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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
1章 白い綻び編

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第12-1話 〜憎しみの向こう側へ〜


「リヴィア、上達したな?大したもんだ」

そう言いながら、まだ九つのリヴィアを抱き上げ微笑むカイル。


——なぜ、私じゃないの


堪えようとしても、涙が溢れ出す。

木々の枝から漏れる陽の光が、二人の姿をそっと包み込み、ポートレートのように白く滲んでいった。


少なくともまだしも十五歳のセリナからはそう見えていた。





クラウディアと襲撃者の対の舞を見つめるセリナ、

(あれは本当にあの舞なのか——やはり私の思い過ごしでは)

と、まだ迷いがあった。

それでもクラウディアにはリヴィアと共に過ごした日々がある。

リヴィアから施しを受けていたことも考えられるし、父から直に教わることもできたかもしれない。



——父から直接


そう頭によぎった刹那、それが起こった。


左足を後ろに大きく引き、腰を深く落とす細剣使い。

その間が相手の攻撃を誘い静まり返る。

誘いに乗らないクラウディア、しかしほんの一瞬だけ躊躇ってしまった。

それを見逃さない細剣が横一文字に打ち込まれていった。

縦に構えたクラウディアの剣がそれを受け止めた。



——その瞬間


信じられない速さで、細剣使いが回り出したのであった。

細剣はそこに残し、回る度に手刀、膝、そして肘がと、あらゆる角度からの当身が飛んで来るのであった。

その度、その剣をまた押し込みながら、別のまた更に別の部位を拳が、蹴りが襲った。


クラウディアは、押し込められる剣を受け止めたまま動けず、身体のあちこちを打ちひしがれていった。

どさっと、ついにクラウディアが後ろに跳ね飛ばされてしまった。


一部始終を見ていたセリナに声はなく、瞳だけが強く見開かれていた。

(あれはアクアス・セレオではないか)

それは鳥肌だったろうか、ゾワゾワとした不快感がセリナの頭から足へ走った。


天才リヴィアでさえ身につけられなかった技。

何度も何度も根気よく父が手本としてやっていたのを見ていた、あの技をこの女が!?



——ピィーン


と、ある物がニューロンを駆け巡った。

「はっ、そうかこの女は父から……」

認めたくは無かったが、セリナの勘が血がそう告げていた。


「あいつが——」

小さく震えるその口元。その震えはついに全身へと蔓延していった。

(あの偉大な父を?優しかった父を……)



——腹の底から湧き起こる衝動


「貴様は、クロエかぁー!」

口からついて出た言葉より先に細剣使いに斬り掛かっていった。

シャっ!

受ける止める細剣を押し除けてなお、勢いの止まらないその切先は、乾いた地面を叩き割った。

「クロエっ、お前だけは殺すっ!」

力が籠り爆発する言葉が涙を誘う。

「セリナなの?」

戦いの最中に疑問を持つ程、危うい物はない。その隙が、クロエほどの猛者を吹き飛ばした。

「はぁはぁ、まるであなたの方が魔王ね、セリナ……」

セリナだとまだ確信は無かったが、そんな感じがして叔母としての親しみが滲み出たクロエ。


しかしそんなことで収まらないセリナ。

「やはりそうか!?父を……貴様は!」

父カイルの温かい胸を、追い求めた背を、それが沸々と込み上げてセリナの感情を更に昂らせた。


剣を地面から引き抜き、その勢いに任せクロエに叩きつける。

僅かに剣を傾けてそれを受け流すクロエは、くるりと左に回転しながら回り込みセリナの脇腹に肘を当てる。


(あれがクロエ様?サングィナトーレスではなかった)

総帥の妹を殺そうと刃を向けたことに、罪悪感を覚えたクラウディア。

しかし、目の前でセリナが攻撃を受ければ、例え総帥の身内であろうとも——


よろけるセリナの肩を抱き止め、それを軸に飛び上がりざまに蹴りを放ったクラウディア。

それがクロエの左肩を強く押し飛ばした。

さしものクロエも、

「うっ」

と無意識に口から漏らした。


「いやぁっ!」

と気合が怒号と化す。

体勢を立て直したセリナが、回転を付けて力一杯に剣を叩きつけた。

それを受けてまた後方へ吹き飛ぶクロエ。

(さすがは兄さん仕込みの剣だ!)

小柄な女の振るう剣とは思えない豪胆さがあった。

そこに懐かしささえ見つけたクロエも、若かりし頃はよく、カイルに叩き込まれた物だった。


二柱の猛攻に、これまでいいとこなしのクロエ。

それでも何故か心が浮き立つ。

そして何とか形成を逆転しなくては?


だが、クロエの思考はそうでは無かった。

(このまま、セリナに仇を打たせてやるのも悪くは無いか……)



——何度目かの風が吹いた


今度は冷たい風だった。

足元の方から、

ヒューと、音がするように通り過ぎて行った。

(だけど、姉さんとこの子の間に亀裂を作る訳にも……)

かつて魔王と呼ばれたクロエも姪の行く末は案じる。

いや、それはパウラが、パウラとの短かった日常の他愛もない会話が、クロエを真の人へと変えていったのかも知れない。


何かに耽るようなクロエの隙を見逃さない二柱。

そこに三本の剣がクロエを襲った。



——ああ!?兄さん、今……いくよ



素直にそう思うクロエだった。



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