繰り返し、繰り返し、彼女を称えた。


クラウディアのその背中を見守る翠玉の瞳からは熱い涙が溢れ落ちていた。

総帥としてだけではなく、姉代わりとしても、彼女の輝かしい行く末を思い浮かべ喜びに浸っていた。



——やがて時を背負って行くであろうその姿を


白い雲もその空から思い描いていたことであろう。




清らかな風の輝きと共に——




                                                    完


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