表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
2章 カサルモス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/60

第14-2話 〜笑顔の形〜


——カツカツカツ


と豪胆な靴音。

それが聞こえ、少し怯え気味になる司祭。

その靴音の主が誰だか分かりきっていたからだ。

そう、テオドラである。

そして部屋に入る前からその声は、大きく響いてきた。


「私の大事な部下を軽々しく扱ってくれるなぁジョアモズよ」

そして無遠慮に入室しソファに、でんっと腰を下ろし、そしてテーブルに靴ごと足を乗せるのだった。


「な、何を言うほんの冗談じゃ、のお、いつものあれよ、なぁ?」

当の遣いに言ったところで返事をする訳もない。

「どうせ今夜の楽しみがなくなってこの者に当たっていたのだろう」

皮肉に笑う冷たい目がそう言った。

「もうよい、さあ始めるぞ血が台無しになるわい」

この好色も真っ直ぐに刺すテオドラには勝てぬと見え、そそくさと引っ込んでしまった。



テオドラの去り際の、

「邪魔したな」

の一言が、どこかこの護衛たちを憐れむように聞こえたのは、思い過ごしだったのだろうか。



日に焼けて薄くなったクリムゾンのカーテンがほんの少しだけ揺れた。

隙間に見え隠れする指を、テオドラに見られているとは、つゆ知らずのジョアモズだった。





——グゥワーン、グゥワーン



とセレスタリア中に響きわたる銅羅の音。

木々の間から無数の鳥たちが、一斉に飛び去っていった。



——パァーパパラパー



管楽隊の盛大な演奏と、観衆の割れんばかりの歓声に出迎えられ、その一団は帰還した。


「アークセントリオン閣下、並びにフェンガーリア閣下の御帰還にござーい!」


グゥワーン、グゥワーン。


後に続く騎士たちの最後尾が神殿広場に入っても、その拍手と歓声が止むことはなかった。


観衆に向かい、高く大きく手を振るセリナへと、その喝采はさらに盛大なものとなった。

しかし、その横にそれとは対照的に、薄雲に覆われた太陽のように、どこか浮かない表情のクラウディアの姿は、その歓声の中に埋もれていくのであった。



——ブゥアァァン


と、最後に銅羅がひときわ大きな音を鳴らし響き渡った。

すると一同は静まり返り、そこに跪くのだった。

そして、優雅な足取りで壇上に立つ総帥エリシアの姿があった。

そのエリシアの胸に真っ直ぐに眼差しを向け、 

「セリナ=ヴァルテリウスが只今ここに帰還致した事をご報告申し上げます」

その身体からは想像もつかない程の、太く大きな声で帰還の辞を述べた。

その凜とした振る舞いも相まって、さすがはと観衆から再び大きな拍手が上がった。



無事の生還の祝辞が終わると、その中枢たちは礼拝堂で祈りを済ませた後、回廊の先の宴席へと向かった。

長いテーブルの奥に立ったエリシアが皆をひとこと労い、そして席へと促した。


上座のエリシアから見て、

右手前からセリナ、クラウディア、カエサルと続き、

左手前からはマルセル、アベラルド、そしてグランヴェルと席に着いた。


何かを訝しむ様子のクラウディア。

(食器が置いてあるのに?)

何故か空席があり、疑問に思ったのだ。


それに気づいたエリシアが、

「それを」

と、給仕に下げるように伝え、

「サイノゼールも来る予定でしたが、急な病みたいで……祝いの席に申し訳ないのだけれど」

とその訳を話した。


宴が進むにつれ、

「奴らに先を越されたのは痛かったが、閣下たちが無事でなによりですな」

と相変わらず含むようなマルセルが場を乱す。


そんなマルセルの無神経さに、さらに落ち込むかのクラウディア。

「クラウディアどうしたの浮かない顔をして、戻ってからまだ一度もあなたの笑顔を見ていないのだけれど?」

心配が言葉になるエリシア。



ただ俯き嘆くようなクラウディアだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ