第8-2話 〜溢れゆく白い花〜
「ねぇ、リアンっ」
普段より強いクロエの呼びかけには、焦りの中に苛立ちが見え隠れしていた。
「すまない、考え事をしていた」
嘘がつけないのはリアンの生まれ持っての性格だ。
そしてクロエの提案で、二手に分かれて探す事にしたのだが、道ゆく人や脇で果物を売る人など、誰からも何の情報も得られなかった。
そして、お互い手掛かりのないまま、どちらからともなく先ほどの路地に戻ってきた。
焦るリアン。
エリーを思い起こしたことで、より一層不安が掻き立てられた。
ジリジリと苛立ちの波に煮えたぎるクロエの血は、彼女から理性を奪っていくのだった。
淡い金色の瞳が次第に、赤く赤くその色を変え、その身まで鋭い殺気の刃に包まれていった。
こんな時「落ち着け!」と言うのは火に油だ。
通行人に被害さえ出なければいい、
(もしも剣を抜きたければ、俺の血を流させよう)
そう心に決めるリアンだった。
そんな彼の冷静さに、いっそ怒りが込み上げるクロエ。
しかし、それがクロエを宥め沈めることになった。
(そうねこんな時に、怒りに任せている時じゃない!)
そう、今やクロエの心にはパウラへの想いが満ち溢れていたからである。
人は冷静さを取り戻した時、そこに光明を得るものだった。
「あっ!?あの娘、パウラの友達のパン屋の——」
クロエが指差す先には配達の帰りか、パンの入っていたであろう籠を、振りながら歩く少女がいた。
とっさに駆け寄るクロエ。
その勢いに怯え腰を引く少女。
「ねぇ、パウラを見なかった?」
と怖い声がした。
それでもその声は耳に残っていたが、いつもパウラに話しかけていた、その声はもっと優しかった。
(人違いか)
と思いながら見上げる少女。
「は、クロエさん!?」
「ねぇ、会ってない、こっちに来たと思うんだけど?」
「え、パウラならあの鞄屋さんの道をあっちに行きましたけど、行き先までは……」
「そう、何か言ってなかった?何でもいいわ」
「……あ、ガイサルが!?あの角から黒い服の人たちがこっちを見ていて……」
それにガイサルが凄く怯えた感じでパウラを急かしていたと言う。
不意に背筋を駆け抜ける悪寒に、リアンに鋭く視線を送るクロエ。
少女の顔を見ることなく、
「ありがとう」
と残し走り出すクロエが、指で行き先を差し示した。
光を削り取られた世界に、話しかけて来そうな壁のシミ。
カビ臭さがそう思わせるのか、今にも動き出しそうなシミに怯え、後ろを振り返るパウラ。
「どこまで行くの?こんなとこに来るなんて聞いてないもん」
幼馴染のガイサルでも、怒ったパウラを見たのは初めてだ。
「ごめんよ、もうすぐそこだから……」
ビクッ!
として動きを止めるパウラ。
彼女のお尻から頸に、ゾワゾワっとしたものを走らせるものがあったからだ。
それは、壁を突き破るかのような声だった。
「お前はそんなだからダメなんだ、使えない男だな」
明けましておめでとうございます。
新年早々に、重く暗い話からのスタートで申し訳ありませんが、今年も宜しくお願い致します。
みなさんも、私も暗く重いのは、この物語の中だけにして、実生活は明るく楽しく健康な毎日が過ごせますように——
飲み過ぎる私の胃が1番ヤバっ(^_^;)




