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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
2章 カサルモス編

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第15-1話 〜風に背中を押されて〜


——雲のない澄み渡る空



あの青色の向こうには何があるのだろう?

あの空は、どの辺りから青く染まり始めているのだろう?


久しぶりの独り歩きだ、頭の中に何度も思案がふつふつと浮かび消え、また別の取るに足らない疑問が湧いてくる。



ここはノルヴィエルから東へ、フェルナスに続く山の中の小径だった。

木から垂れ下がる緑を、手のひらでサラサラと撫でるようにして歩いた。

なぜかは分からないが、子供の頃のようにしてみたかった。


すると、獣道さえない山道の草陰から、

「おい、いい所に来たな、生きて通りたければ全部置いて行きな」

と、脅されたのは、こともあろうかリアンであった。

携える大剣が一番の目当てらしく、ニヤついた目がもう勘定をしていた。

(ふ、本当に子供の頃のようだな)

と、奴隷時代にやはり山賊に襲われたことを思い出して鼻で笑うリアン。


リアンの余裕さに、やや怖気付く山賊。

そこへ、ガサゴソと草を小枝を掻き分け集まる十数人の男たち。

それでもまだ余裕が、リアンの中から逃げ出すことはなかった。


仲間の登場に図に乗ったのか、

「ほら早くしねぇともっと集まってくるぜ。おらっちの分け前が減っちまうだろ」

それに薄ら笑いするその男たち。

「そうか?ついでだ待ってやるよ」

リアンはそう言うと、幹の根本で二本に別れた枝を揺籠に見たて、身体を預け寝そべってしまった。

「こ、こいつ!」

と、その態度に怒りリアンに迫る者がいた。

しかし、

「どうした仲間を早く呼べよ」

怠そうに片目だけを開け、そう言うリアンに、勢いを削がれる男。


そこへ更に五人が道の下の方から上がってきた。

「何やってるんだ騒々しい、他の獲物が逃げちまう」

と、リアンに手を焼く様子を見て低く喚いた。

仲間に見下されるのは山賊稼業に響くと、手前の男が寝ているリアンに躊躇わず切り込んだ。

「ふっ」

相変わらず鼻で笑い、顔先まで振り下ろされた剣の頬面を、手のひらで叩くリアン。

それに呆気に取られた総勢十九人は、あっという間に草むらへと顔を埋めていった。

それぞれ何処かしらの骨を折られて、泣き喚くこととなるのだった。


「まだこれが欲しいか?」

柄に手を掛け言い放つリアン。

怯える素振りを見せるのがやっとの山賊たち。

「気をつけて帰れよ」

とその場を後にするリアンだった。


動けない状態で置いて行かれた彼等は、命が助かっただけマシと感謝をしなければいけなかった。

リアンにではなく、そう彼を変えたものにである。


リアンが彼らを殺さず生かしたのには訳があった。

『俺のようにいつかは変われる』

と、そう思ったからだ。

だが、彼らが山賊を続ければ確実に人々は苦しむ。

だから彼らを二度と山賊の出来ない身体に作り変えたのだった。



そんなリアンの居た山の木々を伝い飛ぶ影があった。

恐ろしい速さで、かなりの跳躍力で山の木々を渡った。

どうやら空を飛べない部類の吸血鬼のようだった。


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