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落ちた紅の花びら 〜A petal named Liselle〜  作者: マメ
1章 白い綻び編

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第7-1話 〜ふたつの旅立ち〜



——白銀の輝き



その浄化の翼が、

 正義と、気品を示し、


   光に柔らかく包まれた——



そんな山脈の霧の中に、美しい神殿があった。

その神殿の主柱の群れをすり抜けた先には、これまた大きな石像が建っていた。



その清楚な容貌は——

    人々の心を洗い清め


その優雅に広げた羽は——

    人々を慈悲で包み込み


その胸に当てられた手は——

    人々へ赦しを差し示した


それはフェルクイエスの象徴、

エレスミアの御神体がそこにあった。




冷たい霧に薄れる森の奥、そこに流れ星のように光る影。

それは神殿の中へと吸い込まれて行った。

その影を迎え入れるように美しく刻まれた花の彫刻の扉が、グググっと、重そうに開いていった。


くぐり抜けた先に広がる祭殿の、

右手の壁には、女性に抱かれ微笑む子供と、それを包む花々。

左手の壁には、魔に剣を向ける戦士たちと、それを守る天女。

決して豪奢ではないが、それは見るものを圧倒する精巧さと美しさがあった。


そしてその奥に立っていた二つの人影。

それに向かい、

「ご報告に只今戻りました」

と言いながら胸に手を当てる白い騎士。

すると影のうち、腰に細剣を二振りさした方が柔らかな声で、

「カエサル、長い道のりご苦労様でした。報告をお願いします」

と、静粛な声が労い、そして促した。

「は、よろしいのですか?レンツ閣下」

と、もう一つの影に目をやるカエサル。


しかし、気にするのはそこでは無い、とばかりにさっきの影が、

「私はこれでも女でしてよ。そのような呼び方は少なくとも、今はお辞めになっていただけますか?」

と、カエサルの鼻の辺りに指をクルクルとやるのだった。

「承知いたしました、双月閣下」



——双月


二振りの細剣を流れるように速く、

そして鋭く振るう『双月斬』それを使い熟す、

『親衛隊総隊長フェンガーリア・クラウディア=レンツ』

彼女に与えられた二つ名だった。



「もう、双月閣下も嫌!作戦行動中みたいにフェンでもクラウディアでも良いわよ」

「は、ではクラウディア様、お気を確かに」

と、そんなクラウディアに可笑しさと愛おしさを抱くカエサル。

彼は、親衛隊の第一分隊長を任される程の人物で、中々の実力者でもあった。



ここまでの”お遊び”を待ってから、ようやくもう一つの影が振り向き、灯りの元へと出て来た。

こちらはよく見ると小脇に聖典を携えていた。

「ふぉふぉふぉ、ワシをどなたかと勘違いされていたようですな、カエサル殿」

親しみを込めて、その老人が言う。

「おぉ、これは失礼しました。ヴェーン司祭様でおられましたか」

「ワシもアベラルドでいいですぞ」

茶化すのが好きな司祭だった。

双月の様子で、奴では無いな?

と思ってはいたが、それが確信に変わりようやく緊張が解けたカエサルだった。


カエサルは、それではと話を始めた。

「サングィナトーレス一味に不穏な動きは見られないそうです」

そしてノルヴィエル等主要都市にも異変が無い事など、部下より得た情報を一通り話し終えた。


そして、やはり喉を詰まらせ、やや俯き加減に黙り込む。

一瞬にしてそれを悟る双月。

その機転と心遣いが、部下たちの信頼を集める一因でもあった。


クラウディアは、

「クロエ様のことですね」

と、いつになく険しい表情と、強い声で言うのだった。




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