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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
1章 白い綻び編

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第10-3話 〜衝突の予感〜


その難しい顔を見て、しくじったか?と自責するカエサル。

この後のリアンの反応に依っては、自部隊の全滅、そしてクラウディアの死さえ起こり得るのだ。

彼の焦りが苛立ちを呼んだ。



——走りながらも止まる時間


そして、カエサルの背中に冷たい汗が一筋——流れた。


ジッとリアンを見据えるカエサル。


すると、

「おお、ジャックのかぁ、あの時の娘だな」

先ほどの険しい顔とは違い、明るい声のリアン。


ジャックという言葉に疑問を残すカエサルは、リアンに入れ替わり難しい顔をするのだった。

しかし、その顔に勘違いをしたのか、

「安心しろ、さっきの奴らは殺しちゃいない」

と、不安を解消してやろうとするリアン。


それは、以前カイルの部下を殺した事を後悔している証だろう。

この面々がフェルクイエスだと分かり、生かしたのだった。



その頃、

あの廃屋敷に到着したクロエ。


無造作に瓦礫を踏み砕くクロエに、その鳴き声は届かない。

垂れ下がる木片を薙ぎ払い、行手を遮る壁は容赦なく蹴り倒して行った。

心の中の不安をぶちまけるように、廃れた家屋に当たり散らしていくのだった。


幾つ目かの壁を蹴り破った。

それになんとか乗っかっていた二階の壁は、屋根を支え切れず崩れ落ちた。


ガッシャーン——


長い間貯められた煤や埃が白い煙となってクロエの目を塞いだ。

しかし前が見えないことなど何の障害でも無いと突き進むクロエ。

そこに俄かに生暖かい風が、白い煙を運び去るのだった。



開けた視界の先には、自らの爪を首に刺した、獣のような男が死んでいた。

そして、その横にはガイサルが倒れているのだった。


「おい、ガイサル、ガイサル」

クロエは夢中で揺すった。

今ここでパウラの手掛かりはこの少年しかいない。

微かに息が漏れた。

蚊の羽音ほどの小さな吐息もクロエは聞き逃さなかった。


さらに揺らし、

「起きろガイサル!何があったパウラはどうした」

揺らす手を緩めない、この少年の苦しみなど気にしてられない。

「クロエさん……」

瀕死のそれがただ寝ぼけた顔に見えたのは、クロエがこの少年に感心がないからか、それともまだ残った煤煙のせいなのか——



「パウラは……サングィナ、トぉレスに……」

なんとか声にするガイサル。

「なんだって!?で」

で、生きているのか?と聞きたかったクロエは、言葉に不吉さを感じ躊躇った。


そして、クロエには伏せておきたい事があるガイサルの沈黙。


しかし黙っていても、その目に自白を強要するクロエ。

「お前はまさか——あいつらと」

核心に迫るようなクロエの六感。

「ぼ、僕を……たす、けてよ、クロエさん」

と、クロエの脚にしがみつこうとするガイサル。

「触るんじゃないよっ、私は仲間を売る奴が許せないんだ」

「僕に、も、生活が……」

「煩いってんだよ」

ガイサルの手を払いのけるクロエ。

「で、どこへ連れてかれたんだい、パウラは」

「引き、上げるとしか……」

「そう」

とだけ発したクロエは立ち去ろうとした。

その足を掴み、

「僕を……助けて、くだ……」

ガイサルを視界に留めるのを拒絶したクロエ。


多くの人を殺して来たクロエは、極限の中で、他人よりも自分の助けを乞う者を最も蔑んだ。

(ましてやコイツはこの期に及んでパウラの救いどころか、まだ自分を)


怒りに任せて抜いたレイピアが、その手を叩き切った。

痛みに悲鳴を上げるガイサルに、

「仲間を、パウラを売ったお前に生きる資格なんてないんだよ」

それでも縋り付くガイサルの頬を蹴り飛ばした。


ガイサルを蔑んだ目はもうそこに無かった。

遠く遠く空の彼方を見つめるような眼差しは、こんな男に騙されてしまったパウラの無垢な心を思い、嘆き悲しんでいるのだった。


生温さの中に血の匂いを持った風は、クロエの心をさらに掻き乱していった。



クロエは屋敷の裏手へと出た。

(アイツらが向かったのはあっちか)

微かに残る蹄の跡を追い、飛び立つクロエだった。




無垢な少女の無事を願い必死に追い求めるリアンとクロエ。



安らぎを注がれ、

白い花に満ち溢れていたその心は——



またしても、

赤い狂気へと染まって行くのだった——




                                                   完


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