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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
1章 白い綻び編

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第9-2話 〜密接と乖離〜


「むむむ、しかしおかしいな」

そんな謝罪では収まらないシリウス。

「何がでございましょうか?」

「小隊まで送るほどの大事、それなのにそなたもあの小娘もここに残るとはちと解せんな」

誰かに聞かれていないと、周りを確認しながらそう言うマルセル。

呆れるほど小さな男だった。



不意に、

「マルセルっ」

と厳しい声が飛び、慌てて振り返った。

そこへ、

「余りに急なことでな、私の準備が遅れた。ただそれだけだ」

と軽蔑する目で、マルセルを威圧するものがいた。


「セリナ——」

と、ホッとしたようなクラウディア。

「そうでしたか、大将軍。事情も知らず出しゃばった真似をお許しください」

マルセルのしたたかな返しがセリナの癇に触る。

「ふっ、目に映れば大将軍、映らねば小娘——か」

それを聞き、悔しさと愚かさとが入り混じった感覚にマルセルの額が油で光り出した。



役職でこそセリナは総帥エリシアの次に位置し、マルセルよりも上の地位に就く。

が、年で言えば父娘以上の差である。

そんな小娘に軽くあしらわれて、この男が黙って引き下がるとも思えなかった。

立ち去るマルセルの背が消えるのを待たず、

「いいの?セリナ、シリウスは……」

クラウディアが気遣う。

立場で言えばクラウディアはセリナよりも二つほど下るが、二人にはそれを越える友情と信頼があった。

「いいわよ、どうせエリシア様に何か言うことしかできないのだから。情けない男」

と、嘲るセリナだったが、取るに足らぬとばかりに話題を変える二人であった。




急ぐような踵の音が、廊下に響いた。

(あのガキめっ、カイルの秘蔵っ子だからと調子に乗りやがって、エリシアもあんなのをなんで)

やはりグツグツと煮えたぎっていたのだった。

この手の男は根に持つとしつこい。

いや、ねちっこい。


そして、マルセルは司祭のアベラルドの所までやって来た。

「アベラルド、開けよ!」

エリシアの居る至聖所へ通せと言うのだが乱暴すぎた。

「はて、わしはいつからハイ・コンシリウスの部下になったのかな」

アベラルドが反撃する。

さっきセリナでしくじったばかりだ、

「も、申し訳無い。少し慌ててしまった。セレスティアールよ扉をお開けくだされ」

瞑っていた両目の左側だけを開け、マルセルを見るアベラルド。

何か企んでいそうだ?とは思ったが、マルセルをここに留めておく権利は、アベラルドには無い。

仕方なく扉を開けてマルセルを送り出すのだった。



至聖所に入ると敢えて大きな声で、

「ハイ・コンシリウス=マルセルが総帥エリシア様にご意見仕りたく参りました」

マルセルのこの大仰しさも嫌いだった。

(このまま祈りを続けていようかしら)

と、この男が諦めて帰るのを願うエリシア。

しかし彼女にも立場があり、放置する訳にいもいかないのであった。



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